第21話 いざ、王都へ
王城
「国王様、黒豹から連絡がありました。明日村を出発するようです」
「黒豹の3人はもう王都に連れてくるほど懐に入り込んだのか?」
「さすが黒豹と言ったところでしょうかね」
「では数週間から1ヶ月程度で到着するか」
「はい、おそらくその予定かと」
「わかった。迎え入れる準備をしておけ。丁重にな」
「かしこまりました」
部下が出て行った後、国王は改めてワーク1世の手記を読み直していた。
「さあ、鑑定の娘はどこまで成長しているか…腕輪のみで足りれば良いが…」
国王は少し不安そうに見えた。
出発の朝
「ミヤちゃん、準備できたか?」
黒豹が迎えに来ていた。
「はい、できてます。薪割りも終わりました」
(今、朝の8時だよな?何時から起きてんだ?)
「ミヤさん、何時から起きてるんですか?」
豹が確認した。
「今日は5時くらいですかね?でも今日は調子良くて最短記録更新しました!皆さんをお待たせできないと思ったら気合いが入っていたんですかね?」
「おー、今日はさらに人間らしく無くなったんだな」
虎が笑いながらそう言うと、ミヤは不思議そうに
「私なんてまだまだですよ?私で人間じゃなかったら、おじいちゃんはどうなるんですか」
と笑いながら話した。
「ミヤ、忘れ物はないか?」
奥からおじいちゃんの声が聞こえた。おじいちゃんはまとめた荷物を持ってきてくれていた。
「うん、それだけで大丈夫!ありがとう」
「気をつけてな」
おじいちゃんは優しい笑顔でそう言った。それを見たミヤは泣きそうになった。
「おじいちゃん、また帰ってくるからね」
ミヤはおじいちゃんに抱きついた。おじいちゃんは黙ってミヤの頭を撫でてくれた。ミヤたちが出発しようと玄関を出ると八雲が立っていた。
「あ、八雲さん、おはようございます。見送りにきてくれたんですか?」
ミヤが嬉しそうに言うと、八雲は
「王都まで連れて行ってやろうか?」
と聞いた。どうやら王都まで転移させてやろうか?という意図のようだ。ミヤは何の事かわかっていたが、黒豹の3人はいまいちピンときていないようだった。
「いえ、せっかくなので、自分たちの足で行ってきます」
ミヤはそう言った。八雲はその言葉を聞いて嬉しそうに
「そうだな、せっかくの旅立ち。そして1度しかない初めての旅立ちだからな、しっかり自分の足で歩き、周りの景色や魔物たちも楽しんでくるといい。ミヤ、じいさんと帰ってくるのを待ってるぞ」
と言った。
「はい、また帰ってきたら修行してください」
ミヤがお願いすると、
「おー、そーじゃった。ミヤ、王都から1度帰る時は3ヶ月程村におってほしい。色々と教えてやりたいことがあるんじゃ。構わないか?」
ミヤは黒豹の3人の方を向いた。
「おそらく問題ないと思いますよ?とりあえず要件さえ済ませることができたら、自由にしましょう。ミヤさんを村に送り届けたら、私たちは王都に戻って何か依頼をこなしていてもいいですし」
「そーそー、自由なのが冒険者のいいところだしな」
「うん、いつでもここに帰ってこよう」
黒豹の3人もミヤのおじいちゃんの家を我が家のように気に入っていた。
「さあ、行っておいで。自分の世界を広げておいで、ミヤ」
おじいちゃんは少し寂しそうだったが、笑顔で送り出してくれた。いよいよ村を出ることになったミヤ。期待と不安が入り混じった出発となる。しかし横に並んだ黒豹の姿を見て不安は消えた。
「楽しんで行こーぜ」
虎はいつにも増して楽しそうにしていた。
「そう言えば、パーティー名、どうします?黒豹のままで行きますか?」
ミヤの問いかけに黒豹の3人は固まった。なぜならミヤが入ってくれたことが嬉しくて、そんなこと頭から抜けていたからだ。それに気づいたミヤは笑った。
「じゃあ、王都に着くまでに決めましょうね!」
「ミヤさんが決めていいですよ?」
「そーそー、新しくパーティー組むんだし、新しいメンバーのミヤちゃんが決めていいぞ?」
「うん、決めていい」
3人のその言葉に少し意地悪をしたくなったミヤ。
「じゃあ、黒豹で」
豹が素早く反応した。
「はい、全員で考えましょうね。虎、鷹、わかりましたね?」
虎と鷹は笑っていた。
「俺らは黒豹でいいぜ?」
「うん、馴染みのある名前だし、いいよ?」
豹はそんな2人を見て、
「決めました。虎と鷹で虎鷹で」
豹は少しだけ怒っているように見えたが、割といい名前なのでは?と思っていた。しかし虎と鷹が
「だめだ」「だめ」
と否定した。
「名前を勝手に入れられる私の気持ちが分かりましたか?」
「はい、すみません」
と虎と鷹が謝った。そんなやりとりを見てミヤが
「皆さん本当に仲良しですね。仲がいいって感じの名前考えます」
いつの間にかパーティー名の方向性が決まった。その後もワイワイ話しながら王都に向けて進んでいった。
ミヤたちが出発した後のミヤの家
「八雲さん、ミヤが帰ってきた後、どうしましょうか」
「以前伝えたように修行していこうと思っている。あとはミヤの成長速度次第かな。もう2度とあのような失敗はせん」
以前ミヤに魔法が使えるようにするために自分の魔力を流して危なかったことを八雲はかなり気にしていた。
「あれは本当に驚きました。何よりも八雲さんが焦っているところも久しぶりに見ました」
おじいちゃんが笑ってそういうと
「わしだって失敗することもある。まだまだじゃな」
その言葉を聞いて、
「あなたでまだまだなら、私たちはどうなるんですか」
おじいちゃんは笑いながら聞いた。すると八雲は
「ひよっこじゃな」
と笑いながら答えた。2人はミヤの指導について楽しそうに相談していた。
「実際どこまで教えるかですよね…」
「そうじゃのー…ミヤ自身の考えもあるじゃろうが、望むことはしてやりたくなるのぉ」
「ですねぇ…2人ともジジ馬鹿になってしまいましたね」
「そうじゃのぉ。あの時はこんなことになるとは思わなかったけどのぉ。今となっては可愛い孫じゃよ」
2人は親バカならぬジジ馬鹿になってしまったようだ。それだけミヤのことが大切で、可愛い存在ということだろう。




