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凍土のインプロヴィゼーション、あるいはゴミ溜めの聖母が囁く「接続」の真理

「……あは。……ショーン。……また、……設計図に、……溺れてる」


メグが、フェンダー・ローズの鍵盤から視線を上げ、静かに僕を見た。


ボストンの冬が、アパートの窓ガラスを白く曇らせる。深夜の練習室。S・ビッグバンドの共有スペースとして使っているこの部屋は、今夜も楽器のケースとゴミの山で埋め尽くされていた。


「溺れていない。設計図と向き合っている」


「同じことですよ」


彼女は、ピアノの鍵盤に指をそっと置いた。音を出さない。ただ触れているだけだ。


「……接続って、どういうことだと思う?」


「突然何だ」


「ずっと考えてました。ショーンのアレンジ、すごく正確で、すごく綺麗。でも、あたし、弾くたびに少しだけ外れちゃう。なぜかと思ってたら——」


「外れるな。それが練習だ」


「ちがうんです。外れてるんじゃなくて、キミの音が——呼んでるんです。設計図の外側で。だから、あたしはそっちに行っちゃう」


僕は、ペンを置いた。


「……呼んでいる?」


「うん。キミが意識してない音が、楽譜の隙間にある。それが、あたしには聴こえる。その音の方が、キミの本音だと思って」


「——僕に本音の音があると思うか」


「あります。ただ、キミはそれを設計図で塞いでしまうから、外には出てこないだけで」


外では、ボストンの雪が音もなく積もっていく。


「……接続とは」と僕は言った。「お前が言う意味では、何だ」


メグは少し間を置いてから答えた。


「キミが意識して出す音じゃなくて、キミが気づかずに出してしまう音——それを、あたしが受け取ること。そして、あたしが返すこと。それが接続だと思う」


「……受け取る?」


「聴こえたら、応える。それだけですよ。難しいことじゃない」


彼女が、初めて一音だけ鍵盤を叩いた。


Eの音。明るくも暗くもない、どこにでも行ける音だった。


「——これは何の音だ」


「キミへの質問です。返してください」


僕は、ギターを手に取った。


Eに応える音を——設計図なしで、考えずに——弾いた。


「……あは」とメグが言った。「ちゃんと聴こえました。それが、キミの本音です」


凍てつくボストンの夜に、二つの音が溶けていった。

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