第37話 ギルマスと指導計画
「おらー、たった3人で調子乗ってんじゃねーぞ!」
そう叫びながら沢山の冒険者が3人に飛びかかった。豹と鷹も参戦していた。なぜかいつもより生き生きしている3人。
「これはまた久々にしごきがいのありそうな冒険者たちですね」
「弱すぎて、テンション、下がってきたけど…」
「鷹、そー言わずやる気出せ。ここのギルマスが舐められてるんだぞ?ダメだろ?」
鷹は虎にそう言われるとため息をついた。
「本当、この人たち、あの人の凄さ、わからないの?」
「わからねーからこんな無法地帯になってるんだろーよ。それに、あの人は…」
虎が何か言いかけると奥から優しい声がした。
「こらこら、ギルド内での揉め事はやめましょーねー」
すると豹たちは手をとめた。
「久しぶり、ギルマス。あ、梅ちゃん」
鷹はニコッと笑って挨拶した。そこに立っていたのは小柄なおばあちゃんだった。
「おやおや、3人とも久しぶりだねぇ。元気だったかい?」
豹と虎も周りに居た冒険者をほったらかして、挨拶しに行った。
「梅さん、お久しぶりです。梅さんもお元気でしたか?」
「梅ちゃん、元気だったか?」
挨拶をしていると、後ろから冒険者が襲ってきた。「まだ終わってねーよ!無視すんじゃねー!」
するとバン。という音と共にその冒険者が床に転げた。豹たちはうわぁという顔をしてその冒険者を見ていた。なんとおばあちゃんのようなギルドマスターがその冒険者を投げていた。
「私のお客さんに手を出すとはいい度胸だねぇ、死ぬかい?」
冒険者も何が起こったのかわからず、まだ凄んでいた。
「うるせーよ、ばばあが!」
すると鷹が怒った。
「お年寄りに、手出すのは、ダメだよ?」
その冒険者の胸ぐらを掴み、持ち上げた。鷹は女性に手を出す人が大嫌いだった。もちろん弱い者いじめをする人も嫌いだが、ギルドマスターのことを弱いと思っているわけではない。
「く、くるし…」
「こらこら、鷹、おやめなさい」
そう言われて、鷹はパッと離した。
「さて、みなさん、争いは終わりということでいいですかねぇ?」
数人はやられっぱなしの状況に不満があるようだったが、その場は一旦治った。豹たちは奥に案内され、ギルマスと話をした。
「梅さん、改めてお久しぶりです」
「みんな元気にしてたかい?大きくなって」
「梅ちゃん、もう流石に俺ら成長期は過ぎたぞ?1年ぶりだけど、変わってねーよ」
虎が笑いながら答えた。
「向こうのみんなも元気ですか?」
「うん、みんな元気。楽しそうにしてるよ」
「まあ、俺らはこの前衝撃の事実を知ってショックを受けたところだけどな」
虎が悲しそうに言った。
「ほぉ、何があったんだい?」
「驚いたのは事実ですが、ショックを受けたのは虎だけでしょう?」
「ははは、なるほど、まだ知らなかったのかい。じゃあ、さらに驚くことでも言っておこーか?」
豹たちはなんだ?という顔でギルマスの方を見た。
「響は私の孫です」
豹たちは固まった。理解に苦しんでいた。というより、認めたくない事実という感じだった。
「あらあら固まって、そんなに驚くことかい?」
「梅ちゃん、それ、本当?」
鷹はまだ疑っていた。ギルマスはニコッと笑いながら答えた。
「確認したら嘘ってわかる嘘なんてつかないさね」
まあ、確かにそーか。と納得するしかない豹たちだった。
「で、本題だけど、今回はうちのギルドの新人冒険者たちを指導してやってほしい。どーも過信しているんでね」
「なんで梅ちゃんがしないんだよ?」
「そーです、梅さんは私たちより強いでしょう?」
ギルマスは首を振った。
「私だと、実力差があり過ぎるんだよ。さっき投げたのもおそらく何をされたかわかってない。だから納得せずまだやろうとしたんだよ。プライドだけは一丁前な子たちだからね。まあ、あんたたちでも実力差があるから厳しいかもしれないけど、私よりはマシだろう。頼めるかい?」
「もちろん、頑張る、梅ちゃんには、お世話になってたから」
珍しく鷹がたくさん喋っていた。そして、やる気に満ち溢れた顔をしていた。
「じゃあ、お願いするね。多少手荒にしても構わないから」
「元々そのつもりだ。あーゆー奴らは、実力差を示さないとな。まあ、できる限り優しくするつもりではいるから」
と、虎が笑いながら答えた。話がまとまったので、早速取り掛かろうとしたが、ギルマスがある質問をしてきた。
「そーいえばお前たち、1つ書き忘れていたよ。あれはどーゆーことだい?」
あれとは?というような顔をしていた。
「おバカ、パーティーの件だよ。なんで黒豹が無くなってるんだい?」
「あー、その事ですか。ガンロックさんから何も聞いていませんか?」
「ガンロックに問い詰めたら、自分で説明させた方がいいから、俺は言わん。って言われたよ」
(あのおっさん、根掘り葉掘り聞かれるのが面倒で、逃げたな?)
と思った虎が説明を始めた。そしてパーティー名を変えたこと、新しいメンバーにミヤも入った事を伝えた。しかしそれ以上のことを説明はしなかった。おそらくすぐに冒険者として有名になるだろうと思っていたからだ。そして、いずれ会うだろうからその時に驚かしてやろう。と誓った。響の祖母という事実を今まで教えてくれなかった仕返しのようなものだった。話が終わり、ギルマスもミヤに興味があったが、虎が詳しく言わないからこちらから聞くものじゃないなと判断し、深掘りはしなかった。
「さて、新人どもの指導方針はどーしよーかねぇ?」
「それなんだがよー、なんか歯応えのある討伐対象いねーかな?それに連れていこーぜ!で、とりあえずやらせてみるわ。死にそうになったら助けるって感じで」
「なるほどのぉ。どんな奴をお望みじゃ?」
豹たちは考えた。
「ドラゴンはやりすぎですかねぇ…」
「ドラゴンなぁ…飛ぶやつらは新人には無理だろ…」
「頑丈なやつ。自分の剣や魔法が、通用しないって、実感しないと、変わらないよね?」
3人が考えていると、ギルマスが提案をした。
「黒豹には歯応えがないかもしれんが、おるぞ、そーゆー奴。ロックリザードが」
「いいじゃん、決まり」
豹たちはニヤリと笑った。新人指導はまずはロックリザードになった。




