第11話 開戦
ミヤの準備ができ、ついに出発の時が来た。
「行きましょうか、ミヤさん」
「ふぅ、行きましょう」
ミヤは少し緊張している様子だった。
「ミヤ、緊張せずともこの3人なら大丈夫だ。いつも通りとはいかないだろうが、特訓のようにやってみなさい。ミヤなら大丈夫じゃよ」
八雲の言葉に少し安心したのか、ミヤもいい表情になった。
「ミヤちゃん、俺たちのことはまだ信用できないかもだけど、少しでに力になれるように頑張るからな!」
黒豹の3人もやる気満々だった。
「行きましょう!」
ミヤと黒豹は森へ向かった。いつも様々な魔物がいるはずだが、今回は魔物の姿が見えなかった。
「少し変ですね。魔物の数が少ないですね…」
「これは厄介な奴がいるかもしれねーな」
黒豹も異変を察知していた。
「ミヤちゃん、少し変な感じだ。どうする?やめておくか?」
ミヤは少し考えた後答えた。
「皆さんは多少強い魔物が出てきても大丈夫ですよね?ゴブリンだけなら私が、他の魔物がいれば皆さんが。というのでどうでしょう?」
「いいんじゃないですかね?あまりにもおかしな魔物が出てきた場合は即撤退しましょう」
全員納得する形で今後の行動が決まった。
4人は前回見つけたゴブリンの巣まで進んだ。すると前回よりも見張りが増えていた。
「ミヤさん、大丈夫ですか?」
豹が確認すると、ミヤは目を閉じて深呼吸をした。
「少し待ってください。ふぅ…行きましょう」
まだ少し手が震えているように見えたが、ミヤの目に迷いはなかった…
「ミヤちゃん、先手必勝で行こうか!」
虎が笑顔で言った。ミヤも少しリラックスでき、
「ぶちかまします!」
と少し楽しそうに言った。
「ふぅ…ファイヤーボール!」
そう唱えるといつもより少し大きいファイヤーボールが飛んでいった。
ドカーン!という音がなり、見張りのゴブリンはほとんど消えた。
「ミヤさん、この威力はなんですか?」
豹の顔は引き攣っていた。
「ミヤちゃん、先手必勝とは言ったけど、これだと一撃必殺だぜ?」
流石の虎も苦笑いだった。
「いやー、ちょっと気合い入れすぎてしまいました」
ミヤはすっかり震えも止まり、笑顔で答えた。
「すげーやこりゃ」
虎が感心していると
「あ、でも八雲さんに1割までしか使わないようにって制限をつけられているんです。ただ、さっきは気合が入りすぎて2割くらいまで出してしまいましたけど。えへへ」
この一言で黒豹の3人は背筋が凍った。
(今ので2割?全力で魔法使ったら、あたり一面灰になるんじゃねーか?)
(ミヤさんを敵に回すのだけは避けないといけませんね)
(ミヤ、すごい。全力なら俺でも防げないかも…)
それぞれ思うところはあったが、3人共通していたのは、【ミヤも普通の女の子じゃなくなった】ということだった。
外の敵は全滅。後は洞窟の中の魔物だけとなった。
「さて、どうしましょうか…」
「ミヤちゃんの余力次第じゃないか?」
「私は全然大丈夫です」
それぞれの状態を確認し、中の敵も倒すことにした。
「よし、じゃあ、いくぞ」
中へ進んでいくと、予想より遥かに多いゴブリンがいた。さらに予想外の出来事が起こった。
「あれは、ボブゴブリン?」
「おーおー、進化してるじゃねーか」
「あいつ、いや、力強い」
黒豹の3人が少し警戒していた。
「ボブゴブリンってなんでしたっけ?」
ミヤが質問すると、豹が答えた。
「ボブゴブリンはゴブリンが進化した個体で、通常より大きくなり、力も増します。そして厄介なのがゴブリンを統率するところなんです。今回魔物が少なかったのは、統率されたゴブリンが食料としていたのかもしれませんね」
「ゴブリンにトラウマがある私が言うのも変ですけど、ゴブリンって結構弱いですよね?そんなゴブリンが他の魔物を食料にすることが可能なんですか?」
「ミヤさん、そこがボブゴブリンの厄介なところでもあるんです。統率し、ゴブリンをまとめ上げ、普通ではできないことをやってしまうんです。今回の魔物の件もそうですし、他にも計画的に人間を襲ったりもします」
「なるほど、普段はバラバラなゴブリンたちがまとまって計画的に動くと言うことですね。数が多い分統率されると脅威ですね」
改めてボブゴブリンについて確認を行い、作戦会議を始めた。
「とりあえず周りのゴブリンはいなくなったから、入り口近くまで接近し、中の様子を伺いましょう。中に侵入できそうな状況なら、侵入、不可能なら入り口を塞ぐ努力をし、撤退しましょう」
「よし、それでいこう。もし先にバレた場合はしんがりは俺がする」
「虎さんがしんがりしなくて済むように頑張りますよ。私ももう大丈夫です」
皆やる気満々で行動を開始した。
入り口付近に接近し、豹が中を確認する。
「付近にゴブリンはいませんね。少し奥に溜まっているようですね。さて、進入しましょうかね」
「鷹、ミヤちゃんの横にいろよ、しっかり守れよ」
「コク」
「皆さん、まずは自分のことを考えてください。もちろん守って欲しい気持ちはありますけど、皆さん自身を優先してください」
ミヤがそう言うと、虎がミヤの頭をゴンッとした。
「痛い」
ミヤが驚いた顔をしていると
「ミヤちゃん、そう言ってくれることは嬉しいよ。ただ、ミヤちゃんはまだ子どもだ。どんだけ強くてもな。大人にしっかり守られてな。その為に俺たちがいるんだからな」
「そーですよ、私たちも弱くはありませんからね。まあ、今後ミヤさんが成長して、かなり強くなったら助けてくださいね」
豹が笑いながらそう言ったタイミングで奥の方からパキッと物音がした。
「来ましたね。さあ、行きましょう」
「おう!」
「行きます、ファイヤーボール!」
ミヤのファイヤーボールが開戦の合図となった。
ミヤたちが洞窟に入った頃、洞窟のさらに奥深く
「ナニカ、キタ。オマエタチ、ミテコイ」
大きな影がゴブリンたちに指示を出していた。




