もんもんぐんぐん
『もんもんぐんぐん』
もんもんぐんぐんは仲良く歩いた。町中で大人気となり、写真撮影のため県外から訪問する人も、珍しくなくなっており、様々なトラブルを引き起こす原因ともなっていた。
◇
「これだから、よそ者は困る」
古くからお茶屋を営む、曲彦が苦々しく呟いた。
マナーの悪い訪問者たちによって、ポイ捨てされたゴミなどを愛用の竹箒で集めていた。
「曲彦さん、おはようございます」
「ああ、おはよう」
挨拶したのは、
◇
隣の家に住む、小鐵だ。今日も猫を抱えて、時折顔を埋めては、スーハーと深呼吸している。
近所の子どもたちからは、猫吸いの人と呼ばれているが、猫吸い伝道師を自称している小鐵としてはまんざらではないようだった。
「最近、知らない人たちが増えて、猫ちゃんも怖がってます」
「困ったものだ。それで町に金を落とすならまだしも、奴らが落とすのはゴミばかり、経済効果など——」
話が加速し始める気配を察した小鐵は、そそくさとその場を後にしていた。
そんな様子を、遠くからもんもんぐんぐんが、じっと見つめていた。
◇
「もんもんぐんぐんだ! かわいい!」
あっという間に、黒山の人だかりが出来た。パシャパシャと焚かれるフラッシュ。
そこに町の住人はひとりもいない。
もんもんぐんぐんは、悲しくなり、泣き出した。大粒の涙がボロボロと溢れた。
群衆はより興奮の声を上げ、そのチャンスを逃してはならぬと、輪を縮めていった。
その時——
◇
大粒の涙が集まり、巨大な涙滴となって、群衆を飲み込み始めた。
逃げ惑う人々、だが涙滴の動きは素早く、誰も逃げられない。ひとり、またひとりと餌食になっていく。
「やはり、こうなったか」
離れた位置で様子を見ていたピエロメイクをした男は、タバコを踏み潰すと、車のトランクからRPG-26を取り出した。
「急ぎだったんで、こんなもんしか用意できなかったが……効いてくれよ」
男は涙滴に向かい、RPG-26を発射した。
◇
だが、ここで男も想定していなかった自体が起こる。
もんもんぐんぐんが涙滴を庇って前に飛び出したのだ。
ズガーーーーーーーーーン!
直撃を受けたもんもんぐんぐんが、粉微塵となって舞い散った。
それは天空へと昇っていき、やがて星々となった。
「それが、あの猫吸い座の由来である」
そう語る小鐵の目はマジだった。




