もんもんぐんぐん
「ねえ、おかしいと思わない?」
「何が?」
「この、もんもんぐんぐん? もう何十年と使っているのよね?」
「そうだぞ、長年継ぎ足し継ぎ足し。受け継がれているんだ」
「それよ」
「それ?」
「そんなに長年継ぎ足して使っているなら、それはもう、元のもんもんぐんぐんとは別物なんじゃないの?」
「ああ、何だそんなことか」
「これは、もんもんぐんぐんなんだから、継ぎ足しても、もんもんぐんぐんに決まっているじゃないか」
「で、でも! 一番最初のもんもんぐんぐんはもう残ってないんじゃない? それなのに、これがもんもんぐんぐんって呼ばれるのは不自然よ」
「自然は常に入れ替わってるじゃないか。入れ替わらないで常に在り続ける方が不自然だよ」
「そうじゃなくて……」
「仮に、仮にだよ? 百歩譲って、これがもんもんぐんぐんでは無かったとしよう」
「うん」
「ならば、これは何なんだ?」
「何って言われても……やっぱり、もんもんぐんぐん?」
「長年継ぎ足ししてるんだから、もんもんぐんぐんはもう残ってないはずだよ。それなのにもんもんぐんぐんと言うのはおかしいじゃないか」
「そんなことない『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず』それでも、河の名前が変わったりしないもの」
「ということは、この器がもんもんぐんぐんだって言うのかい?」
「それは……じゃあ! 細胞は日々生まれ変わるけど、同じ人として認識されるわよね!」
「ということは、もんもんぐんぐんには自己認識と連続した記憶があると?」
「ううん」
「もんもんぐんぐんは、秘伝のタレみたいなものだとしたら?」
「秘伝のタレ?」
「タレっていうのは、別の器でもいいし、特定の液体でなくてもいいわよね?」
「まあ、レシピがあれば再現可能という意味では、そうかもな。でもそれだと個が失われるぞ」
「継ぎ足すことって、歴史ってことよ」
「ふむ?」
「歴史はそれ自体に帰属するもの。だからそれを規定できるの」
「なるほど、そうするとこれは——」
「もんもんぐんぐんだね」「もんもんぐんぐんだわ」




