第56話 魔王の素質とミヤの興味
魔王城、ベルゼイヤの部屋
「あなた、最近何やら城内が物騒ですね」
「ね、何か不穏な輩がいませんか?」
ヴァールとミベルナはお菓子を食べながらベルゼイヤと話していた。
「何か企んでる奴がいるようだなぁ。だが今の魔王はヴァゼルだ。どう対処するかは奴次第だ」
ベルゼイヤは優雅にハンモックに揺られていた。
「あなた?そんなことでいいんですか?魔王交代なんてことになったら大事ですよ?」
ヴァールは心配している様子でベルゼイヤに言った。するとベルゼイヤは笑いだした。
「ははは、ヴァールよ、何を言っている、魔王とはそんな簡単になれるものではないんだぞ?」
「そーなんですか?」
ミベルナが不思議そうに聞いた。
「単純に魔力量とか戦闘力が他の魔族とは格が違う。魔王の血筋にしか使えない魔法もある。魔王の血が途絶えると、新たな魔王が生まれるまでは魔王不在となり、その代の魔王が使っていた魔法は途絶える。そういう摂理のようなものなんだ。そして魔族の深層心理には魔王の血に反応するような性質がある。だから、反乱をして魔王を倒した!だから私が新しい魔王だ!と言っても周りが認めないんだ。だから簡単にはなれないんだよ」
ベルゼイヤは魔王について説明していたが、ミベルナはまだ不安そうだった。
「それでもヴァゼルが負けてしまったらどうなさるんですか?」
「んー、そうだなぁ、みんなで人間界に逃げようか」
ベルゼイヤは笑いながら答えた。
「馬鹿なことばかり言って。できたら苦労しませんよ」
ミベルナはブツブツと文句を言っていた。ベルゼイヤはハンモックから飛び降り、2人の妻を抱きしめた。
「まあ、2人とも心配するな、ヴァゼルもなんだかんだしっかりしている。簡単に負けることはないよ。それにあの子がピンチになったら、3人で助けに行こう」
ベルゼイヤのその言葉に2人の妻はふふっと笑っていた。
クライ女王国城内、虎の部屋
「よし、あとの話は食事にしてからだな。せっかくのサンドドラゴンを食える状態で討伐してくれたのだ、新鮮なうちに食べるぞ!今日は庭でバーベキュー方式にするか!懐かしいなぁ、野営を思い出す。よし、急いで準備するぞ」
女王はそそくさと自分の部屋へ戻っていった。その道中、家臣にサンドドラゴンを捌いてバーベキューの準備をするように伝えた。女王を止めようとしていた3人は唖然としていた。虎は鬼姫の噂話しか知らなかったので、みんな必死だなぁとしか思っていなかった。女王は振り返った。
「虎よ、全員呼んでこい」
「へーへー、仰せのままにー」
虎はダルそうにしながらミヤたちを呼びに行った。ミヤの部屋に着きノックをしたが、反応がなかった。もう1度ノックをしたが、また反応がなかった。すると外から物音がしているのに気がついた。窓から外を覗くとミヤが剣を構えていた。かなり集中していたようで虎がいることには気づかなかった。
「おーい、ミヤちゃん」
と叫ぼうとすると、信じられない光景を目にした。虎は思わず
「マジ?」
と言った。するとミヤが虎に気づいた。
「あー!虎さん、今の見ちゃいました?」
「見たな。ミヤちゃん今のは…」
「シー、他の皆さんには内緒にしていてください。もー、虎さんにも見られたくなかったー、実戦で見せて驚かしたかったのにー。ちゃんと周りに人がいないか確認したはずなのに。ショックー」
ミヤはよっぽど見られるのが嫌だったようで、少し拗ねていた。一方の虎は呆気に取られていた。しかしいつも通りのミヤを見て我に帰った。
「ミヤちゃん、誰にも言わねーから元気だしなって。見たのが俺でよかったよ。豹たちやカイルに見られてたら大騒ぎだったぞ」
「そうですかねー?」
ミヤはなぜか少し嬉しそうにしていた。
「ミヤちゃん、なんでニヤニヤしてるんだ?」
「え?そんなことは…ありますか?」
「あるね」
「いやぁ、皆さんが驚いてくれるくらい強くなるって約束だったので、守れそうで嬉しかったんです」
虎はその言葉を聞きながら思った。
(俺のせいじゃん!)
「あ、それで虎さんはどうしてこちらに?」
「あ、そーだった、バーベキューの準備を進めてるから来いってさ」
「え、バーベキュー?サンドドラゴンもありますかね?」
「あるみたいだぞ。料理人たちが必死に調理してたよ。さ、豹たちも呼びに行こうぜ」
ミヤはウキウキしながら豹たちと呼びに行った。庭へ行くとたくさんの肉が並んでいた。ミヤたちが討伐したサンドドラゴンは美味しそうな肉に加工されていた。ミヤはそれを見て目を輝かしていた。女王にトルネ、カイルにアルベルトたち、そして討伐に協力した騎士団員たちも集合していた。
「揃ったな、全員、本日の討伐ご苦労だった。皆が協力してくれたおかげで全く被害が無く討伐することができた。今日はしっかりと英気を養ってくれ」
女王の言葉に騎士団員たちは歓声をあげた。そして、大宴会が始まった。
「すごいですね、こんなに大人数で。そして女王様ってもっとお堅くて厳しい方かと思っていたました」
「あの人は変わってるからなぁ。俺の言葉遣いとかも不問とか言い出すしな」
「ですね。あの方は少し変わっておられますね」
「うん、あの人は、変人」
3人の話を聞きながら、ミヤはずっと気になっていたことを聞いた。
「そーいえば、皆さんってなんでこの国の人たちとこんなに仲がいいんですか?一応拠点としていたのはワーク国なんですよね?ワーク国の王様と仲が良いのは何となく理解ができるんですけど、他国の方、ましてや女王様ってそんな簡単に仲良くなれますか?」
「あー、それはですね」
豹が説明しようをするとどこからかカイルが走ってきた。
「そのお話は僕がしましょう!私を救ってくれた英雄たちのお話を」
カイルはとても嬉しそうにしていた。対照的に豹たち3人はとても恥ずかしそうにしていて、カイルが説明しようとするのを必死に止めていた。




