第1話 出会い
昔々。
人類は魔族と戦争を続けていた。
そこに1人の勇者が現れる。
その勇者の名はカイン。
剣と魔法を使いこなし、魔王と戦った。
彼は魔王との激闘の末、自らの命と引き換えに魔王を封印した。
人々は勇者を称えた。
王国はいっときの平和を手に入れた。
これは王国の人間なら誰でも知っているお話。
そしてーーー
ある森の入り口、1人の少女が走る。
「はぁはぁ…なんで…なんでこんなところにゴブリンがいるの」
「ギー、ギギー」
「もー無理、限界」
「ギャギャギャ」
ピロン
ステータス ゴブリン レベル1 弱点:火
「見えても使えないんだからどーしよーもないじゃん!なんで私は魔法が使えないの!」
「ギャギャギャ、ギャー!」
「ファイアーボール!ファイアーボール!なんで出ないの!」
ゴブリンが飛びかかる。
ピロン、魔法を感知。
ドン。突如岩の壁が現れて、ゴブリンが衝突した。
「ギャッ」
「え?」
「消えろ」
光が見えた途端、ゴブリンが一瞬で灰になった。
鑑定結果:火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、を検知。
「何が起こったの?」
岩の壁が崩れ、砂埃が舞う中、人影が現れた。
「お嬢さん、大丈夫か?」
「あ、はい、おかげで助かりました」
「そーかそーか、それならよかった。ではな」
「あの、お名前は?」
「…八雲。」
「八雲さん。助けてくれてありがとうございました。」
失礼だけど、鑑定させてもらおう…
ピロン鑑定結果… 八雲 以上
(え?なんで?もう一回)
ピロン鑑定結果… 八雲 以上
(…ん?もう一回)
ピロン鑑定結果… 八雲 以上
(なんで!?)
今まで自分が鑑定できなかった人間がいないので、かなり焦る。
「あの、私、ミヤって言います。この近くの村におじいちゃんと住んでるんですけど、よかったらお礼させてもらえませんか?」
「お礼なんて大丈夫だよ。この後仕事があるから」
鑑定結果が納得できなかったミヤはどうにかしようと考えた。
「じゃあ、そのお仕事について行かせてもらえませんか?お仕事のお手伝いならできるかもですし、興味があるんです。(仕事じゃなくて、あなたになんですけど)」
「まあ、構わんよ、じゃあ着いておいで」
八雲について行くと、そこはミヤが住んでいる村の隣の村だった。
「八雲さんはこの村に住んでるんですか?私はここの隣村です」
「そーじゃったか、お隣さんだったんだな」
さらに歩いていると
「八雲さーん、こっちですよぉ」
どこからか声が聞こえ、1人の村人が現れた。
「あれ、このお嬢さんはどなたでさか?」
「あ、私はミヤと言います。先ほど八雲さんに助けていただいて、お礼をしようと思ったんですが、断られてしまって、何かお手伝いできないかなと思いまして」
「なるほどね!八雲さん、また人助けしたんですね!この村でも色んな人を助けてくれてるんですよ。あ、ちなみに私は佐野って言います」
「よろしくお願いします。(鑑定がおかしくなってないか確かめさせてもらおう。鑑定)」
ピロン鑑定結果
佐野 レベル2 農民 称号:村長の息子
異常なし。いつも通りに見える鑑定結果。
(えー、なんで普通に見えるわけ?じゃあ、八雲さんのは何?)
「ところで八雲さん、今日は畑仕事の日だけど、もー終わったの?」
(畑仕事?って、畑仕事だよね?)
ミヤが疑問に思っていると
「あー、もー終わったよ。土耕そうと思って、さっとやっといたよ。だからこの後壁使っとこうと思って」
「もー終わったのね。相変わらず早いねぇ」
「あのー、八雲さんって普段どんな仕事してるんですか?」
「八雲さんは畑耕したり、魔物が来ないように壁を作ってくれたり、みんなの話聞いてくれたり、まあ、なんでも屋さんって感じだよ?」
「なんでも屋さん。魔法使ってやってるんですか?」
「そーだね、魔法いっぱい使ってくれるよ」
「魔法じゃないんだが…」
八雲がボソッと答える。
少し歩いた先に、かなり大きな壁がいくつもあった。壁には魔物を撃退する為の弓を打つ穴もあいていて、しっかりとした造りだった。
「すごい、これはかなり時間をかけて作ったんですね!」
ミヤが感心していると
「壁」
八雲がボソッと一言発すると、ドーンと同じ壁が登場。
「!?」
「壁」
ドーン
「!?」
「壁」
ドーン
「は!?」
ミヤはパニックになった。
それもそのはず。現代の魔法は魔法名、ミヤが唱えようとしていたファイアーボールのような言葉を最低限唱える必要がある。詠唱をすることでさらに威力を上げることができるが、詠唱をせずに発動することの方が多い。火、水、土、風、雷、光、闇の属性があり、属性は1人1つが常識。2つあると天才。3つあると賢者とまで呼ばれる。そんな中、八雲のように「壁」という一言だけということは絶対にない上、4属性使用するなど、前代未聞なのだ。
「八雲さん、今のなんですか!?どーゆーことですか!?」
「何とは?」
「魔法はそんな一言で発動できるものじゃないでしょー!?何したんですか!?」
「いや、これくらい普通だろ?」
「八雲さん、それ普通じゃありません!佐野さんもなんとか言ってくださいよぉ。」
「いやぁ、見慣れてしまったというか、僕らが産まれた時からこれだからさぁ。当たり前になっちゃってるんだよねぇ。笑」
(笑い事じゃないってばー)
壁の建設が終わりミヤは1度自分の村に帰ることにした。村の入り口まで歩いている間、村の人たちは
「ウォーターシャワー」「ウインドカッター」など、普通に魔法名を使って魔法を使用していた。
(村の人全員がヤバいのかと思ったけど、八雲さんだけなんだ)
入り口に着いたころ、ミヤは改めて八雲を鑑定した。
ピロン鑑定結果 八雲 以上
「八雲さん、本当に何者なんですか!?」
ミヤは我慢できずに聞いた。すると
「普通の村人だが?」
「普通じゃないです!!!」
一緒にいた佐野は大笑い。
「いつでも村に来てくださいね!待ってます」
「はい、ありがとうございます、多分毎日来ます。(八雲さんの鑑定結果が気になりすぎるから)」
「またな」
八雲はその一言だけで自分の家へと帰っていった。
ミヤはモヤモヤした気持ちだったが、とりあえず家に帰った。
「おじいちゃんただいまぁ」
「遅かったなぁ、何かあったか?」
おじいちゃんが心配そうに聞いてきたが、ミヤは
「今日変な人に会ったの。八雲って人なんだけどね…」
ミヤは今日あったことを祖父に話した。
祖父は最初驚いた顔をしていたが、
「そんな人がいるんだなぁ。不思議だな」
とだけ答えた。
ミヤたちの村がある王国の城…
兵士。
「報告します。発見しました。」
「鑑定持ちの娘か?」
「はい、間違いないかと」
「予定より早いな。」
「周りの人間は気づいていない模様でしたので、特に問題が発生しているなどはありません。」
「…」
「どのようになさいますか?」
「監視を続けろ」
「はっ。数名派遣しておきます。」
「危害は加えるな。ただし、能力については探りを入れれそうならば入れておけ。頼むぞ。」
「はっ」
バタン。兵士が出ていった後、1冊の本を開く。
「なぜ今なのだ。まだ知られてはならん」
彼の名はワーク5世。この王国の王だ。
閉じられたページにはこう書かれてあった。
【勇者カイン処刑記録】




