第57話 黒豹とカイルの過去
「元黒豹の御三方は私の命を救ってくれた大恩人であり、私の中の英雄なんです」
カイルは嬉しそうに語っていた。ミヤもウキウキしながらその話を聞いていた。
「ミヤさん、こちらのお肉美味しそうですよ?」
「ミヤちゃん、この肉どうだ?」
「ミヤ、肉、上手に、焼けた」
3人はいつものように食事で釣ろうとした。しかしミヤはご飯に目もくれず話を聞いていた。
「皆さんのお話を聞いているんです、邪魔しないでください」
ミヤが食事よりも3人の昔話に興味を持っていた。その事実に戸惑っている豹たち。結局話を止めることができず、諦めてその場を離れて行こうとした。しかしカイルが余計なことを言うかもしれないと思い、側に戻ってきた。すると黎明とカイルが集まっているのに気づいたトルネも寄ってきた。
「皆さん集まって何をお話しですか?」
「良いところに。トルネさん、カイル様を止めてください」
「どう言うことですか?」
豹は事の経緯をトルネに説明した。
「豹殿、まさかとは思いますが、皆さんの功績を説明なさっていないんですか?」
トルネは嘘ですよね?と言う反応をしていた。
「ミヤ殿、彼らの功績を聞いたことはありますか?なぜ我らクライ女王国の王家と彼らがこのように親しい間柄になったかなども?」
「はい、詳しく聞いたことがありません。だから虎さんが皆さんにあのような言動をしていることが最初は不思議でたまりませんでした。最後はまあ虎さんだしと無理やり納得していました」
「おいおい、どう言うことだよ?」
「そのままの意味です」
ミヤは目を逸らしながら答えた。
「おい?」
虎はミヤの顔を覗き込んでいた。その話を聞いてトルネはため息をついた。
「カイル、しっかりとミヤ殿に説明して差し上げなさい」
「はい、父上」
豹たちはトルネに助けを求めたが、先ほどよりもカイルもミヤも自分たちの話をする気になってしまい、諦めることにした。
「はぁ、もういいや、話していいぞカイル」
「ありがとうございます。さて、どこから話しましょうか」
ミヤは目をキラキラさせながら改めて話を聞く準備をした。
「まずは私の話になってしまいますが、数年前から私は訓練として騎士団の皆さんと魔物の討伐に出ていたんです。騎士団長のアルベルトに訓練してもらい、それを実践で使ってみて、できなかったところ、不足していると判断したところをもう1度訓練すると言うやり方をしていました」
カイルは勉学だけでなく、武術や剣術にも熱心に取り組んでいた。そして勉強よりも武術と剣術にのめり込んでいた。
「その日はフレイムバードを討伐対象として訓練していたんです。魔法も少し習っていたので、それを交えながらの戦闘訓練の日だったんです。あ、私の使える魔法は水です。なのでフレイムバードとの相性が良かったので、まだ完璧ではない魔法も使いながらと言うことになりました」
フレイムバードはその名の通り炎をまとった鳥の魔物である。体は火に覆われているが、火を吐いたりすることはなく、攻撃性も高くない魔物だ。クライ女王国周辺では初心者パーティーが訓練する時によく受ける討伐対象だった。
「森の中に入りフレイムバードを発見し、追いかけていると、奥から別の魔物が出てきたんです」
「別の魔物ですか?」
「はい、ヴェノムリザードでした。本来は森の奥の洞窟などに生息している毒を持つですが、その日はなぜか森の浅いところまで出てきていました。そしてその日はたまたまアルベルトが不在の日でした。騎士団の皆さんも必死に戦ってくれていましたが、僕を庇いながら戦っていたので、いつものような連携が取れていませんでした。そして何より、ヴェノムリザードの毒を浴びてしまうと目眩や痺れが発生します。私が足を引っ張ってしまい数人の騎士団の方が浴びてしまいました」
当時のカイルはまだまだ特訓し始めた頃で、魔法も剣術もかなり未熟だった。そして経験もあまりなかったので何もすることができなかったのだ。
「そしてもっと追い詰められてしまったのが、ヴェノムリザードが番で2体いたんです。正面のヴェノムリザードに気を取られて、私の後ろにいるヴェノムリザードに気づきませんでした。そして私は後ろのヴェノムリザードの毒をくらってしまいまいた。私は動けなくなり、地面に横たわっていました。正面のヴェノムリザードは騎士団の皆さんがなんとか倒してくれたのですが、後ろのヴェノムリザードは皆さん満身創痍だったので、間に合いそうになかったんです。正直私は死を覚悟していました」
ミヤはカイルの話にのめり込んでいて、話が進むたびに色々な表情で話を聞いていた。豹たちはこの後の話がどうなるかわかっているようで、酒を飲みながらグラスで顔を隠していた。
「その時に現れたのが虎さんでした。虎さんは横たわっていた私を抱え、ヴェノムリザードから助けてくれました」
ミヤは虎の名前が出た途端に虎の方を見た。虎は恥ずかしそうに目を逸らしていた。
「そして毒を浴びていることを理解してくれ、すぐに解毒薬を準備して飲ませてくれました。そして豹さんと鷹さんがヴェノムリザードを引き付けてくれ、騎士団の皆さんの状況を虎さんが確認し、豹さんの魔法が必要と判断して、ものすごい連携で豹さんと虎さんが戦闘を代わり、その際に騎士団の皆さんの状況を適切に伝達し、豹さんが治療を行ってくれました。そしてその間に虎さんと鷹さんがヴェノムリザードを討伐していました」
ミヤは自分が褒められているかのような反応をして、豹と鷹の方を見た。2人は恥ずかしそうにそっぽを向いた。鷹に関しては顔が真っ赤になっていた。ミヤはそんな2人の反応を見てニヤニヤしてしまった。
「その時の連携と対応に感動して、討伐や治療が終わった後、直談判して弟子にしてください!とお願いしたんです」
「なるほど、それで3人と仲良くなったんですね」
ミヤがそう言うと、カイルは首を横に振った。
「え?違うんですか?」
「はい、全力で断られました。特に虎さんに」
ミヤは驚いて虎の方を向いたが、虎はいなかった、逃げていたのだ。
「お前王族だろ?なんでそんな面倒なやつに関わらないといけねーんだよ、馬鹿か。と全力で断られました」
「超失礼じゃないですか!虎さん何やってるんですか…」
トルネも流石に苦笑いしていた。しかしカイルは違っていた。
「僕はちっとも失礼と感じていなかったんですよ」
カイルは笑いながら答えた。ミヤは不思議そうに聞いた。
「なぜですか?」
「僕は一応クライ女王国の王太子です。僕に対して素で接してくれた人はアルベルト以外いなかったんです。なので虎さんの言動が嬉しくて、つい追いかけてしまいました」
なんとカイルは自分に無礼な態度をとった虎に好感を持ち、自分から追いかけたのだった。そしてその後しつこく聞き続け、なんとか名前を聞き出すことに成功した。そしてその場は1度離れ、後日指名依頼を出したのであった。名目上は【助けてもらったお礼を渡したい】と言うことにしていたが、本当の目的は自分の指導をしてもらうことだった。
「カイル様行動力すごいですね」
「そうですかね?でも本当にあの時しつこく関わりにいって良かったです!」
「その後どうなったんですか?」
ミヤが興味津々で聞いていたが、ミヤのお腹がなったので、残りの話は食べながらすることになった。




