第2話 黒豹
翌日、ミヤは八雲の家を訪れた。
「八雲さん、おはようございます。」
反応がない。
「八雲さん、おはようございます。」
まだ反応がない。
「八雲さん、失礼します。」
ミヤは少し心配になり入り口を開けた。
すると中でゆっくりとお茶を飲んでいる八雲の姿があった。
「いるじゃん!」ミヤは思わずツッコンだ。
「えっとー、誰だ?」
「昨日助けてもらったミヤです!八雲さん、お話があってきました」
八雲は椅子を出し、お茶を入れてあげた。
「私、魔法を使えるようになりたいんです。どれか1つでもいいから、魔法を使いたいんです。だから…その…弟子にしてくれませんか?」
八雲はお茶を飲みながら答えた。
「なぜ魔法が使いたいんじゃ?」
ミヤは少し黙った後、答えた。
「昔から周りの人たちは普通に魔法を使っていました。魔法が生活に溶け込んでいるから、魔法を使えない人間にとっては辛い世界なんです。おじいちゃんも魔法が使えて、私の生活を支えてくれているんですけど、いつまでも頼りっぱなしは嫌なんです。だから、私自身も魔法が使えるようになりたいんです。」
八雲は少し考えた後、
「普通なら今使えていないものを使えるようになるということはない。産まれた時から皆使えるはずだからな。一生使えないかもしれないぞ?」
ミヤにとっては辛い言葉だったが、
「だから、八雲さんの弟子になりたいんです。」
「こんな普通のじいさんのか?」
「普通じゃありません!(鑑定はできない、一言で魔法使う、しかも助けてもらった時も、4属性だよ!?そんなの異常だって。普通にしてたら絶対無理だけど、普通じゃない八雲さんと一緒にいれば、もしかしたら…)」
「まあ、こんな普通なじいさんで良いのなら、好きにしたらいいよ。ただ、教えるとかは苦手だから、そこは許してくれな。」
「はい、ありがとうございます!よろしくお願いします!」
こうしてミヤは八雲の弟子となり、魔法を勉強することになった。
ミヤが弟子になる少し前…
「国王様より伝令だ。監視対象、鑑定の娘:ミヤ、複数人での監視をとのことだ。」
「監視?捕えろとかじゃねーのかよ?」
「ああ、監視だと。危害は加えるなということだ。」
「…」
「それなのにわざわざ俺たちに依頼?舐めてんのか?殺してやろーか。」
「国王様に対してその言い方は不敬罪、はたまた国家反逆罪になるぞ?」
「はっ国家反逆罪で死刑ってか?やれるもんならやってみろよ」
「…」
「落ち着け。報酬を受け取る以上、相手の要望にはしっかり答えるぞ。」
彼らは【黒豹】。それぞれに動物のコードネームがある、金さえもらえればなんでもする傭兵部隊。
この中から3名が監視の任務を受け、ミヤのいる村へ向かうのであった。
そしてミヤが弟子になったあとに戻る。
「八雲さん、今日の仕事は何するんですか?」
「今日は野菜の収穫と種まきだな」
「収穫してすぐ種を蒔くんですか?普通は少し時間をあけるんじゃないんですか?」
「育つから良いじゃろ」
「あ、そーですか…(適当だなぁ…)」
畑に着くとすでに村の人たちが作業をしていた。
「あ、八雲さんにミヤちゃん、いらっしゃい」
「佐野さん、おはようございます。お手伝いにきました」
「ありがとね!じゃあ、向こうに行って別の仕事しよーか」
「え、野菜の収穫と種まきはいいんですか?」
「八雲さんが来たからもー終わるよ!笑」
「いやいや、流石にこの量をすぐにってのは…」
ミヤが苦笑いしていると、
「収穫・収納」
「…!?」
「耕す」
「…は!?」
八雲が言葉を発しただけで、畑の野菜は全て収穫され、畑は耕された。そして、収穫した野菜が全て消えた。
ピロン鑑定結果:鑑定不能
「鑑定不能!?こんなの初めてなんだけど!?」
ミヤの鑑定能力は相手の情報だけでなく、魔法の種類なども鑑定することができる。ただし、レベル差がありすぎると、鑑定することはできない。つまり、ミヤと八雲にはそれほど大きな差があるということになる。
「八雲さん、今のどうやったか教えてください!なんなんですか!?」
「どうやったかと言われても、収穫したかったから収穫をして、量が多くて持てないなと思ったから、収納しただけだぞ?」
「だけってなんですか!?そんな魔法知りません!基本属性のどれに当てはまるんですか!?」
「どれと言われても、これは普通に収穫して収納しただけだぞ?ただ、それだけだ。」
「普通じゃないんですってばー」
ミヤは膝から崩れ落ちた。実はミヤは昨日の夜家に帰り、祖父と話した後、理解できないことが多すぎて、ほとんど寝ることができなかったのだ。結局朝まで理解できず、今日から解明してやる!と意気込んで来た矢先、この現状なのである。
「ダメだ、本当に理解できない。なんなんだ、この人」
ミヤが崩れ落ちていると、
「すみませーん、王都から来たものなんですけど、ここら辺に宿泊できる場所はありますか?」
少し離れた場所から声が聞こえて、人影が3つ少しずつ近づいてきた。
「王都から来たものなんですが、数日こちらに滞在させてもらえないかと思いまして、どなたかご相談させてもらえる方いらっしゃいませんか?」
「あ、構いませんよ。ただ、村なので、王都のような宿ではなく、ゲストハウスのような場所になるんですが…」
佐野が申し訳なさそうに答えた。
「いえいえ、そんな全然大丈夫です。突然押しかけたのに準備していただけるだけでありがたいです」
「あざーす」
「…ペコッ」
ミヤが不思議そうに鑑定しようとすると
「おじょーさん、何やってんのー?ここの人ー?」と1人の男が声をかけてきた。
「虎、やめないか、初対面で失礼だぞ。」
「別にいーじゃんかよ。かわいい子じゃん?」
「鷹、すまない、連れて行ってくれ」
「…コクッ」
「あ、こらてめ、鷹、離せよ!」
抱えられて宿に連れて行かれる男を見て、鑑定することを忘れて笑ってしまったミヤ。
「お嬢さん、失礼しました。無礼な男ですが、悪い奴ではないんです。許してやってください。」
「あ、全然大丈夫です。気にしてません!ここへは何しに来られたんですか?」
「冒険者の依頼として魔物の討伐と時間がある時に人探しを依頼されまして、3人でこちらに来ました」
「そーなんですね!冒険者さんでしたか」
「はい、少しの間お邪魔させてください」
「私も別の村の人間なので、何も問題ないと思います」
「ここの村の方ではなかったのですね、失礼しました。私は豹と言います」
「いえいえ、お気になさらず。私はミヤと言います。よろしくお願いします」
豹の顔から少し笑顔が消えた。
「ミヤさん、よろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ!」
その夜、黒豹の3人…
「相変わらずあなたの勘はすごいですね、虎。」
「あ?なんのことだよ?」
「…」
「あなたが声をかけた女性、覚えていますか?」
「あー、あのかわい子ちゃんね!それがどーした?」
「あの子が鑑定の娘でした。」
「…!?」
「は!?マジか!こんな早く見つかるとはなぁ!」
「あなたの問題行動はなぜいつもこーうまく行くんですかねぇ…怒りにくいから勘弁してほしいんですよね。」
「はっ、流石俺様だろ?」
「…コクッ」
「明日から分担して監視を行う。くれぐれもバレるなよ?」
「鑑定されたらどーするんだよ?」
「おそらく今の段階でバレていないということはレベル差があれば大丈夫なんだろう。」
「なるほど、りょーかい」
「…コクッ」
王都。
「国王様、3名が接触したようです。」
「早かったな。まあ、早いに越したことはない。」
「何かあればすぐに戻るよう伝えておきますが、その際は連れ帰りますか?」
「いや、無理矢理連れ去ることはしないほうがいいだろう。」
「かしこまりました」
「さあ、どの程度のレベルまで鑑定を使いこなしているか」
国王の顔に笑みはない。




