第58話 黒豹の過去
虎たちは昔話を止めるのを諦めて戻ってきた。そして当時のことを一緒になって振り返った。
「黒豹、指名依頼だよ。あんたら一体何したんだい?」
梅が少し心配そうに豹たちに依頼書を渡した。
「どこからの依頼だ?」
「待ってください、今確認しますから」
「これ、なんか、見たこと、あるね」
依頼書の表面には何やら大層な印が押してあった。そして豹が封を開けると、顔が真っ青になっていた。
「虎、何やったんですか?」
「は?何がだよ」
虎は豹が持っていた依頼書を取り内容を確認した。そこにはこう書かれてあった。
【虎さんとそのパーティーメンバーの皆さん、先日のお礼がしたいので、王城までお越しください。任意ではありますが、来て頂けると幸いです】
そしてその下に王家の紋章とカイルの名前が記載されていた。
「誰だよカイルって、王家なんて俺は関わってない…あ」
「思い出しましたか?先日助けたあの方ではないですか?」
「虎、かなりの暴言、吐いてたよね?」
豹と鷹は虎に向かって手を合わせていた。
「おいおいおいおい、縁起でもねーことすんなよ。ほんとにあいつかはわかんねーだろ?」
「では、彼の名前はなんでしたか?」
虎は黙った。カイルの名前を覚えていなかったのだ。
「…知らん」
豹と鷹は改めて手を合わせた。
「ばっか!お礼をって書かれてるから、お礼してくれるんだろ?大丈夫だろ?」
「では虎、今からあなたを処刑しますので、王城まで来てください。あなたこうやって書かれて行くバカがどこかにいると思いますか?」
「う…」
「行かないよねぇ」
「行きませんよね」
豹と鷹はため息をついた。
「で、あの時他に何か言われませんでしたか?」
虎は考えたが、本当に忘れてしまっていた。
「まあ、王城からの指名依頼なんて出されてしまえば断ることはできませんし、行きましょうか」
「うん。仕方ない」
豹と鷹は諦めて王城に行くことを決めていた。しかし虎はまだ渋っていた。
「なーんも思い出せねー。どうすっかなぁ…」
「もう諦めて行きますよ」
豹は虎の脇を抱えて無理やり引っ張っていった。そして王城前で虎が急に開き直った。
「よし、まあどうにかなるか!行くぞー」
(さっきまであんなに渋ってたのに)
豹と鷹は同じことを思っていた。
豹たちは入城した。もちろん案内されたのは女王の間。明らかにヤバそうな女王、その横には強そうな男性。そしてその横には先日助けた男の子がいた。
「あ、いた、あいつだ」
虎は豹たちに伝えた。豹はマズイと思い、虎の頭を下げさせた。
「申し訳ありません、私たちはこういった場所に不慣れでして、ご無礼な態度があれば申し訳ありません」
と謝罪をした。しかし虎は違っていた。
「なあ、あっちが呼び出したんだから、俺らが下手に出ることないんじゃねーの?」
すると豹は虎の頭を引っ叩いた。
「いてっ。何すんだよ」
「少し静かにしていなさい」
虎は豹に怒られたので、素直に話を聞き、静かにしていた。
「今回はどのようなお話でしょうか?」
豹の質問に女王は口を開いた。
「今回、我が息子カイルを救ってくれたのは其方たちか?」
「おそらくそうだと思います」
豹は恐る恐る答えた。
「今回はその褒美を与えようと思って呼び出した」
豹はその話を聞き、ホッとした。しかし次の言葉に背筋が凍った。
「が、要件が増えてしまったのだ。何やら我が息子カイルに暴言を吐いたらしいではないか。騎士団の者から報告が入った。誠か?」
「えっと、それは…」
豹は言葉に詰まっていた。すると虎が質問に答えた。
「はい、おそらくそれは私のことだと思います」
「ほぉ」
女王は虎のことを睨んだ。しかし虎は怯むことなく話を続けた。
「暴言と捉えられることを言ったのは俺だけだから、処罰するなら俺だけでお願いします。こいつらは関係ない。もしこいつらを見逃してくれないなら、俺は全力で抵抗します」
虎は真剣な表情でそう伝えた。
「罪を認めた上で他は見逃せと?」
「俺を見逃せって話じゃない。この2人をだ。俺は処刑でもなんでもいい」
すると鷹が虎を叩いた。
「僕も、責任を、取ります」
「私もです」
豹と鷹は一緒に責任を取ると女王に伝えた。女王は3人を睨んでいたが、急に笑い出した。
「あー、もう我慢できん、無理だ。はー、顔が疲れた」
まさかの状況に3人は唖然としていた。
「すまんすまん、ちょっとお前たちを揶揄っていた。いつも通りで構わんぞ。貴族でもないお前たちに礼儀を押し付けるようなことはせん。楽に話せ」
「こらこらエリザ、御三方が固まってしまったぞ。きちんと説明するべきだぞ」
トルネはエリザの行動に少し呆れながらため息をついた。
「皆さん、申し訳ありません、私はやめるように言ったんですが、彼女がどうしてもと言いまして…」
豹たちは状況を飲み込めずにいた。するとカイルが3人の方へ近づいてきた。
「皆さん、先日は助けていただきありがとうございました。本日はお礼と改めてのお願いのために来ていただきました」
「と言うことだ、すまないな。今回来てもらったのは、今回カイルを助けてくれた報酬を渡すため。これに関してはすぐに終わる。今回の報酬は金貨1000枚だ。本当はもう少し出してやりたいが、この後の話にも関係する為、一旦この内容で許してほしい。そして騎士団員の治療のお礼。これは金貨50枚。早期の治療により後遺症なども一切なかったため、相場より少し多く出させてもらっている。以上だ、どうだ?」
豹たち3人は想像以上の金額にずっと固まったままになっていた。豹がハッとして報酬について話を始めた。
「私たちはそんなに頂けると思っていなかったので十分過ぎます。治療もたまたま通りかかったタイミングが良かっただけでしたので。ですが、評価していただけたことは本当に嬉しく思います」
「自分の子どもを助けていただいた親としては、これでもまだ十分ではないと思っていますよ、ねえ、エリザ」
「そーだな、お前たちがいなかったらカイルはおそらく命を落としていた。それに比べると金貨1000枚など安いものだ」
女王とトルネは親としての感謝を豹たちに伝えていた。しかし約1名納得できず、不満そうな顔をしている者がいた。




