第10話 それぞれの準備
ミヤの家でのご飯の後、黒豹の3人と八雲は帰宅した。
「八雲さん、今日はすみませんでした」
豹が改めて八雲に謝罪した。
「さっきも言ったが、わしの読みも甘かった。だからお互い様じゃ。でだ、またゴブリンのところに行く話じゃが、お主たちに任せてもいいか?」
八雲は少し申し訳なさそうに伝えた。
「それは構いませんけど、いいんですか?私たちだけでは不安なのではないでしょうか?」
豹も不安そうに答えた。
「わしが行ってしまうとどうしてもすぐに助けてしまいそうなんじゃ。それではミヤの為にならないじゃろう?」
「わかりました。責任を持って頑張ります」
「次こそはミヤちゃんを守ってみせるよ」
「うん」
黒豹の3人も改めて覚悟を決めた。
「では、また明日な。気をつけて帰りなさい」
「はい、また明日からもお願いします」
黒豹の3人は八雲の家を後にした。
黒豹の宿にて
「今回もうまくいっちまったな」
「本当になぜか毎回うまくいくのかわかりませんね」
「でも、ちょっと…」
鷹が悲しそうに言った…
「そーだなー、今回はちょっと不本意だよなー」
「そーですね、かなり不本意な形になってしまいましたね」
王都に連れて行くという目的には近づいたが、ミヤのトラウマを知ってしまい、少し辛い気持ちになっていた。
「ただ、明日改めてゴブリンのところに向かうので、気持ちを切り替えて準備しておきましょう」
「だな…明日は絶対にうまくいくようにするぞ」
「コク」
そう誓って眠りにつく黒豹の3人だった…
王都
「国王様、黒豹より報告です」
「わかった…確認しよう」
黒豹からの報告を読む国王…
「1ヶ月か…。思ったよりも早そうだな。1ヶ月ほどで鑑定の娘が王都に来る予定だ。出迎えの準備をしておけ」
部下にそう伝える国王。
「さすが黒豹ですね、仕事が早い。至急準備しておきます」
部下が退出した後、
(1ヶ月の間に特訓をし、祖父の許可を得られれば、か。さてわしも準備を進める必要がありそうだな)
国王は王城の地下にある宝物庫に向かった。そして宝物庫で何かを探している。
(確かこのあたりにあったはず…)
奥の方にある宝箱を見つけた国王。開けてみると1つの腕輪が入っていた。
「これで多少は鑑定の対策にはればいいが」
そう言いながらその腕輪を持ち出した。
ミヤの家
「おじいちゃん、改めてだけど、いろいろわがまま言ってごめんね」
ミヤが申し訳なさそうに言った。
「実はな、いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていたんだ」
おじいちゃんが答えた。
「え、そうなの?」
ミヤが不思議そうに聞いた。
「ああ、ミヤは昔から自分のためではなく、人の為に頑張る子だった。魔法を覚えたいと言った時も、わしの為と言っていただろ?ミヤは覚えていないかもしれないが、小さい時、わしが友人と喧嘩をしている時、おじいちゃんをいじめる人は嫌い。とその友人に言ってくれて助けてくれたんじゃ」
おじいちゃんはとても嬉しそうに話をした。
「ぜーんぜん覚えてないや。でもやっぱり人の為になることをして、喜んでもらえるのが嬉しいんだよね。だから、おじいちゃんの為とか、人の為にって頑張ろうってなるの。だから頑張るね」
ミヤは少し恥ずかしそうに話した。
「だが、まずはミヤの夢を叶えるためにきっちり特訓しなさい。自分の身が守れるようになって初めて人を守ることができるからな?まずは己自身。それから周りの人たちだからな」
おじいちゃんは真剣な表情で話した。
「うん、まずはトラウマを克服できるように頑張るね」
ミヤも改めて覚悟を決めたようだった。
翌朝
黒豹の3人は八雲の家の前にいた。
「おはようございます」
今日は豹が八雲の家の扉を叩いた。以前、虎に任せた時のことを豹はまだ気にしている様子だった。扉が空き、八雲が迎え入れてくれた。
「おはよう。紅茶でも飲むか?」
「いただいてもいいですか?」
黒豹の3人は椅子に座った。
「ミヤちゃんはまだ来てないのか?」
虎が確認すると
「裏におるぞ」
八雲が裏口の方を指差した。黒豹の3人は裏口へ歩いていく。よく聞くとカコーンという音がなっていた。黒豹の3人が覗くとそこにはミヤがいた。
「あ、皆さんおはようございます。少し待ってくださいね」
ミヤは裏で薪割りをしていた。
(薪割りしてるー、たくましー)
心の中でそうつぶやつ黒豹の3人だった。その後八雲が紅茶を入れてくれたので、席に座って一息入れた。
「美味しいですね、この紅茶どこの物ですか?」
「ミヤのじいさんが育てているんだ。うまいよな」
いつも飲んでいる紅茶はミヤのおじいちゃんが作った物らしい。みんなに評判の紅茶ということだ。
「ふぅー、おーわり。八雲さん、ありがとうございましたー」
満足したような顔をして裏口から入ってきたミヤ。
「ミヤちゃん、だいぶやり慣れてるみたいだけど、毎日してるの?」
虎が興味本位で聞いてみた。
「はい、毎日やってます。おじいちゃんが基礎的な体づくりなら薪割りが1番だって教えてくれて。魔法も使えなかったので、ちょうど良かったんですよ」
ミヤは平然と話していたが、八雲から話を聞いていた黒豹の3人は
(やっちまったー)
と心の中で傷を掘り返したのでは?と心配になっていた。
しかしミヤはケロッとしていて、
「魔法を使えなかった間の薪割りが今では良かったなって思うんですよね。今では毎日300本しても疲れなくなってきたので、もう少し増やそうかなと思ってるんですよ!」
黒豹の3人は耳を疑った。
(300本って言ったか?間違いないよな?)
「ミヤちゃん、300本って言った?」
虎が思わず聞いた。
「はい、300本ですよ?」
ミヤはそれがどうしたんですか?という感じで答えた。
「えっと、それを6時間くらいかけてやるの?今日何時からやってたの?」
「え、何言ってるんですか?2時間で終わりますよ?」
ミヤが答えると黒豹の3人は
(この子、ゴブリンにビビってたよな?人間やめてね?)
と心の中で思った。
「皆さんもやりますか?すっきりしますし、いい特訓になりますよ?」
「いや、やめておきます、ははは」
豹が間髪入れずに答えた。
「じゃあ、私も準備しますね。少し待っててください」
というと、ミヤはシャワーを浴びにいった。
「おい、あの子、人間やめてねーか?ありえるか?」
虎が思わず2人に確認した。
「はい、ちょっとおかしいですよね」
黒豹たちが話していると、八雲が
「ミヤの爺さんは調子が良ければ30分、普通にやっても1時間くらいだぞ?」
と話した。
「その爺さんにしてミヤちゃんありか…」
もう突っ込む余裕もなかった。
「何を驚いておる、普通じゃろ?」
「普通じゃない!」
黒豹の3人は我慢できず突っ込んだ。




