第17話 魔王の不安
魔王城
魔王はベルゼイヤから貰った紅茶を飲んでいた。ベルゼイヤはヴァゼルが少しでもリラックスできるようにと渡していたようだ。
(うまいな。流石父上のお気に入りの紅茶だ)
リラックスして飲んでいると、部下が走ってきた。
「魔王様!ゴブリンジェネラルが発生した模様です!上位種はボブゴブリンとゴブリンジェネラルの2体だと判明しました!」
ブーと紅茶を吹き出した魔王。
「それは本当か!?間違いないのか!?」
「はい、間違いないかと…」
頭を抱える魔王。しかし、ふと思い出す。
(よし、父上に任せよう。責任は取ってくれると言っていた。)
実は魔王はとても優秀だが、あまりにも自己評価が低いのだ。父が約600年魔王として君臨し、その息子として産まれ、ずっと父の横で父の活躍を見てきた。どうしてもその父と自分を比べてしまい、どんどん自己評価が低くなっていた。魔王はそんな父に育てられている為、本当はかなり強いわ、周りの魔族も認めている。それに気づいていないだけだった。
「父上のところに向かう。また何かあればそちらに来てくれ」
「かしこまりました」
ベルゼイヤの部屋に着いた。ノックをしようとすると、中から声が聞こえた。ベルゼイヤと妻たちが誰かと話しているようだった。少し待ち、会話が終わったのを確認してからノックをした。
「父上、失礼します」
「入っていいぞー」
中に入るとベルゼイヤと妻たちだけがいた。
(あれ、誰かの声が聞こえたと思ったが、気のせいか?)
「父上、上位種が確定しました。ボブゴブリンとゴブリンジェネラルの2体です」
「そーか、その2体だったか」
「あまり驚かれないのですね」
「お前から事前に可能性を聞いていたからな。やはりか。という感想だよ」
「それで、どーしたの?ヴァゼルちゃん」
「もしかして、あなたの出番が来たのでは?」
ミベルナは嬉しそうに言った。
「本当にヤバいのなら私が行くが、どーなんだ?」
「はい、行ってきてください。今すぐ」
本当に行ってきてくれと言われたので、思わず笑うベルゼイヤ。
「お前ならゴブリンジェネラルくらい、さっと倒せるだろう?」
ベルゼイヤが聞くと、
「ありえません。私なんて名ばかりの魔王。進化前の魔物ならまだしも、進化した上位種、ましてや2段階も進化した上位種なんて無理です。父上が行ってください」
2人の妻はあまりの潔さに、笑うしかなかった。
「ヴァゼル、お前は強いんだぞ?もっと自信を持て」
(本当にお前の実力なら、魔族でも敵うやつは私たち3人以外いないのに…)
それでもヴァゼルは首を縦には降らなかった。すると、大きなノックが鳴った。
「ベルゼイヤ様、魔王様、至急のご連絡が」
その言葉を聞き、ヴァゼルは絶望して座り込んだ。
(まさかもっと悪いことがあったんじゃないだろうな…)
「なんだ?入っていいぞ」
ベルゼイヤは部屋の中に入れた。
「し、失礼します。ゴブリンの洞窟で発生していた上位種ですが、」
「なんだ、ボブゴブリンまでゴブリンジェネラルに進化して、ゴブリンジェネラルが2体にでもなったか!?それともゴブリンジェネラルが更に進化したのか!?どっちだ!」
ヴァゼルは話を遮って聞いた。するとその返答は予想外の物だった。
「あ、いえ、ゴブリンの洞窟で発生していた魔物、上位種含め、全て討伐されました」
座り込んでいた魔王も自分の耳を疑った。
「なに?なんだと?」
「えっと、ゴブリンジェネラル、ボブゴブリン含むゴブリンたちが全て討伐されました」
「誰がそんな事をした!?どんなやつだ!?」
ヴァゼルは驚いて部下の胸ぐらを掴みながら聞いた。
「く、苦しいです、魔王様」
「ヴァゼル、落ち着け、話してやれ」
ベルゼイヤの言葉で冷静になったヴァゼルは手を離した。
「すまない、取り乱した。続けてくれ」
「はい、どうも人間の冒険者によって討伐された模様です。討伐に向かっていたのは4名で、3名は人間界で有名な傭兵兼冒険者で、残りの1名はよくわかりませんが、冒険者を目指してその3名と行動していた娘のようです。その娘は詳細が少なく不明ですが、3名の冒険者はかなりの腕なのが確認できています」
「なるほど、その3人が討伐したと。討伐されたのなら、」
ヴァゼルの話を遮って、部下が話した。
「いえ、とどめを刺したのは火魔法で、おそらくその3名の適性とは合わない為、娘がとどめをさしたのかと」
「なに!?そんなことあるのか!?」
「具体的にはわかっていませんが、それまでにダメージが蓄積していて、最後に弱点の火魔法でとどめをさせられたのかと。ボブゴブリンも火魔法でやられたのか、死体は千切れていました。かなりのダメージを与えて、最後に火魔法でとどめをさしたのだと思います」
「そーか、まあ討伐されたのなら良い。ゴブリンジェネラルともなると、ゴブリンだけでなく、周りの魔物まで指揮下に置く可能性もあったからな。最悪人間の国が滅ぶ可能性もあった。一安心だ。父上、失礼しました。問題は解決しました。また何かあった際はよろしくお願いします」
ヴァゼルは問題が解決し、ホッとした様子で自室に帰って行った。
「ねぇ、あなた、さっきの話だけど」
「ヴァール、あなたも気になりましたか?ボブゴブリンの死体が千切れていたって部分ですよね?」
「2人とも気づいたか。ボブゴブリンの死体が千切れていたのはおそらくゴブリンジェネラルが食べたからだろう。つまりゴブリンジェネラルは強化状態だった。ダメージは回復し、色んな能力が向上する。多少の魔法なら瞬時に治ってしまう」
「つまり、その回復力を上回る威力の魔法を4人の中の誰かが放ったって事ですよね」
「ええ、おそらく火魔法の適性がある娘さんでしょうね」
「これは面白い事になってきたな。3人の冒険者と娘の今後の成長が楽しみだな」
3人は黒豹とミヤの成長を楽しみにしているようだった。




