第41話 扱きの後
虎は昔を思い出していた。実はギルドマスターは昔スパルタで知られる冒険者だった。だが、周りから注意されることが多かったので、我慢していたのだ。豹たち3人もそのスパルタの餌食になったことがあるので、昔を思い出していた。
「鷹、1つ心配なことがある」
「兄ちゃん、実は僕も」
「この後、多分だけど…」
「うん、やっぱりそーだよね…」
「俺らの番くるよなぁ」
「くるよねぇ…」
スイッチの入ったギルドマスターはテンションが上がり、誰彼構わず追い込む。近くにいると危険なのだ。
「さぁ、あんたたち、どっからでもきな!」
「おらー!」
冒険者たちが一斉に突っ込んだ。するとギルドマスターは1人の腕を掴み、振り回した。そして他の冒険者も吹っ飛ばした。そして腕を掴んだ冒険者を地面に叩きつけた。冒険者は血を吐きながら苦しんでいたが、ギルドマスターはその冒険者を蹴り飛ばした。
「豹、こいつ治療しな!治したらもう一回こっちに来させな!」
そう言いながら次の冒険者の方へ向かった。掴んでは投げ、蹴り飛ばして治療。掴んでは投げ、蹴り飛ばして治療。何度も繰り返していくうちに、冒険者たちの心は折れた。
「すみません、勘弁してください。今まですみませんでした」
冒険者が謝っていると、ギルドマスターが近づいていった。
「もう疲れたかい?」
「はい、もう限界です」
「そーかそーか、では今の限界を越えれるように頑張ろうな」
そういうとまた腕を掴み投げた。冒険者はまた血を吐き、蹴り飛ばされ、治療が始まった。豹たちがこの惨劇を止めないのは、止めてしまうと次は自分たちだとわかっているから止めないのだ。今まで無礼なことをしていたと自覚し、反省しなさい。という気持ちが1割。残りの9割は俺らの分もやられとけ。という気持ちだった。そこから数十分たった頃、ギルド職員が止めにきた。
「ギルドマスター、お仕事が残っていますので、そろそろ終わられてください。それにそれ以上続けると、死んでしまいますので」
「えー、もー終わりかい?久々に楽しかったのに」
ギルドマスターは渋々手を離した。
「あんたたち、相手して欲しかったらいつでも言ってきな!相手してやるから!他の冒険者にも言っときな」
ギルドマスターはニヤッと笑って歩いて行った。
「さあ、皆さん、治療して解散しましょう」
豹は冒険者たちを1箇所に集めて治療を進めた。
「さて皆さん、治療しながら聞いてください。今の自分たちの現状、どーですか?」
冒険者たちは下を向いて答えない。豹はさらに続けた。
「私たちはこのギルドの現状に不満があります。あなたたちのような人たちが増え、先輩冒険者やギルドマスター、職員の皆さんに対する態度があまりにも悪いです。その為、私たちがランク提示をせず、クエストに参加し、現状把握をさせてもらいました。全然ダメでしたね。今ならわかるんじゃないですか?」
豹の問いかけに冒険者たちは黙ったままだった。
「ねぇ、聞いてるんだから、答えてよ。黙ってたんじゃ、わからない」
鷹が我慢できずに話した。
「今まで、舐めてかかってた人に、ボコボコにされ、依頼もまともにできない、どんな気持ちなの?黙ったままなら、もう冒険者、辞める?」
鷹の話に流石に苛立ったようで1人の冒険者が言い返した。
「黙れ!俺らはこれしかないんだよ。恵まれない環境で育って、頼る身内ももういない。これしか生きていけないんだよ!お前らみたいな成功者に何がわかる!」
この言葉に虎が反応した。しかしいつもより真面目に、そして真剣に話を始めた。
「あのな、俺らの事、少し話してやるよ。どーせ治療ももう少しかかるだろうしな。暇つぶしにはいいだろ?」
それから虎は自分たちの身の上話を始めた。兄弟ということは伏せたが、自分たちは孤児であること。そして孤児たちを集め傭兵団を組織したこと。そして冒険者として成功した後も、傭兵団と兼任し活動していることなど、ほぼ全て話した。その話を聞いて冒険者たちは言葉を失った。今までの自分たちの行動がいかに愚かだったか、そして自分たちにも可能性がないわけじゃないということ、色々な気持ちが駆け巡った。
「おい、今その傭兵団はどーしてるんだ?」
「まだ所属してる。だが、もう後継もたくさんいるから抜けようとは思ってるよ。何でもかんでもやってる場合じゃなくなってきたしな」
「そーか。俺らにも可能性がないわけじゃないんだな」
「まあ、自分たち次第じゃねーか?今のままなら最低の冒険者だってことだな。ここからでも改善してみたらどーだ?」
冒険者たちは治療を終え、集まって話していた。
「みんな、もう一回ちゃんとやってみるか?」
「だな、いつまでも荒くれ者ってまとめられるのは嫌だしな」
「俺は結婚したい!」
それぞれ思うところをしっかり話して、これからの事を決めていった。その様子を見守っていた豹たち。なぜこの依頼が自分たちに任されたのか、少し昔を思い出しながら理解していた。
「なんか、ガンロックのおっさんと梅ちゃんに出会った時の俺らみたいだな。もっとガキだったけど」
「ですねぇ、周りは全て敵。自分たち3人以外は信用しない。無駄に自信がある。あー、今思うと恥ずかしいですね」
「本当、梅ちゃんたちには、助けられたよね。怖かったけど…」
鷹は思い出しながら暗い表情をしていた。おそらく扱かれた日々を思い出しているのだろう。
「おい、あんたら、ちょっと相談がある。いいか?」
豹たちは頷いた。
「冒険者の再登録ってどーやってやるんだ?」
豹はその質問にしっかり答えた。
「まずは受付にいきます。そして冒険者カードを提示して、再登録をとお願いすればできますよ。ただし、最低ランクからとなります。過去の実績などは基本的に抹消されます。それでも構わないのであれば、すぐにでも」
「構わない。また1からスタートする。そして努力してあんたらに追いつくよ」
「そーか、じゃあ、Sランクになるって話だな?」
虎がニヤッと笑って聞いた。
「は!?S!?お前たちAだろ?」
豹が説明を始めた。
「このおバカだけなんですよ、Sランクに見合わないと言われているのは。行動が…実力は十分なんですけどね…」
「おい、今それ言うか!?改めるよ、俺も」
その後も世間話をしながらも冒険者たちと打ち解けていった豹たちであった。




