第20話 思い
その日、ミヤ達はお互いのことをたくさん話した。ミヤは物心ついた頃からおじいちゃんと住んでいて、おじいちゃんからいろいろなことを教えてもらっていた。文字の読み書きやお金のこと、そして今も続けている身体を鍛える方法など、おじいちゃんが必要だと思うことはすべて教えてくれたそうだ。魔法が使えなかった時期もあり、悔しい思いもしたが、今となってはその分の努力が身を結んでいる。対して黒豹は王都の貧困街出身で、父と母は流行り病で亡くなったそうだ。自分たちの命よりも子ども達の命を優先し、自分たちの薬は買わずに豹たち3人に薬を飲ませてくれてらしい。それから、自分たちの力だけで生活し、冒険者となり、自分たちのような人間を減らそうということを目標に、傭兵集団黒豹を作った。そして孤児や生活が苦しい子どもを引き取り、育てているそう。ただ、自分たちがまともな生活をしてこなかった為、冒険者のような危険な仕事しか教えてあげれていないのが不満に思っていることのようだ。
「黒豹の皆さんって本当に優しいんですね」
改めて黒豹の3人の話を聞いて、優しさを実感していた。
「皆さんは自分の為じゃなく、周りの人のために力を使うことができる人です。すごいと思います!」
3人は少し照れていた。今まで自分たちのことを冒険者として見てくれている人はいたが、自分たちの作った傭兵団について深く知ろうとせず、傭兵というだけで危険だから、怖い人だというイメージを持たれることが多かった。しかしミヤはそういった物に偏見を持たず素直にすごいと言ってくれた。それが本当に嬉しかったようだ。
「俺らからするとミヤちゃんもすごいところばっかりだけどな。鑑定っていう特別な力があるのに、それに驕らず努力していた。それに最近まで魔法も使えなかったのに、腐らずに過ごした。そっちの方が尊敬するよ」
「そうですよ。それに最終的に新しい魔法でゴブリンジェネラルを倒したのもミヤさんですよ」
「うん、本当にすごいよ」
ミヤも照れてニヤニヤしてしまった。お互いが褒め合い、なんとも言えない空気となっていた。少し話した後、豹が冷静に今後の話をしようと提案した。
「さてミヤさん、すみませんが、1度王都には行く必要があると思います。国王との謁見もですが、本当に私たちとパーティーを組むのであれば冒険者ギルドにも行く必要があります。ですので、準備が出来次第向かいますか?」
「そうですね、ただ、この村にはまた戻ってきたいなと思ってます」
「じゃあ、一旦王都まで行って、もう1度この街へ戻ってくることにするか?1ヶ月もかかんねえんじゃねーの?むしろ国王が余計なこと言わなきゃ、数週間で戻れるんじゃねーか?」
「王都までの道は魔物が出る。でも見晴らしがいいから、そんなに危険もない。だから、1度王都に行って、帰ってくるでもいいと思う」
黒豹の3人の提案にミヤも同意した。
「わかりました。でも、1つだけ…おじいちゃんが許可してくれるかどうか…あと、1人で大丈夫かなと心配で」
ミヤはおじいちゃんが王都に行くことを許してくれるか。そしておじいちゃんが1人になってしまうことも心配していた。
「あとで話に行くか?」
「そうですね、パーティーも組ませてもらうことですし、改めてお話ししたいですね」
「うん、行こう」
黒豹の3人はおじいちゃんにきちんと話をしようと提案した。そしてきちんと許可をとってから出発しようと決めた。
「許可してくれなかったら、家出します」
ミヤは笑いながらそう言った。
「まあ、ちゃんと話したら大丈夫でしょう」
「そうそう、帰る家があるってのはいいもんだぞ?」
「うん、いつでも帰れるの、幸せ」
3人も笑いながら答えた。その後黒豹の3人の準備ができた後、ミヤの家へ向かった。ミヤの家に着くと、おじいちゃんが晩ご飯の準備をしていた。
「お、おかえり、ミヤ。それに今日もみんなも一緒か。最近仲良しじゃな」
おじいちゃんは嬉しそうに笑った。そして晩ご飯の準備を再開した。
「おじいちゃん、ちょっと話があるの」
ミヤが勇気を振り絞ってそう言った。するとおじいちゃんは晩ご飯の準備をしながら、
「どうした?」
とミヤの方を見ずに返事をした。
「改めてだけどやっぱり王都に行きたい。そして冒険者になりたいと思ってるんだ」
ミヤの言葉に少し手を止めるおじいちゃん。
「そうか」
と一言だけ言った。
「いいの?」
ミヤは少し寂しそうに言った。以前にも話はしていたが、今回は本当に決心し、王都に向かうことになる。王都に行った後1度帰って来るが、その後はおそらく王都で暮らすことになる。それでも大丈夫だろうかと心配していた。
「わしの心配をしているのなら大丈夫だぞ?村の人たちもいるし、八雲さんもちょくちょく遊びにきてくれているしな。毎日楽しいよ。前にも話したが、冒険者は危険がたくさんある。それを踏まえた上で決めたことなんだろう?」
「うん、全部ちゃんと考えて決めた」
「それならしっかり頑張っておいで」
ミヤはおじいちゃんの話を聞いている間徐々に涙が出てきた。寂しいのもあるが、おじいちゃんは自分のことを応援してくれるとわかって安堵したこともあったのだろう。
「ただなー、ミヤ、たまにでいいから帰ってきてくれ。寂しいものは寂しいからな」
おじいちゃんは少し恥ずかしそうに言った。ミヤはそれが嬉しくて、笑顔になり、
「うん、たくさん帰って来れるように頑張るね!」
と元気よく言った。その話がひと段落したタイミングで、虎が
「ミヤちゃんのじいさん、俺らからもお願いがあるんだ」
「どうした?」
おじいちゃんはスープを運びながら聞いた。
「俺たち、ミヤちゃんとパーティーを組みたいんだ。だめかな?」
おじいちゃんの表情が一気に強張った。
「なぜだ?」
かなりの威圧感で、なぜか冷や汗が止まらない黒豹の3人。しかし虎はきちんと回答する。
「この前、ゴブリンの洞窟でミヤちゃんの魔法を見て、これからもっとすごくなるって思った。俺たちのパーティーに火属性の適性がいないから、ミヤちゃんがいれば俺たち自身ももっと強くなれる気がしたんだ。後は、ミヤちゃんと一緒にいたら楽しいんだ。冒険だけじゃなく、なんでも言い合える関係なのが良いなって。だからパーティーを組みたい。ミヤちゃんが他のやつと組んでるとこを見たくない。そんな感じかな…」
虎は正直に話した。いつものヘラヘラしている虎が今回はかなり真剣に話をした。
「ミヤ、少しこの3人と話をしてもいいか?」
おじいちゃんは黒豹の3人と話したいとミヤに言った。ミヤは頷き、裏口から外へ出た。
「実は八雲さんが事前に話をしにきてくれていて、こうなるだろうなと思ってたんだ。だから、パーティーの件も構わんよ。ただ、ミヤは村から出たことがない。おそらく世間とは常識がずれている。そのあたりも3人で助けてもらえると助かる。頼めるか?」
「もちろんです」
黒豹の3人は力強く返事をした。
「ちなみにミヤからミヤ自身のことはどれくらい聞いた?」
黒豹の3人は鑑定のことをおじいちゃんが知っているのか不明だったので、豹がぼかして答えた。
「一通り聞きました。少し特殊な力があるようで…」
するとおじいちゃんが
「そう、あの力は特別な力なんだ…だからあまり他の人間に知られたくない。だから、あの力もできるだけバレないように協力してほしい」
おじいちゃんからの頼まれごとなので、すぐに了承した黒豹。しかし、国王も鑑定のことを知っていること、そして、自分たちの当初の任務についてもおじいちゃんに伝えた。
「やはりか。お前さんたちも急に来たからな。そんな事だと思っていたよ。でも、今はミヤを大切に思ってくれているようなので、安心できた」
おじいちゃんも何か知っているようだったが、豹は深くは突っ込まないようにした。
「もし国王がなんかしようとしたら、俺らがなんとかして連れ出してこの村まで戻ります。必ず」
虎の真剣な表情を見て安心したのかおじいちゃんは
「よし、ご飯にしようか。ミヤを呼んできてくれるか?」
と虎にお願いした。ミヤはなんの話をしていたのか気になっていたが、4人ともただ、男同士の話。とだけ答えた。そして、出発は明日と決まった。




