第7話 トラウマ
ミヤたちが冒険の話をしている頃
魔王城
魔王が大きな扉の前に立つと【ベルゼイヤ】とある。
「父上、今よろしいですか?」
そこは前魔王の部屋のようだ。
「入っていいぞ〜」
「失礼します、父上、ご報告が」
と言いながら魔王が顔を上げると、前魔王は妻たちに囲まれ、楽しそうに紅茶を飲んでいた。
「母上、それにミベルナ様もいらっしゃいましたか」
2人の妻にもきちんと挨拶をする魔王。
「どうした?ヴァゼル」
「人間界でかなり高濃度の魔力を感知したのですが、その1回のみで消息が途絶えました」
「ほぉ、それはまた珍しいな、お前よりも上か?」
「それは分かりません。私が直接感知したわけではないので」
「ははは、お前らしいな」
「なぜですか?」
「魔王なら、それはあり得ないと言えば良いではないか」
「不確定要素が多すぎますから」
「真面目だなぁ」
「もうそれくらいでいいではないですか、あなた」
「そうですよ、そのようにおっしゃるならあなたがもう少し魔王をすれば良かったではないですか」
「そーなったら、お前たちと楽しむ時間がなくなるではないか」
「父上、まさかそれが理由で私に押し付けたのですか?」
すごい形相になるヴァゼル。
「いや、それは違うぞ!断じて違う。お前なら私より上手くできると思ったからだ」
「あはは、もう威厳は完全にヴァルゼの方が魔王ね」
「そーだろ?だから譲ったのだ!ははは。ヴァルゼ、ヴァールの言う通りだぞ」
「はぁ、まあいいです。取り急ぎ報告しただけですので」
「とりあえず頭には入れておこう。ただ、もう魔王はお前だ。好きにやってみるといい」
「はい。ですが、向こうからちょっかいを出さない限りは魔王軍が動くことはありませんよ」
「それでいい。余計な争い事はいらないからな」
「わかってます。それではまた何かあれば報告しますね」
「あら、ヴァルゼちゃん、もう行くの?クッキー持っていく?」
「ありがとうございます、ミベルナ様。1つ頂いていきますね」
そう言ってクッキーを食べながらヴァルゼは自室に戻って行った。
ミヤたちは森の中で魔物を探していた。
「今日はどんな魔物を狩るんですか?」
ミヤはワクワクしながら黒豹の3人に聞いた。
「今日は初回なので、バイホーンラビットあたりからいこうかなと思います」
「あいつは焼いたらうめーんだぞ!」
「コク」
「バイホーンラビットって、あの大きいツノと小さいツノのあるうさぎですか?」
「そうです。動く相手に魔法の練習をするのであれば、動くのが俊敏な方が練習になるでしょう?」
「確かに。頑張ってみます!」
「まー、そんなお堅くならなくていいよ、リラックスリラックスー」
そんな話をしながら森を進んで行くと、
「いました、あそこです。静かに近づきましょう」
(ほんとだ、なんだかちょっと可愛い)
「俺がこっちに誘き寄せるから、魔法の準備してな」
「はい、分かりました、お願いします」
虎が反対へ回り込み、バイホーンラビットを追いかけてくる。
「ミヤちゃん、やっちゃえー」
「ファイヤーボール!」
バイホーンラビットはシュッと避けてしまった。
「うわぁ、あぶねっ」
バイホーンラビットに当たらなかったファイヤーボールは虎の方へ飛んでいった。
「きゃー、ごめんなさーい」
ミヤたちは走って虎の元へいった。
「ケガはありませんか?」
ミヤが心配そうに聞くと、
「へーきへーき、全然問題なし!」
「良かったー」
ミヤの初めての攻撃は失敗に終わった。
「さて、気を取り直してもう1度探しましょう」
少し進むと洞窟があった。
「あれはゴブリンの巣ですかね?」
豹がそう言うと、ミヤが少しピクッとなった。
「あいつらくせーから嫌なんだよなぁ、まあ、ミヤちゃんのためだ、行ってくるわ」
そういうと虎は洞窟の周りをウロウロし、見張りの1匹を見つけた。
(他のやつにバレないように、さっとミヤちゃんの方に連れて行かないと)
虎はわざと草の音を鳴らし、ゴブリンを誘き寄せた。
「ウワー、ゴブリンダー」
とわざとらしい演技をしながらミヤの方へ走る。
ミヤも魔法の準備をしようとしていたが、急に身体が震え始める。
(あ、あれ?おかしいな…)
「ファ、ファイヤーボール」
魔法が出ない…
「ファ、ファイヤーボール!」
魔法がです、どんどん近づいてくる虎とゴブリン。
虎が異変を感じ振り返りゴブリンを迎え撃とうとすると、
ゴブリンは虎に砂を投げて、目潰しをした。
「いてっ」
ゴブリンは虎を無視して、ミヤの方へ走って行った。
「ミヤちゃん、危ない!」
ミヤは身体の震えが治らず、座り込んでしまっていた。




