第35話 その者の名は、ミヤ
食事の準備が進む中、豹たちも席に着いた。すると、扉が開き男性2名が入ってきた。
「失礼します、第1王子カイル、参上しました!」
「失礼する、皆さん、お久しぶりですね」
そういうと、女王の隣に座った。
「お2人共、お久しぶりです」
「よー、元気そーだなー、トルネさんも久しぶり」
「ペコ」
豹たちも挨拶をした。
「みなさん、お久しぶりです、私のわがままのためにはるばる申し訳ありません。ですが、どーしてもみなさんに教えてもらいたくなってしまいまして。どーしても今の先生方は僕が王子だからか遠慮されてまして…」
「そりゃそーだろ、俺らが変なんだよ。な!2人とも」
「変なのはあなただけにしてもらいたいです」
「うん、同意」
豹と鷹は虎の意見には賛同しなかった。
「おい、お前らなー」
そんなやりとりも、女王たち3人にとっては面白いようで、
「お主たちは相変わらずだ、ずっとそのままいるように。これは女王命令だ」
「どんな権力の使い方してんだよ。もったいねー」
そー言われた女王は少し意地悪なことを言った。
「ほぉ、では女王権力で、私の第二の夫にしてやろーか?」
ニヤッと笑いながら言った。すると虎はむせた。
「おい、それどっちの返答しても俺に損しかないじゃねーか」
「ははは、お主が権力の使い方が悪いと言ったのであろう?なので使い方を変えたんだ」
「はいはい、すみませんでしたー」
話していると、料理が出揃った。料理を運んでいる家臣たちの中には虎を睨む者もいたが、虎はそんなこと気にせず、飄々としていた。虎が文句をつければ女王は必ず裁いてしまう。それをわかっているからこそ何も言わず、自分のいつも通りで過ごしているのだ。そして女王も虎がそういう態度に文句をつけないとわかっている為、そういった人間に何も言うことはない。ただ、周りの家臣たちが後でそういった態度の家臣に注意するのだった。
「さて、料理が出揃ったな、食べようか」
みんな揃っていただきますと言った。
「みなさん、いつまでこちらにいるんですか?」
カイルの質問に対して、豹が答えた。
「最初は2ヶ月の予定だったんですが、その件も含めてご相談があります」
「なんだ?もっと期間が欲しいのか?」
「いえ、その逆なんです」
その言葉を聞いた女王の顔が少し曇った。
「なに?」
それを感じとった虎がすかさず言葉を挟んだ。
「豹、それじゃこの人は怒るぞ。女王様、俺が説明していいか?」
女王は頷いた。
「まず当初の予定は1ヶ月で冒険者たちの指導、残り1ヶ月でカイルの指導を行う予定だっただろ?」
「そーだな、その予定で進めようとしていた。そしてこの城にも部屋を準備する予定だ」
「そー、そこ!それで相談なんだけど、1日かけて冒険者の指導をした後、交代でカイルの指導をしようかと思うんだけど、どーだ?ここに泊まらせてくれるなら、帰りの時間を気にしなくていいし、カイルも日中は自分の勉強やら稽古やらをつけれるだろ?ただ、カイルも大変にはなるからしんどかったら変えてもいい、どーだ?」
女王は少し考えていた。息子の負担が増えることに対して不安があったからだ。
「まあ、それを決めるのは女王様とカイル自身だから、キツいと思ったらやめるし、効率が悪いと思えば変えるよ。ただ、手を抜くことは絶対にしない。やるなら徹底的にやる。どーかな?」
その言葉に1番に反応したのはカイルだった。
「厳しい?辛い?最高じゃないですか!やりましょう!いいですよね?母上?」
カイルのキラキラした目を見て、断りづらくなった女王は許可を出した。
「様子を見ながら頼む。どちらもキツくなって中途半端になるのが1番ダメだからな」
「そーですね、私からも体調の管理と疲労度の確認はお願いしたいです。カイルは頑張りすぎるので」
「母上、父上、何を甘いことをおっしゃっているんですか、そんなことだと王子としてダメです。それに勉強や今の稽古では逆にだらけてしまいます。やるなら徹底的にですよ!」
虎はニヤッと笑った。また虎の勘が働き、3人の思惑通りに事が運んだ。
「じゃあ、様子見ながらどんどん追い込んで行こーな!カイル」
「はい、お願いします。やるぞー」
「まあ、とりあえずそれは明日からで、ご飯食べましょーか」
予定の話は終わり、食事を進めていく6人であった。
食事も終わり、お茶が出て来た頃。
「さて、もう一つ重要なことを確認していなかった。お前たち、本当に新しいパーティーを組んだのか?」
「え!?みなさん解散したんですか!?では、私の専属指導者に!」
「なんと、では、わが国に来て騎士団に入るというのはどーですか?ぜひにも!」
女王の話を聞いて、カイルとトルネは先走って話していた。女王は2人を静止し、話を進めた。
「待て待て、そーゆーことではない。新しいメンバーを迎えて、パーティー名を変えた。ということだそうだ」
それを聞いた2人は明らかにテンションが下がっていた。豹が説明を始めようとしたが、まずは家臣の皆を外に出すようにお願いした。
「よし、お前たち、外に待機していろ。この者たちなら構わん」
家臣の皆は渋々外に出た。それを確認してから豹は説明を始めた。
「まず、我々は黒豹として国王からある依頼を受けていました。みなさんもお耳にしたことはあると思いますが、鑑定の少女の捜索です。代々受け継がれていた捜索の魔道具が判明した為、少女が現れたのは確認でき、その行方を追っていました。そしてある村にいることまでは魔道具で特定でき、その村に向かいました」
「鑑定を持つ者が現れるという話は耳にしたことはあったが、お伽話ではなかったのだな」
「なんと、鑑定を持つ者がついに現れたのですね」
「実在するんですね、伝説上のお話かと…」
3人もやはり興味はあるようだった。
「そして、なんと虎の勘が冴え渡り、村に着いた途端に発見してしまいました。これには私たちも驚きました」
「そ、さすが俺の勘ってな」
女王とトルネは苦笑いしていたが、カイルだけは
「さすが虎さん、一流冒険者にはそういった能力も身につくんですね、素晴らしい!」
と感動していた。
「そしてその少女と行動を共にするために、ゴブリンを討伐しに行くことになりました。ちなみにこれも虎の勘です」
カイルはさらにキラキラした目で虎を見つめていた。
「そして、色々ありまして、最終的にその少女と共にゴブリンジェネラルとボブゴブリンを討伐してしまいまして…そして」
豹が話を続けようとすると女王が遮った。
「待て、ゴブリンジェネラルとボブゴブリンと言ったか?それを4人でか?お前たちのレベルが高いとはいえ、そんなこと可能か?」
「それについてはその少女の魔法適正が火だった事が大きいですね。で、3人共その少女の成長を見てみたいという話になりましたので、冒険者にならないか?とお誘いしたところOKをいただきまして、パーティーを組むことになりました。大まかにこんな感じです」
女王やトルネ、そしてカイルは信じれないという表情をしていた。
「で、その少女の名前は?」
女王が問いかけた。豹たち3人は同時に答えた。
「ミヤ」
クライ女王国にもミヤの名前が伝わった。




