第51話 ミヤVSアルベルト
「あ、ごめんなさーい、みなさん大丈夫ですか?」
ミヤは焦って女王たちの元に駆け寄った。
「すみません、本当に大丈夫ですか?」
アースウォールが解かれ、中のみんなは無事だった。それを確認できたミヤはホッとした。
「ミヤちゃん、加減ミスってるだろ」
「いやぁ、いっぱいご飯食べてエネルギーが有り余ってたんですかね?えへへ」
その反応を見て全員がため息をついた。女王はかなり動揺していた。周辺で見ていた騎士団員たちも黙り込んでいた。
「ミヤよ、お主、本当に何者だ?」
女王の質問に対し、ミヤは不思議そうに答えた。
「え、普通にEランク冒険者ですよ?」
「普通の定義とはなんだ…」
カイルはまだ状況が理解できずに座り込んでいたが、ミヤが普通ではないことだけは理解していた。
「ミヤちゃん、また予想以上に成長してんな」
「ですね、体術はもう勝てませんね」
「風圧であれだよ?で、どうせまだ本気じゃないんでしょ?」
豹たち分析するまでもなく、体術はミヤに抜かれたと感じていた。そして女王とトルネは冷や汗が止まらずにいた。ミヤの力を間近で見て、騎士団でも敵う者がいるかわからなかったからだ。すると座り込んでいたカイルが立ち上がった。
「ミヤさん、ありがとうございました。あの、お願いしたいことがあるのですが、構いませんか?」
「えっと…」
ミヤは迷いながら、豹の方を向いた。豹もそれに気付きミヤの方に寄ってきた。
「どうしました?」
豹は一旦ミヤとカイルの間に入った。
「あ、豹さん、ミヤさんに稽古をつけて頂けないかなと思いまして」
「え、私ですか!?」
「はい、豹さんたちに稽古をつけていただいたのが、今の手合わせで私は何をされたかすら理解できていません。なのできっちり教えて頂けないかなと思って…すみません」
「いや、その、私、教えるのとかめちゃくちゃ下手なんです…なので可能なら見て覚えていただければありがたいんですが…」
「はい、それでも構いません。ありがとうございます!」
カイルが喜んでいると、ミヤが豹に確認した。
「豹さん、今後の予定的に大丈夫ですか?」
「まあ、こうなると思って2日ほど余裕を持っていますので構いませんよ」
「え、まさかこうなると予想しての3日後ということだったんですか?」
「そーですよ」
ミヤは豹の計画性に驚いていた。
「ミヤちゃん、俺らも一緒にやっていいか?」
虎が話に入ってきた。すると豹と鷹も一緒にすることを望んだ。
「いいですけど、教えれないですからね?自分で見てやってください」
豹たちとカイルは一緒に特訓することになった。話が盛り上がっていると、アルベルトがミヤの方へ寄ってきた。
「お話中失礼いたします。ミヤ殿、私とも手合わせをお願いできませんか?」
大きな声にミヤはびっくりしていた。
「えっと…」
すると女王がアルベルトを静止した。
「アルベルトよ、落ちつけ、ミヤがビックリしておるではないか?」
「そうでした、大変失礼いたしました。改めましてミヤ殿、手合わせをお願いしたい」
ミヤは戸惑いながらも返事をした。
「はい、えっと、女王様の許可をいただけるなら今からでも構いませんけど」
「女王様、構いませんかな?」
「うむ、構わないぞ」
女王はミヤの実力をもっと知りたくなっていた。カイルも女王の側に移動し見学することにした。
「では、ミヤ殿、やりましょう!どのようにしましょうかな?」
ミヤは少し考えた後、アルベルトに質問をした。
「えっと、団長さんはどのような戦闘がお得意ですか?」
「私は魔法も少々使えますが、剣術メインです。多少特殊な部分がありますが。ははは」
「わかりました。では剣術でお手合わせしましょうか?」
すると、周りの騎士団員たちはざわついていた。それもそのはず、アルベルトは国内でも剣術最強と謳われる人物で、騎士団では誰も敵う者がいなかったからだ。そしてその剣術は少し特殊なものだった。周りがざわついている事など気にも止めず、2人は準備を始めた。そしてミヤはこっそりとアルベルトを鑑定した。
鑑定結果(使用者の意思により任意の情報のみ表示します)
アルベルト・グランツ 年齢:45歳 レベル92 職業:騎士団長 火魔法適正◎ 魔力操作◎ 称号:灼熱の騎士 魔法剣士
(ん?魔力操作と魔法剣士、もしかして…)
ミヤは何かに気づいた。そして2人の準備が整った。いよいよミヤと騎士団長アルベルトの手合わせが始まろうとしていた。
「おや、ミヤ殿、今回は武器をお持ちで?」
「はい、流石に真剣に素手で挑むのは少し…」
「この剣は切れないように加工しておりますので、首が飛んだりは致しませんので、ご心配なく」
すると周りの騎士たちが何か言っていた。
「おい、騎士団長はあの剣でも魔物を討伐するんだぞ?あの子大丈夫か?」
「切れないとはいえ、かなりの衝撃があるぞ」
「止めた方がいいのか?どうする?」
騎士たちは心配している様子だったが、豹たちは違っていた。
「豹、ミヤちゃんって剣使えるの?」
「いえ、見たことありませんね」
「前、石割り、教えてもらった時、少しだけって、言ってた」
豹たちはミヤの剣術に興味深々だった。その様子を見た女王は豹たちに声をかけた。
「お前たち、心配じゃないのか?」
「全然?」
「はい、問題ないかと」
「むしろ、興味が、ある」
豹たちの言葉を聞いて呆れる女王。しかしカイルとの手合わせを見た後だと、豹たちの余裕も少し納得していた。
「では、行きますぞ!」
「はい、よろしくお願いします」
アルベルトは正面でしっかり剣を持ち、ミヤは片手で持ち、半身で構えていた。両者が出方を伺っているとアルベイルが先に仕掛けた。ミヤに向かって突進した。ミヤは剣で受けたが、勢いがある分押し負け、ミヤの体が浮いた。すかさず空中にいるミヤに向かって、アルベルトが剣を振った。ミヤは再度剣で受け、飛ばされてしまった。
「ははは、まさか今のを防がれるとは、素晴らしいですな、ミヤ殿」
「ひぇー、すごいパワーですね、受けばかり気にしてたら、飛ばされちゃいますね」
数手やりとりしただけだったが、見学していた騎士団員は息を呑んだ。
「次は私から行きますね」
そう言うとミヤは姿勢を低くした。アルベルトと同じように突っ込んだが、ミヤの場合は突きだった。アルベルトが避けると、避けられた途端にミヤは剣を横に振った。かなりの速度で切り返したが、アルベルトは再度避けた。突きから急に横振りに変わった攻撃を避けられ、ミヤは悔しがっていた。
「えー、今の避けます?少しくらい焦っても良くないですか?」
ミヤは文句を言っていたが、とても楽しそうだった。それはアルベルトも同様だった。
「いやいや、今のは焦りましたぞ?ただ、突きからの横振りというのは案外使い手も多い者です。経験値の差というやつですな。ただ、今まで経験した中で、おそらく最速の切り返しでしたぞ」
そんな小言を挟みながら2人は手合わせを続けていた。なかなか決着がつかずにいると、アルベルトが提案をした。
「ミヤ殿、楽しい時間がまだまだ続いてほしいですが、今はそういう訳にもいきませんので、この後の私の攻撃を防ぐことが出来ればミヤ殿の勝ち、防ぐことができなければ私の勝ち、それでいかがですかな?」
「わかりました。みなさんをお待たせしすぎる訳にもいきませんので、そうしましょう!」
その言葉を聞いて、見学している全員が、目を離さないように注意した。




