第33話 大きな一歩
翌日、ミヤは特訓を再開した。もちろん薪割りも終わらした。そして今日ミヤはあることに気づいた。
(なんか、いつもより集中して触れたからか、薪割りめちゃくちゃ早く終わった気がする)
「おはよう、ミヤ」
おじいちゃんが起きてきた。そしておじいちゃんも薪割りを始めた。ミヤは今までなんとなくおじいちゃんの薪割りを見ていたが、今日は細かい所まで意識して見ていた。
(おじいちゃんすごい、振り下ろす時に無駄な力が一切入ってない。それになんだろ、スムーズというかなんだろ、余裕がある?リラックスしてる?)
ミヤはおじいちゃんを見ながら自分でも動いてみた。それに気づいたおじいちゃんはわざとゆっくりして、自分の動きが良く見えるように動いた。ポイントを自分が言葉で教えるのではなく、ミヤ自身に考えさせようとしていた。
(振り上げる…すっと下ろす…力を入れるタイミングはここ。足の位置は…腕の振り上げる角度は…こんな感じ。うまくいかないなぁ)
ミヤがおじいちゃんの真似をしながらやり始めて少したった頃、八雲も出てきた。
「2人ともおはよう」
「おはようございます」「おはようございまーす」
「2人揃って薪割りか、いいな」
八雲は座って2人の様子を見ていた。ミヤがいつもより考えて行動しているのがわかり、ウンウンと頷いていた。
(んー、あと何が違うんだろ…)
ミヤが悩みながら何度も動いていると、
「ミヤは大きくなったな、おじいちゃんにももう少しで追い付きそうじゃな」
そのセリフを聞いておじいちゃんはこら!という目をしたが、八雲はそっぽを向いた。
「だいぶ伸びましたね!最近また伸びてきました」
(あれ、身長…もしかして…)
ミヤはおじいちゃんの真似もう1度した。そしてすぐに振るのではなく、足の位置や、腕の上げ方など自分なりに微調整していった。
(この位置でこの腕のふり)
コン。
(違う…じゃあ、この位置)
コン。
(んー、もう少しこっち)
コン。
(だめ、じゃあ、この辺)
スパン。
「ここだー!」
ミヤは嬉しそうに薪を取りに行った。そして、さっきの動きを繰り返し、体に染み込ませようとしていた。おじいちゃんは手を止めて、八雲の横でミヤの様子を見ていた。
「八雲さん、言うの早いですよ」
「早かったか?すまん。次は気をつける」
「ミヤの気が済んだら、ご飯を食べて魔法の特訓をしましょうか」
「この感覚を掴んでからは特訓の質がかなり上がるな」
「ですね、これはひょっとするとひょっとするかもしれませんね」
2人はミヤの成長を見守るのがとても楽しいようだった。スパンという音がかなり続くようになった頃、ミヤは気が済んだようだった。
「ふう、掴めたかな。お待たせしました」
おじいちゃん2人はウトウトしていた。
「はい、お待ちしていました」
「待ち疲れた」
なんともうお昼が近かった。ミヤは約3時間、薪割りをしていた。
「あれ?もうそんなに時間経っちゃいました?」
「今からお昼ご飯を作るところだよ」
「もうお昼が近い」
2人の言葉を聞いたミヤは謝った。そして汗をいっぱいかいたからお風呂へ向かった。
(私この短時間で何回お風呂入るんだろ。まあ、頭の整理にはちょうどいいってわかったからいいんだけど)
ミヤがお風呂に入っている間に、2人はお昼ご飯の準備をしながら、午後の計画をしていた。
「おそらく今日のミヤなら一気にいくじゃろなぁ」
「ですね、予定をかなり前倒しすることになるかもしれませんね」
2人はとても嬉しそうに話していた。そしてミヤが出てきたので、一緒に食べながら午後の予定を整理した。
「ミヤ、午後はどうする?」
八雲の質問にミヤはニコッとして答えた。
「はい、基礎でお願いします」
予想外の返答に2人は驚いていた。
「ミヤ、いいのか?」
おじいちゃんはミヤに確認した。
「おじいちゃんの素振り真似しててちょっと思ったんだけど、魔法ももっと私らしいやり方があるんじゃないかなって。だからもう1度基礎から鍛えていこうかなって。ダメかな?」
ミヤは少し不安そうに聞いた。
「いいんじゃないか?ミヤのやりたいようにやろう。また焦った時はカインに水かけてもらえ」
八雲は笑いながら言った。するとおじいちゃんもミヤも恥ずかしそうに
「もうしません!」
と答えた。そして午後は基礎からもう1度することに決まった。しかしこの基礎がミヤを大きく成長させることになるのだった。
食事を終え、基礎を始めたミヤ。いつもはただ火魔法を使うだけだったが、今回はもっと基礎の基礎を行うことにした。それは魔力の動きを把握すること。今無意識でできるようになったことをもう1度意識し直すことで、より深く魔力の動きを探ろうとしていた。全身に魔力を巡らせ、どのように魔法の発動に至っているか、それをもっと深く知ろうとしていた。八雲やおじいちゃんに言われたわけではなく、自分で考えてこの訓練を実施していた。おじいちゃんと八雲はこの訓練に口出しすることはなかった。少したった頃、ミヤは1つの実験をしてみた。
(火魔法を使う時、こうやって魔力を練っているのを、指先に集めたら、複数同じ魔法を発動できるんじゃないかな…)
試しに八雲と最初にやったロウソクのような火魔法を、人差し指に意識を向けて魔力を練り、その後中指へ意識を向けて魔力を練ろうとした。すると人差し指の火は消えてしまい、中指の火だけついた。
(あー、やっぱりそんなことできないか…そうだよね、全身を巡らせてから指先に集めるんだもんねー。さ、基礎やろ)
ミヤは失敗したと思ってもう1度基礎に戻った。しかしそれを見ていたおじいちゃんと八雲は固まっていた。そしてミヤに聞こえないように注意して小声で話した。
「八雲さん、今のって」
「ああ、ミヤのやつ、自力であそこまでやったのか?」
2人は関心していた。実はミヤがやったことはかなりの高騰技術であと少しで成功していたのだ。




