第8話 ミヤの夢
ゴブリンがミヤに飛びかかる。
「ムッ」
鷹がミヤの前に入り、盾でゴブリンを弾いた。
ミヤはまだ震えが止まらない。
「オラー!」
ゴブリンの後ろから虎が斬りかかる。
「ギャッ」
1撃でゴブリンを仕留めた。
「ここまでにして、一刻も早く連れ帰りましょう」
「そーだな。鷹、ミヤちゃん担げるか?」
「コク」
「では、急ぎましょう」
黒豹の3人は急いで八雲の家へ戻った。
「じいさーん、いるかー!ミヤちゃんが大変だ」
中に人の気配はなかった。
「どこかへ出かけているのかもしれませんね…」
「とりあえず横にしてやりたいのに」
3人が迷っているとドアが開いた…
「どーした、そんなに慌てて」
八雲だった。
「じーさん、ミヤちゃんが急に震えだして気を失っちまった」
八雲も驚いたように、
「とりあえず中にあるベットに寝かせてやってくれ」
と伝えた。
「コク」
ミヤをベットに寝かした後、3人は八雲に聞いた。
「ミヤさんは何かあったんですか?」
「そーだぜ、ゴブリンにあんなになるなんて、よっぽどだぜ?」
「コク」
八雲は少し躊躇ったが、話し始めた。
「わしと出会った時、ミヤはゴブリンに追いかけられていた。しかも痛ぶられるように、少しずつ攻撃され、逃がされ、また追いかけられることを繰り返させられていたようじゃ」
「それ、マジかよ…」
「それは、トラウマになりますね…」
「かわい、そう…」
「ワシが偶然通りかかったから、助けることができた」
「でもよー、ミヤちゃん、魔法が使えたなら、ゴブリンを倒せたんじゃねーのか?」
「いや、その頃、ミヤは魔法が使えなかったんじゃ」
「え、後天的に使えるようになることってあるんですか!?初耳ですよ?」
「そーだぜ、俺も初めて聞いた」
「コク」
八雲が説明する。
「詳しくは話せないが、正確には自分自身について、きちんと理解できていなかったから使えていなかったということかの…なんせ、それからかなり特訓して、やっとの思いで使えるようになったんじゃ」
「そーだったんですね…そーとも知らず、今回は申し訳ないことをしました」
「すまねぇ」
「ごめ、ん」
3人が申し訳なさそうにしていると
「私は大丈夫、こっちこそごめん」
と奥から聞こえた。そこにはミヤが立っていた。
「ミヤ、大丈夫か?」
八雲が心配そうに聞いたら、
「うん、大丈夫、心配かけてごめんなさい。黒豹のみなさんもごめんなさい。ゴブリンって聞いた時少し違和感はあったんだけど、大丈夫かなぁって思っちゃって。えへへ、ごめんなさい」
ミヤは気を使わさないようにしようと、無理やり笑っているように見えた。
「ミヤさん、八雲さんからお話しは聞きました。何も知らなかったとはいえ、申し訳ありません」
「そーだぜ、ミヤちゃん。俺らが連れ出してしまったからこーなったんだし」
「いや、ワシも考えが甘かった。もっと気をつけるべきじゃった。あの時の事を考えると、そーなることも予測できたはずなのに…」
重苦しい雰囲気が流れている中、ミヤが口を開いた。
「あのね、それでね、八雲さんと黒豹のみんなにお願いがあるの」
皆がミヤの方を見た。
「もう一回、一緒に行ってくれないかな?ゴブリンのところ」
「え!?」
皆が驚いていると
「私ね、冒険者になりたいと思っちゃった。私みたいな人を助ける人、それに私みたいな人を減らせる人になりたいと思ったんだ。でも、今の私じゃそうするだけの力がないから…。トラウマを克復するために、力を貸してくれないかな?」
皆が黙っていると、八雲が
「ワシらには決められん事じゃ。ミヤ、お主本人と、あとはお前のじいさんに聞いてみなさい」
「おじいちゃんかぁ…今日のこと秘密にしてくれる?」
気まずそうにミヤが聞くと、
「無理じゃ」
「ですよねぇ〜」
と、重苦しい雰囲気だったが、2人のやりとりで少し明るくなった。
「私たちは協力するのは構いません。ミヤさんが望むなら協力します」
「あー、俺たちは構わないぜ!ミヤちゃんの意思を尊重する」
「うん、いいの」
「ありがとう、皆さん」
みんなが話していると八雲が急に
「ところで、1つ聞いていいか?」
と言った。黒豹の3人がなんですか?という顔で見ると、
「お主、しゃべれたんじゃな」
と、鷹の方を見ながら言った。鷹は顔が真っ赤になり、盾に隠れた。
「あー、彼は極度の人見知りなんです。だから私たちも滅多に声を聞かないんです」
「そーそー、でも、良いやつなのは間違いないぜ。仲間思いで、いっつも守ってくれる」
「そーだったんですね。かわいいですね」
3人の言葉が嬉しかったのか、鷹はもっと顔を赤くして、盾の後ろに縮こまった。それを見たみんなは笑い、とても良い雰囲気になった。
「では、ミヤ、じいさんのところに行くか」
「え、今からですか?私まだちょっと、ほんのちょっと疲れてるんですけどー…」
ミヤは嫌そうに言った。
「どーせ報告はしないといけないんじゃから、早いほうがいい、行くぞ」
「はぁい…。あ、でも、皆さんが帰ってからの方がいいんじゃないですか?」
「なぜじゃ?」
八雲が不思議そうに聞くと、
「いやいや、八雲さん、あなた普通じゃないんですから」
とミヤは八雲の耳元で小声で話した。
「構わん、他言無用と約束しておけばいい」
(そーゆー問題じゃないってばー)
ミヤは心の中で叫んだ。
「なんですか?2人でコソコソと?」
「隣村までなら今から出たら夜中かぁ」
「明日、行く、ほうが、いい」
黒豹の3人がもっともな事を言っていると
「お前さんたちも行くか?」
と八雲が聞いた。
「明日なら朝から行けますよ?」
豹が答えると、
「あー、今からじゃ、今日中には帰れるはずじゃ、多分…。あやつがブチ切れなければじゃが…」
「いやいや、じいさん、何言ってるんだ。ブチギレようがブチギレなかろうが、今日中は無理だって」
虎が笑いながら話していると、
「あー、普通ならそーなんですけど…はぁ…」
ミヤが曖昧に答えていると、
「よし、じゃあ行くぞ」
と急に言いだす八雲。
「え、本当にいいんですか?知りませんよ?」
と、ミヤが焦って止めようとする。しかし、もう遅かった。
「移動」
八雲の一言で、ミヤの家に着いた。
黒豹の3人は訳がわからず、ボケーっとしていた。
「何してる、行くぞ」
「もー、ちゃんと説明してあげないと、固まってますよ」
「なんじゃ、普通じゃろ?」
「だから、普通じゃありませんって!」
そんな話をしていると、
「じいさん、何やった!?なんでここにいるんだよ!?」
「そーです、なんですか今の?」
「ここ、どこ…?なんで…?え…?」
と完全にテンパっている黒豹の3人。
「移動してきたんじゃ」
とだけいい、進む八雲。そしてミヤが
「えっと、八雲さんは魔法で移動できるんです。だから私も毎日八雲さんのところに通って特訓ができてるんです。本当に普通じゃないんですけど。皆さんの反応で私がおかしい訳じゃないってわかってよかったです。本当に」
フォローにもなっていないような事しか言わなかったが、黒豹の3人も訳がわからないまま、とりあえず着いていった。
八雲がノックをして、家の中に入ると、おじいちゃんがご飯を用意して待っていた。
ミヤはこの後話さないといけないと思いながら、
「ただいま」
とだけ言った。




