第29話 新たな依頼
王城を後にしたミヤは黎明の3人と合流し、宿へ戻った。黎明の3人は宿で少し飲み直すと話していたので、ミヤは少しだけお供することにした。
「ミヤさんと正式なパーティーになった記念と」
「ミヤちゃんが無事に帰ってきた記念と」
「ミヤのギルドで有名人になった記念に」
「かんぱーい!」
全員、一口飲んだ後、ミヤは鷹の乾杯の音頭を思い出した。
「ちょっと待ってください、鷹さん、有名人ってなんですか?」
黎明の3人はなぜか笑っていた。
「ちょっと、皆さん、何笑ってるんですか?」
ミヤは戸惑っていた。すると鷹が説明を始めた。
「ミヤは、覚えてる?ギルドで少し揉めたの」
「はい、覚えてますよ?なんか弱いのに皆さんのことバカにしてた人いましたね」
「あいつ投げただろ?その後ギルマスのところに呼ばれて、すごい新人が現れたって大騒ぎ。ギルド内で超注目の的になってるわけ」
と虎が笑いながら説明した。
「私、やらかしちゃいました?」
「どうでしょう、新人のミヤさんが私たちと行動している時点で注目はされていたので、なるようになったという感じでしょうかね?」
「明日には、僕たちがパーティー組んだってみんな知る。余計に、パニックかも?」
鷹が珍しく笑っていた。鷹はかなり嬉しそうだった。
「鷹さん、なんか嬉しいんですか?」
ミヤの質問に鷹は少しそっぽを向いた。すると虎が
「鷹が一番心配してたんだよ。パーティーは認めてもらえるか、国王のところに行って本当に大丈夫か。色々考えてたんだよ。どうやって逃げるかまで考えてたんだぜ、こいつ」
「もー、言わないでって」
鷹は顔を真っ赤にした。どうやら事実のようだ。
「鷹さん、ありがとうございます。嬉しいです!」
ミヤは素直に感謝を伝えた。
「うん」
鷹はその一言だけだったが、嬉しそうだった。
「さて、明日はゆっくりできますが、そろそろ御開きにしましょうか」
「そうだなー、そろそろ寝るか」
「うん、そうしよう」
「はぁい」
4人が片付けをしていると、リコナが走ってきた。
「みなさん、すみません、お話ししたいことが」
リコナが話そうとすると、虎が嫌な顔をした。
「うん、リコナちゃんが走ってきた。つまりろくな事じゃないな、却下」
「もう、寝る、却下」
「リコナさん、もう寝る用意をしています。却下」
3人はかなり嫌そうに答えた。
「ギルドマスターが忘れていたんです。お願いがあります」
リコナは問答無用で説明を始めた。
「逃げろミヤちゃん、これを聞いたらお終いだ。走れ!」
ミヤは訳がわからなかったのでキョロキョロしていた。すると3人は本当に走り出していた。リコナは大声で叫んだ。
「黒豹の3人に指名依頼がありました。エリザ様からです!」
すると、3人は足を止めて、戻ってきた。
「はぁ、やっぱりロクな話じゃなさそーだ」
「エリザ様からということは、長期ですね」
「俺、行きたくない」
3人はよっぽど嫌な内容だと予想ができているようだった。しかし無視できないのには理由があった。エリザというのは、ワーク国の隣にあるクライ女王国の女王の名である。そしてワーク5世の妻、ミリザ・ワークの姉にあたるのだ。つまり友好関係にある隣国の女王からの使命依頼ということになる。隣といってもクライ国まで片道1ヶ月。依頼も含めると、3ヶ月〜6ヶ月くらいの期間が予想される。そしていつも無茶振りをされてきたのが、元黒豹の3人だった。
「皆さん、隣国の女王様からも指名依頼があるなんてすごいですね」
ミヤは改めて3人のすごさを実感していた。
「ミヤちゃん、エリザって名前が聞こえたら、ロクなことが起こらないって覚えときな」
「はい、こればっかりは虎に同意します」
「コク」
鷹は諦めたのか、無口になっていた。
「明日、ギルドまでお願いします。黒豹の使命依頼なので、3人でお願いします。ミヤさん、すみません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。皆さん、頑張ってください!」
「ミヤさん、おそらく長期の依頼になりそうなんですが、1度村に戻っておきますか?私たちは依頼が終わり次第お迎えに行きますので。どうですか?」
豹の提案にミヤは少し考えた。
「んー、正直、さみしいです」
(可愛いこと言ってるー)
虎は悶えた。
「今回で黒豹としての依頼は最後になる。次からは黎明としての仕事が始まるから、しっかり準備しといてくれ。合流したときにまた俺らを驚かしてくれよ!」
虎の言葉に、ミヤは少し燃えてきた。
「確かに、今のままだと皆さんの足を引っ張ってしまうかもしれませんね。皆さんが依頼をしている間、村で鍛え直しておきます!任せてください!皆さんが驚くようになっておきます!」
と言うミヤ。そしてこの発言を少し後悔している虎。
(やばい、なんか余計なことを言ってしまった気がする…まあ、どうにでもなれ)
明日、一旦別行動にすることにした黎明。次再開するのは、何ヶ月後になるのか。
国王とミヤが別れた時のおじいちゃんの家
「どうじゃ、現代の国王は?」
おじいちゃんは少し沈黙していた。
「まあ、マシなんじゃないですか?ミヤと2人きりになった時、何かしていたら、殺しに行くところでしたけどね」
「ははは、まあ、その時はな」
2人とも笑っていたが、目は笑っていなかった。
「あの称号、どう思いますか?八雲さん」
「そうじゃなぁ、国王も多少は悩んでいるようだな。まさか真実の一部が手記として引継がれているとはなぁ」
「まあ、あくまで一部なんでしょうけれど、少しずつマシになってきているんですかね」
「そうだな、少しずつな。まだ様子見は必要だろうがな」
2人は紅茶を飲みながら今後の話を始めた。
「ところで八雲さん、ミヤが帰ってきたら、どうしますか?修行」
「お主が手伝ってくれるなら、多少無理をさせつつ…」
と八雲が言った途端に、おじいちゃんは睨んだ。それに気づいた八雲は苦笑いした。
「冗談じゃ、すまんすまん。徐々にやるよ。少しずつやれることを増やして行こうと思う。3ヶ月くらいかのぉ」
「そうですか、では、少しずつやって行きましょう」
「帰りに伝えるようにしようか。お、他の3人は明日からクライ女王国のようだな。丁度良いじゃないか」
「わかりました。では、明日行きますか?」
「そうじゃな、明日の朝出発しようかの、準備は頼んだぞ」
2人は明日の朝王都にミヤを迎えに向かうことにした。




