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第59話 不敬罪

不満そうな顔をしているのは虎だった。

「なんでそんなに金貨を出してるんだ?俺の不敬罪の分はどーしたよ。その分を引けよ」

まさかの言葉に豹と鷹は虎の方を向いた。

「俺は王子様に暴言を吐いたんだぞ?その分は引けよ。それとも不敬罪で死刑にでもするか?」

虎の不満は止まらなかった。しかしそれを聞いていた豹と鷹は気が気ではなかった。すると女王は真剣な顔をして答えた。

「本来なら処罰をするところなのだがな。ちょっと色々とあったのだ」

「なんだよ色々って。意味がわかんねーよ」

女王は急に笑い出した。見かねたトルネが話を進めた。

「虎殿、まず大前提として不敬罪とはどういうものかわかりますかな?」

「そんなもん、偉い奴らに失礼な言動をすることだろ?だから今回の俺みたいに暴言を吐いたのがダメなんだろ?」

「まあ、大まかに言えばそのような感じです。なので、今回は問題がないんです」

「…は?」

虎はトルネの話を理解できていなかった。するとカイルが割って入ってきた。

「虎さん、今回あなたが問題視しているのは、私たちを助けてくれた時の言動ということで間違いないでしょうか?」

「そーだよ、あの時の言動のことを言っているんだよ」

「では、質問なのですが、今の私たちに対しての言動はどう思いますか?」

虎はハッとしたが、もう今更という感じで話し続けた。

「あー、今のも問題ってか?なら、余計に俺だけだな。死刑にするならしろよ」

虎はドカッと腕を組んで座り込んだ。それを見た女王はさらに笑った。カイルは話を続けた。豹と鷹は落ち着かない様子だった。

「では、なぜ今虎さんは周りの騎士たちに捕えられていないのでしょう?」

「知るかよそんなもん。ビビってるってか?」

「違いますよ。まあ、皆さんに対してはストレートにお伝えした方がよろしいですかね。今回の虎さんの言動について、私が不敬だと思っていないから捉えられていないんですよ」

豹たちは理解できずにいた。トルネが説明を始めた。

「えー、まずは結論から。今回の虎さんの言動は不敬罪にはなりません」

「は?なんでだよ」

「先ほどカイルが言っていた通り、今回の言動をカイル含め私たちが不敬だと思っていないからです」

「いや、だからなんで!」

虎が大声を上げた途端に、我慢できなくなった豹と鷹が虎を押さえつけた。

「虎、とりあえず話を聞きなさい」

「虎、落ち着いて。進まないから」

2人に抑えられ、虎も少しだけおとなしくなった。するとやっと笑いが収まった女王が話し始めた。

「はー、笑った。すまない、後は私が話そう。もちろん最初騎士団の連中は私やトルネに報告をあげてきた。しかし当の本人、つまりカイルが喜んでいたんだ」

豹たち3人はカイルの方を見た。カイルはニコッと笑っていた。

「私たちはカイルに話を聞くと、自分を王族とわかっていながら素の自分を曝け出して接してくれたのがとても嬉しかったそうだ。王族という名目上、カイルに対して向けられる目はどうしても欲望に塗れた目や怯えている目が多かった。しかし虎、貴様はカイルが王族とわかった上でいつも通りでいてくれた。それが嬉しかったようだ。本人が不敬ではないと言っているのだから不敬罪にすることはできないであろう?つまり今回の言動は不敬ではない。という結論になった。どうだ?理解できたか?」

虎は話を聞いている間に落ち着いたようで、豹と鷹に話すように言った。

「話はわかった。でも、女王様たちはそれでいいのかよ?王族としての権威とか色々と大丈夫なのかよ?」

「なんだ、私たちの心配までしてくれるのか?素晴らしいではないか。家臣たちにも言われたよ。冒険者風情にそのような特別措置などもっての他だとな。そんなことをすると私の権威が失墜するとな」

「ほら見ろよ、その通りだろ」

「だが、言ってやったわ。私の権威がその程度のことで失墜などするか!とな。元々私がなんて呼ばれていたか教えてやろうか?鬼姫だ!そんな人間が自分の実力で女王まで上り詰めたのだ。多少好き放題しても文句など言わせん。文句がある奴は私より武勲でもなんでもあげてみろ!と言うさ。つまり問題ない!ははは」

女王の話を聞きながら豹たちはポカーンとしていた。自分たちのイメージしていた王族はもっとお堅い、プライドの高い人間。その辺の貴族たちのもっと酷い人間だと思っていた。そして例外なのはワーク国王だけだと。するとどうだ、目の前にいる女王はワーク国王以上に豪快な人間だった。虎は思わず笑ってしまった。

「女王様、トルネ様、カイル様、今回の件、1度きちんと謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした」

虎が丁寧に話し出したので、豹と鷹、女王とトルネ、そしてカイルも騎士団員も驚いていた。

「そして今後についてですが、もしお許しいただけるのでしたら、いつも通りを続けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

虎は女王たちへ頭を下げた。女王も虎のその態度にきちんと答えた。

「虎、今回の件についての謝罪、しかと受け取った。これにて今回の件は不問とする。そして今後についてお主からの願いを受け入れよう。今後もいつも通りでいるが良い」

「はい、ありがとうございます」

虎はきちんと頭を下げた。そして顔を上げた途端にいつも通りに戻った。

「よし、んじゃ報酬くれ」

切り替えの速さに豹と鷹が頭を叩いた。

「それは不敬です!女王様たちが罰しないのなら私たちが罰しましょう」

「うん、今のは、ダメ。調子乗っちゃ、ダメ」

「おい、この人たちが良いって言ってくれてるんだから良いだろ?」

3人は兄弟喧嘩のようにやり合っていた。だんだん激しくなるやりとりを見ながら、女王たちは笑っていた。周りにいた騎士団員も肩の力が抜け、笑ってしまっていた。

「お前たち、そろそろ落ち着いてくれるか?今後の話がもう一つある」

豹たちは手を止めて女王の方を向いた。

「お前たち3人に依頼を出したいのだ。まあ、これもカイルからの希望なのだが」

女王はカイルの方を向いた。カイルはニコーっと笑って説明を始めた。

「1度断られてしまったのですが、改めてお願いしたいです。私に剣術や体術の指導をしていただけませんか?」

カイルからの提案をある程度予想していた虎はすぐに返事をした。

「いいぞ」

「やっぱりダメですよね…え?」

カイルは断られると思っていたようで、かなり驚いた様子だった。

「良いんですか?」

「いいぞ!元々断ったのも、貴族の礼儀やらがめんどくさくて断ってただけだし、俺らで教えれることがあるなら協力するよ。お前らも良いだろ?」

虎は豹と鷹にも話を振った。

「まあ、私も構いませんが、鷹は大丈夫でしょうか?」

「う、うーん…」

「じゃあ、鷹は慣れてから教えてやれよ。それまでは俺ら2人でやるからさ」

「それなら、うん」

「鷹さん、どこか悪いんですか?」

カイルは心配そうに聞いた。豹は答えた。

「あ、違うんです。鷹はかなりの人見知りで、慣れないと話しにくいんです。なので、それまでは私たちでご指導させていただきます」

「なるほど!では、早く慣れてもらえるように頑張ります」

「では、今回の依頼も受けてもらえるということで構わないか?」

豹たちは女王からの指名依頼を受けることになった。

「で、今回の依頼の報酬についてだが…」

女王が報酬について話そうとすると、虎が話を止めた。

「それについてなんだけど、こちらから提案がある」

そう言うと虎は豹と鷹の方を向いた。豹と鷹も何かを察したようで頷いていた。

「報酬は指導の間泊まれる宿代と飯代があればいいよ」

女王は驚いて聞き直した。

「それではお前たちが手にする報酬がないではないか」

「いいよ、今回はその内容で。俺の願いを聞いてくれた礼ということで」

女王は少しだけ納得していない顔をしていた。すると、トルネが女王に耳打ちをした。

「エリザ、こういうのはどうですか?」

トルネの話を聞き、女王は悪い顔をしていた。

「よし、ではお前たちの提案を受けよう。感謝する。で、宿はどこにする?」

豹は自分たちが泊まろうとしていた宿の情報を女王に渡した。

「よし、ここだな。ではここの宿代を確認し、手配しよう。おい、書くものを持ってきてくれ」

女王は家臣に頼み、手紙を作成した。

「これを先ほどの宿に届けてくれ。頼んだぞ」

家臣は手紙を受け取り、すぐに宿に向かった。

「よし、これで話は以上だ。明日からカイルのことをよろしく頼む」

「おう、頑張るよ」

豹たちは女王に挨拶し、王城を後にした。

「なんとかなったー」

「虎、ヒヤヒヤしましたよ」

「うん、ほんとに」

「すまん。でも思ってたよりも良い人たちだったな」

「良い人と言うかなんと言うか…失礼な言い方をすると、ぶっ飛んでましたね」

「すごかった。ワーク国王より、ぶっ飛んでたね」

3人は笑いながら宿に帰って行った。







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