第34話 加速とご挨拶
「八雲さん、アドバイスしますか?」
「カイン、お主が見守ろうと言ったんだろ?我慢せえ」
おじいちゃんも八雲も必死に我慢していた。するとまたミヤがおじいちゃんに声をかけた。
「おじいちゃーん、ちょっと来てー」
おじいちゃんはミヤの方へ近づいていった。
「どうした?」
「ちょっとウォーターボール打ってくれない?めちゃくちゃ小さく」
「小さくか?どれくらい?」
「限界まで小さく」
「わかった。ウォーターボール」
すると水滴がピチョンと地面に落ちた。ミヤはそれをずっと見ていた。
「ごめん、もう一回」
「ウォーターボール」
また水滴がピチョンと落ちた。
「あれー?なんでなんだろ。八雲さん、八雲さんもウォーターボールできます?」
「まあ、似たようなものならできるぞ。水」
すると水滴がピチョンと落ちた。
「ごめんなさい、八雲さんはダメでした。普通じゃなかった。参考になりませんでした」
「なんでじゃ!?」
八雲はせっかく協力したのに、まさかの一言を言われてショックを受けていた。
「実はですね、自分で魔法を使いながらずっと鑑定をして見てたんです。その方が魔力の動きが良く見えるので。で、おじいちゃんの魔力の流れも見させてもらおうと思っていたんですけど、ちょっと別のことが気になっちゃいまして」
「別のこと?」
「はい、私は魔力の流れが右回りなんです。でもおじいちゃんは左回り。あ、八雲さんはまっすぐ指先に動いていたので、どっち周りかすらわかりませんでした。そしてどーゆー原理なのかもわかりませんでした」
「そーゆーもんなんじゃが…」
と、八雲は言ったが、ミヤは言い返した。
「いいえ、八雲さん、普通じゃありません。なんで回り方が違うんだろーって思って考えてました。本当はおじいちゃんの魔力の流れとか集め方を見て参考にしようと思ってたんですけど、そっちが気になっちゃいました」
すると、
(カインよ、これは伝えていいのではないか?ダメか?)
と心の中で思いながらおじいちゃんの方を見ていた。おじいちゃんもそれに気付き、はぁとため息を吐きながら頷いた。
「ミヤ、人にはな、得意な魔力の流れ、つまり方向があるんじゃ。カインなら左、おそらくミヤは右なんじゃろう。だから流れが違うんじゃよ」
「そーなんですね、初めて知りました。なるほど、そーゆーものなんですね。勉強になります」
そういってミヤはまた基礎を始めた。しかしすぐにミヤは手を止め、しゃがみ込み地面に何かを書き始めた。おじいちゃんと八雲は気になって覗いた。するとミヤは身体の絵を2つ描き、右回りと左回り両方魔力の流れをそれぞれ描いていた。そして、手を止めて考え込んだ。
(こっちが右回り、こっちが左回り…得意な方がある。でも、苦手ってわけでもないのか?)
その様子を2人は黙って見ていた。するとミヤは立ち上がり、もう1度基礎をやってみた。するといつもよりでかい火になり、ミヤ自身も焦っていた。
「わーわ、やばい、失敗。でもできた!」
もう1度座り込み何かを考えているミヤ。そしておじいちゃんと八雲は驚いていた。ミヤはいつもの魔力の流れと逆で魔法を使っていたのだ。少しのアドバイスで自分で考えて何歩も先の答えを見つけ出すミヤに驚きを隠せなかった。
(なるほど、できなくはないけど、今のままではダメだ。もっと逆回りを練習しよう。で、ちょっと試しに)
ミヤは両手の人差し指をたて、集中していた。するとボッという音と共に両方の人差し指から大小サイズの違う火魔法が出た。
「やった、できたー」
と言った途端に左手の火魔法は消えた。
「あー、消えちゃったー。でもできることはわかった。大収穫!今日はここまでにしよーっと」
そういってミヤはお風呂に向かった。おじいちゃんと八雲は驚きすぎて固まっていた。
「カインよ、わしの予想をはるかに超えよったぞ」
「はい、凄まじいですね。私が1年以上かかってたどり着いた領域にわずか1ヶ月少々で…」
「自分でたどり着きよったぞ、魔力を逆に練り、同時に発動するという方法に。そこまでできると思ってなかったぞ」
そう、ミヤはさっき、右手には右周りで、左手には左回りで魔力を送っていた。それによって両手で火魔法を発動することができた。つまりミヤは魔法の同時発動の入り口に自分で考えて立ったのだ。ここからミヤの成長は更に加速する。
その頃の豹たち
「お久しぶりです、女王様。依頼の件で伺いました」
3人は女王の前で挨拶をした。
「久しぶりだな、黒豹の3人よ。面をあげよ」
3人はその言葉を確認してから顔をあげた。
「女王様、一つよろしいでしょうか?」
虎は丁寧な言葉遣いで話した。すると女王は無視していた。
「えっと、女王様?」
少しの沈黙が続いた後、女王は口を開いた。
「虎、こちらも1ついいか?」
「はい、なんでしょう?」
はぁ。とため息をついた後、
「いつものように喋らんか!毎回言っておろうが。治さぬなら無視するぞ?貴様ら3人はいつも通りで良い。このくだりも何回目だ!流石にめんどくさくなってきたぞ!」
すると豹たち3人は笑った。
「すみません、女王様、家臣の方々の視線が怖いもので」
「そ、油断して何かの拍子に不敬罪とか嫌だから一応な」
「コクッ」
鷹はいつもより無口な気がした。周りの家臣たちの目が気になるのだろう、おそらく人見知りしているのだろう。
「お前たちに対して不敬罪などとほざく輩は逆に私が不敬罪にしてやろう。遠慮することはない。で、虎、何か言いかけていたな」
「あー、なんだっけ?」
「虎、黒豹のことじゃないですか?」
「あ、そーだそーだ」
女王は首を傾げた。
「お前たちのこと?どーした?解散でもしたのか?そんなわけないか、ここに来ているものな。ははは」
「まあ、解散というか、黒豹は無くなったんだよ。新しいメンバーが入って、パーティー名変えたんだよ」
すると女王は驚いて椅子から落ちそうになった。
「冗談であろう?そんなバカなことをするか?」
「本当だぞ?なぁ?」
「はい、本当です」
「です」
3人が真剣に答えたので、女王は質問した。
「待て待て、今までの黒豹としての功績がなくなるぞ?白紙とまではいかないが、認められない部分が出てくる可能性があるぞ?大丈夫なのか?」
「あぁ、それは新しいパーティーの子にもギルマスにも言われたけど、いいんだ、3人できっちり話したことだ。それにもう手続きも終わってるしな」
「なに!?もう手続き済みなのか!?待て、今回の依頼は黒豹に対してだったろ?なぜ来た?」
女王の疑問は止まらない。
「まず、解散前に出された依頼であったこと。そしてギルマスが忘れていた。ので私たちが尻拭いすることになりました。その間もう1人のメンバーは特訓をする時間ができたー!と喜んでいました」
「そ、つまりギルマスのせい。響さんに怒られてたよ」
「うん、怖かったね、響さん」
3人はギルマスを怒っている響さんを思い出して背筋が凍った。
「響は恐ろしい女だぞ、逆らうなよ。私でも恐ろしいことがある…」
女王も頭を抱えていた。過去に何かあったのだろうか。と気にする豹たち3人だった。
「ま、そーゆーわけで、新しいパーティー組んだって挨拶も含めて来たわけ。遅くなって悪かった。全部ギルマスの責任だ」
「そーだな、とりあえず詳しい話は食事でもしながら聞こう。新しいメンバーの事も気になるしな。トルネとカイルもお前たちに会いたがっていたからな、後で呼ぼう。みな、食事の準備を」
女王の指示で家臣たちが食事の準備を始めた。




