第50話 ミヤVSカイル
食事がある程度進んだ頃、カイルがミヤに質問した。
「あの、ミヤさん、質問があります」
「はい、えっと、なんでしょうか?」
ミヤは慣れない様子で返事をした。
「薪割りと石割りを豹さんたちに教えてもらったんですが、ミヤさんはどれくらい続けているんですか?」
ミヤはまさか自分の日課が王子様に伝わっているとは思わず、驚いた。
「ちょっと、みなさん、王子様に何やらせてるんですか!?」
豹たちは笑って答えた。
「ミヤさん、あれ、しっかりとした修行ですよ?よく考えられています」
「そーそー、あれ、すごいぞ」
「うん、かなり、成長できる」
そこにカイルも加わった。
「はい、あれはとても良い修行だと思います。細かな動作1つ1つを見直して、自分に合った身体の動かし方を見つめ直せます。どれほど無駄が多かったか。あれのおかげでかなり成長できました!」
その話を聞いて、ミヤは素直に嬉しかった。
「あ、ありがとうございます。おじいちゃんが教えてくれて。えへへ」
「で、どれくらいできるようになったんだまさか、1時間半くらいになってたり?」
虎はまさかなと思いながら質問したが、それが間違いだった。
「えっと、薪割りがやっとおじいちゃんに追いついてこれて40分。石割もなんとか風圧でできるようにはなりました。でも、まだおじいちゃんみたいに粉々というわけにはいきません。まだまだです…」
その言葉を聞いて全員持っていた物を落とした。
「いやいや、ミヤちゃん、何言ってるんだ?冗談はほどほどにしろってー」
虎は苦笑いしながら言ったが、ミヤは真剣だった。
「本当ですよ、でももう少しなんですよねぇ」
豹たちとカイルは実践しているからこそ、ミヤの異常さを感じていた。
(バケモノめ!)
豹たちはそう思っていたが、カイルは違った。
「ミヤさん、ぜひ手合わせをお願いします!」
カイルはキラキラした目でミヤにお願いした。
「えっと、王子様と剣を交えたりするのって、大丈夫なんですか?」
「構わんぞ?」
女王は即答した。女王もミヤの実力が気になっていたのだ。ミヤは仕方なくカイルとの手合わせをすることになった。しかし、この手合わせでミヤは全員の度肝を抜くのであった。
「あ、でも、すみません、ご飯食べてからでも良いですか?めちゃくちゃ美味しくて…ダメでしょうか?」
カイルは笑った。
「どうぞどうぞ、しっかり食べてください。ですが多すぎたら残して構いませんからね?」
「あ、大丈夫です、食べれると思います」
カイルが冗談半分で聞いていると、あっという間に料理が減っていった。カイルは呆気に取られていた。そして、女王は、家臣にご飯をしっかり準備しておいてよかったとホッとしていた。ご飯を食べ終わり、ミヤは元気よくカイルとの手合わせの準備を始めた。すると、虎がミヤに質問した。
「ミヤちゃん、プリン食べたいって言ってたんだっけ?」
「あ、はい、プリンが好きです、でも、わざわざ作ってもらうのはちょっと…申し訳ないというか…」
「構わんぞ?カイルとの手合わせの間に作らせよう」
「本当ですか!?ありがとうございます。頑張ります!」
ミヤはさらに元気になっていた。しかし豹は少し不安になっていた。
(ミヤさん、流石に手加減はできますよね…)
「ちょっとミヤさん、少し良いですか?」
「はーい?」
ミヤは豹の方へ歩いていった。
「ミヤさん、カイルさんは最近やっと石割りができるようになりました。王子様としては強いですけど、まだまだです、つまり、わかりますね?」
「はい、この短期間で石割りができるようになったくらいすごいってことですね?わかりました、気を引き締めます」
豹はため息をついた。全く自分の意図が伝わっていなかったからだ。
「ミヤさん、逆です。未熟ですから、調整をしてくださいね?手加減をお願いしますね?」
「え、でも、手を抜くのは失礼なんじゃ…」
ミヤの言う事も最もだった。豹が考えていると、虎が寄ってきた。
「じゃあ、ミヤちゃんは魔法と剣禁止、攻撃も寸止めな。あとはー、そうだなー…攻撃して良いのは2回までにするか」
なかなか難しい条件だと豹と虎は思っていたが、
「わかりました、気をつけますね」
と、ミヤは即答した。不安が多少残っていたが、大丈夫だろうと信じる2人だった。こうして、ミヤとカイルの手合わせが行われることになった。すると演習場に騎士団も集合していた。
「お前たち、訓練はどうしたんだ?」
女王が質問すると、奥から大きな声で話しながら騎士団長が出てきた。
「すみません、女王様、皆カイル様を急成長させた特訓を、更に高レベルで行えるという方がどうしても気になってしまいまして、今回は見て勉強ということでお許しください」
「アルベルト、貴様が見たいだけだろう?」
女王はすべてお見通しのようだった。
「あらま、バレてしまいましたか?もし可能なら、私もカイル様の後で構いませんので、お手合わせ願いたいです」
「ミヤよ、この男が次にやりたいと申しておるが、どうだ?」
ミヤはアルベルトを見て、少し警戒した。しかしそれは強さにではなく、話し声が大きく、豪快な人に思えたからだ。
(すごーく元気な人だなぁ)
「あ、わかりました。カイル様との手合わせが終わったらお願いします」
「ありがとうございます。感謝しますぞ!」
そう言うとアルベルトは素振りを始めた。そしてカイルも木剣などの装備を整え出てきた。
「あの、ミヤさんはそのままで大丈夫ですか?何かこちらで準備しましょうか?」
「あ、大丈夫です、とりあえずこのままで」
周りにいた騎士団員はざわついた。余裕をこきすぎだと言う者、舐めていると言う者、カイルに失礼だと言う者様々だった。
「では、始めようか、両者構えろ」
女王の掛け声でカイルは構えた。ミヤは目を瞑り、ふぅ。と息を吐いて集中した。ミヤが目を開いた途端に周りにいた全員は寒気がした。身震いする者もいた。無意識に1歩下がってしまった者もいた。そして女王はトルネの方を向いた。先ほどトルネと話していた寒気の原因は、この少女だったと言うこと。身体は無意識に反応して、危険信号を出していたのだと気づいた。
「トルネよ、私たちの感覚は間違っていなかったのだな」
「そうだな、先ほどの寒気はミヤだったのか」
カイルも身震いしていたが、その状況を楽しもうとしていた。
「いきます!」
カイルは勢いよく突っ込んだ。木剣を勢いよく振ったが、ミヤはそれを最小限の動きで避け続けた。アルベルトはミヤの動きを見て感心していた。
「あの少女、素晴らしいですね、全く無駄がない」
ミヤはそのまま避け続けていた。カイルが呼吸をするために攻撃を一瞬緩めた。その隙を見逃さなかった。ミヤは一気にカイルとの距離を詰めた。カイルは距離を取ろうとしたが、ミヤはカイルの動きを読み、さらに距離を詰めた。
「ふっ」
と息を吐きながら拳を突き出したミヤ。カイルは木剣で受けようとしたが、ミヤは寸止めで止めた。するとバキーンという音が鳴り響いた。カイルは何が起こったか分からずにいた。木剣には何の衝撃もないように感じた。しかし、木剣は粉々になっていた。ミヤは追撃をするために、もう一度構えた。
「カイル様、少し力を上げます、必ず避けてくださいね」
そう言うと、ミヤはニコッと笑いながら拳を突き出した。
「ふっ」
「くっ」
カイルはなんとか避けることができた。しかしその風圧でカイルの後ろにものすごい衝撃が走った。
「鷹、壁!」
虎の声に反応して鷹がアースウォールを展開した。なんとか防ぐことができたが、全員が驚愕していた。




