第15話 進化
魔王城
「父上、失礼します」
中に入るとベルゼイヤと2人の妻がいた。
「おう、どうしたヴァゼル。珍しく考え込んでるみたいじゃないか」
ヴァゼルは相談するべきか迷っていて、表情には出さないようにしていたはずが、さすが父親といったところだろうか、ベルゼイヤにはすぐに気づかれてしまった。すると心配していた妻たちがヴァゼルに駆け寄ってきて、抱きしめた。
「ちょっとお2人とも、落ち着いてください。大丈夫ですから」
恥ずかしくて堪らないヴァゼルは顔を真っ赤にして離れた。
「なによ、たまには甘えたってイイじゃない」
「そーよ、あなたはしっかり者だけど、いつまで経っても私たちの息子なんだから、なんでも言いなさい」
2人の妻はまだ迫ろうとしたが、
「こらこら2人とも、そろそろやめてあげなさい。それなら私を抱きしめてくれ」
ニヤニヤしながら言うベルゼイヤを見て、
「嫌です」
と2人揃って言った。ベルゼイヤはその言葉を聞いてシュンとした。
「冗談ですよ、ごめんなさい」
とヴァールは言った。ベルゼイヤは顔をあげたが
「私は少し本気です」
というミベルナの言葉でまたシュンとなった。それを見た2人の妻は笑った。ヴァゼルも顔を隠して笑いを堪えていた。半泣きの状態でベルゼイヤは
「で、どうしたんだ?何かあったか?」
と元の話に戻した。
「はい、どうもゴブリンの洞窟で上位種が発生したようなんです」
「ほぉ、ボブゴブリンか、久し振りに聞いたな」
ベルゼイヤは少し嬉しそうに話していた。
「まだ詳しくはわかっていませんが、さらに上位の可能性もあるようです」
するとベルゼイヤも驚いたようで、
「それこそ何年振りだ?記憶にないくらいだぞ?魔素が以上発生でもしているのか?場所は?」
「2つの村の間にある森だそうです」
ベルゼイヤは黙り込んだ。
「父上?」
ヴァゼルは不思議そうに声をかけた。ベルゼイヤは何事もなかったように
「あー、場所はわかった。もし何かあったときは私が行こう。だからお前は好きなようにやりなさい。処理するなり、放置するなり」
「父上が行ってくださるのですか?では、放置しておきます」
ヴァゼルは笑いながら答えた。あまりにも即答だったので、
「おい、少しは考えなさい。人任せにするな。俺は最終手段だ」
しかしその言葉に対して、
「あなた、息子に魔王業を任せっきりにしているのは誰ですか?」
「魔王城のことを息子に丸投げしているのは誰ですか?」
と2人の妻に詰め寄られた。
「そ、それはだな、お前たちとおりたいというかなんというか…」
「これくらい手伝ってあげますよね?」
「はい…」
ベルゼイヤも元魔王と言え、妻には逆らえないようだった。
「ヴァゼル、この人が後始末するから、好きなようにしなさい」
「たまには働かせないとダメね、任せなさい」
2人の妻からそう言われ、
「では、お願いします」
と満面の笑みで自室に戻って行った。
「2人とも、ひどくないか?」
寂しそうに言うベルゼイヤ。
「たまにはイイじゃないですか」
ヴァールは笑顔でそう言った。ベルゼイヤは嫌そうな顔をした。
「たまにはあなたのかっこいいところを私たちに見せてください」
ミベルナのその言葉を聞いたベルゼイヤは自分の耳を疑った。
「ミベルナ!?なんだって!?」
嬉しそうな顔でミベルナに詰め寄った。
「嫌いです」
と恥ずかしそうに言うミベルナ。それを見て満面の笑みで
「よし、本当にやばくなったら私が行こう!よーし!」
とやる気に満ち溢れるベルゼイヤ。その後、また3人で談話を始めた。
「まあ、あそこなら私の出る幕はないだろう」
「ですねぇ」
「かっこいいところはお預けですかね」
と、3人が言った。そしてミベルナの言葉でまた元気になったベルゼイヤだった。
ゴブリンの洞窟
ミヤが黒豹の3人に残り時間を確認した。
「後10分ほどですかね」
「うん、そのくらい」
「そーだな、よし、しんがりは俺な」
そう3人が話すと、ミヤが
「5分だけ私に時間をくれませんか?虎さんにしんがりをさせなくていいように頑張ってみます」
3人は少し考えた後、
「虎、あなたの意見を聞きたいです。しんがりをお願いするなら本当にあなたしかいません」
「うん、虎が決めていい」
豹と鷹が確認してすると、
「いいんじゃね?やってみたいことがあんなら、やってみたらいいよ」
と即答した。それを聞いた豹はやっぱりな。という顔で少し笑った。
「わかりました。ではミヤさん、5分だけですよ。5分経ったら私たちと来てもらいますからね?」
「はい、わかりました。約束します」
そういうとミヤはまたブツブツと考え始めた。
「後少しでイメージが固まりそう。範囲を狭く…威力はキープ…でもさらに貫通力をあげる…狙うなら頭か心臓…1撃で致命傷を…おじいちゃんのやり方と八雲さんのやり方を思い出して…」
そこから3分ほど経った。その間に黒豹の3人は今後の流れを確認していた。
「虎にしんがりを任せるとして5分の間にどうするかですね。とりあえずミヤさんのおじいさんのところに行きましょうか」
「そーだな、ミヤちゃんだけでも避難させて、村の人にも避難してもらおう」
「うん、で、戻ろう。虎1人は、だめ」
「バーカ、戻ってくんな!助けを呼びに行って冒険者連れてこい!それまでは逃げたりしながらどうにかする!」
「そんなことできるんですか?」
豹が聞くと、
「やるしかねーだろ!」
やせ我慢なのはわかっていたが、豹も鷹も笑っていた。
「そーですね、虎ならなんとかしてくれますよね」
「うん、任せる」
3人が最後の別れのような会話をしているとミヤが顔をあげた。
「よし、やってみよう!」
と決心したように言った。
「ミヤさん、何か手伝いましょうか?」
豹が確認すると、
「んー、ちょっと下がっててください。どんな威力になるかわからないので」
とミヤが答えた。
「なんかわかんないけど、下がっとくか」
黒豹の3人は少し距離をとった。するとミヤはゴブリンジェネラルの前へ行った。
「ふぅ…この魔法をあなたが耐えちゃったら私たちの負けで、虎さんがしんがりすることになっちゃうから、本気で考えました。頑張らせてもらいますね!」
その言葉を聞いたゴブリンジェネラルは
「ナラ、カチダ、オマエノマホウハ、キカナイ」
と余裕を見せていた。するとミヤがこう唱えた。
「ファイヤーランス」




