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19/30

もんもんぐんぐん

 夕方のスーパーに入ると、ふっと肩の力が抜ける。

 仕事が終わって、まだ家にも帰っていないのに、ここだけ少し早く“オフ”が始まっている。


 その空気の中を歩きながら、私は少しだけもんもんしている。

 ——今日はちゃんと作るつもりだったのに。

 ——冷蔵庫の野菜、まだ残ってるんだけど。

 ——でも、もう包丁を握る気力がない。

 そんな小さな後ろめたさが、胸の奥でゆっくり渦を巻く。


 惣菜コーナーに近づくと、店員がカチッとハンドラベラーを鳴らす。

 半額シールが貼られた瞬間、惣菜たちは新たな魅力を放ち始める。

 さっきまで「ちょっと高いな」と思っていた唐揚げが、急に運命の相手みたいな顔をしてくるのだ。


 ぐんぐんと勝手に手が伸びる。

 理性より先に、身体が「これでいい」と判断してしまう。

 もんもんしながら、ぐんぐん進む。

 その矛盾が、なんだか可笑しい。


 カゴに半額の唐揚げとポテトサラダを入れた瞬間、胸の重さが少しだけ軽くなる。

「まあ、今日はこれでいいか」

 その妥協は敗北ではなく、むしろ小さな救済だ。


 レジを通り、袋を提げて外に出てみると、日は落ちてすっかり暗くなっている。

 少しだけひんやりした風を頬に感じながら帰宅する。

 さっきまでのもんもんは、袋の中の惣菜と一緒に少し落ち着いていた。


 家に帰って、レンジの前でぼんやり待っていると、もんもんはまた別の形で顔を出す。

 ——温めたら、皿に盛りつけようかな。

 ——味噌汁くらいなら作れたかもしれない。

 ——明日はちゃんとしよう。

 そんな小さなもんもんは、立ちのぼる香りとともに、ぐんぐんと食欲に傾いていく。

 

 いただきます。

 

 ささやかな宴が終わると、今日もまた執筆という新たなもんもんが始まるのだ。

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― 新着の感想 ―
夕食でもんもん……なんだか体重がぐんぐんしそうですね〜。 (´ε`) 執筆はもんもんだったのか⁉️ (´⊙ω⊙`)! それなら、どうして私のストックはぐんぐん増えないの? 。:゜(;´∩`;)゜:…
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