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9話

ーー17:50

 ものすごい速さでウイスタンの身体に風が当たってくる。

 暗闇の中に、黄色の点々とした光が、反射して車へ移る。

 辺りにはネオンの看板。道に立っている女性たち。タバコの吸い殻などがあたりいっぱいに捨ててある。


「イケメンボーイ私とどう~?」

「今急いでるんでね。今度な」

 ウイスタンはそういうと女性を追い払い、急いでバーの中へと走っていく。

 階段を下りる音が反響してゴワゴワと鳴る。


 部屋の中の空気がなくなりでもしたように、急いで扉を開く。

 鈴の音が来客を知らせてくれる。


「いらっしゃい...」

「はぁ...はぁ...」


 扉を開けると奥の席にボスが座っているのが一目でわかった。

 ウイスタンは急ぎ足でボスの元へ歩いていく。


「ボス...」


「お前に言われた通りトカイは美味いな」

 ボスはゆっくりとグラスを回す。

 中の氷がぶつかり合い、カラカラと音が鳴る。


「本当に薬物を吸ったような感覚だよ」

 ボスは深くため息をつく。

 室内は時計の音が刻み刻みに鳴り、冷たい夜の空気が漂う。


「あいつらも今は亡き妻の影響でトカイが好きだったらしいしな」

 ウイスタンは唾を飲み込む。


「あいつらが誰か分からないか...?」

 ボスは目を細めて言った。


「5人組のことだよ」

「...」


「5人組と僕は言ったぞ」


「...」

 ボスの返事に黙り込んでしまう。


「現場で4人組だったのに気づいてれば、こんな状況はひどくならなかったはずだ」

 ボスの声はどこか冷たく、怒りがこもっていた。

 ガラスのコップをカラカラと回しながら言う。


「ベッチを殺せなかったのも事実だ。実質、お前らは今日2度もミスをしている。重大なミスを2度もした。言い訳は不要だからな」


「...」

 ウイスタンは険しい表情でボスを見る。


「ベッチを殺せなかったのはローレンス・アドナス・ケニーに責任があるが...」

 ボスはウイスタンを睨みつけ、言い放った。


「人数を勘違いしたのは、お前だよな。ウイスタン」

「...カート」

「言い訳は不要だと言ったはずだ。カートも同じだ。だが、それ以上にリーダーであるお前がミスするとはどういう訳だ?」

 

 ウイスタンは何も言えず、下を向いていた。

 ボスは続ける。


「こんなミスをするリーダーは必要ないんだがな」



ーー19:10 

 ウイスタンの目からは光が消えていた。

 魂が消えたように、肩からは力が抜けていた。


(なんでこんな事してるんだ...?)

 ウイスタンはケニーの死体を見つめながらそう思う。

 試合のハイライトのように、ボスの言葉が頭の中をよぎる。


「もうお前には期待しないでおくよ」

 ボスは冷たい目で言い放った。

 その言葉は深く、ウイスタンの心に突き刺さる。




(仲間はほぼ死んで...裏切り者を殺すためにどちらかを選ぶんだ...)


 ボスの声がする。

「お前に今やるべきことはわかるよな」



(...必要ないって言われてるのになんでこんな事してるんだ?)



「仲間を殺せ」




 アドナスは眉をひそめながらウイスタンを見る。

 どこか心配してそうだ。


(資格も無いって言われて...)

 ウイスタンは拳を握る。

 手には手汗がものすごい量ついていて、地面に零れ落ちる。



「ちょっと...外す...」

 ウイスタンは体全身を震わせてトイレのドアへゆっくりと歩いて行った。


「え...おい?!」

 アドナスが手を出して止めようとする。

「待てよ...」


 ドアがゆっくり重々しく閉じていく。

 ウイスタンの姿は暗い廊下へと消えていった。


「ちくしょうあいつ...」

 アドナスは唇を噛み締める。

 そして、地面に座っている二人を見ながらしゃべり始めた。

二人は眉をひそめ、不思議そうな顔をしてアドナスを見る。


「まぁ良い。聞け二人。悪いが今から手足を縛らせてもらう。」

 

 カートが聞く。

「な...なんで?」

「何かあったら怖いんでな」

 

 アドナスは即答した。

「倉庫室にロープあるよな」


 そういうとズタズタと足音を立ててアドナスは奥の部屋へと歩いていく。

 ビリーは汗をかき始める。

 カートはアドナスを睨みつける。


 戻ってきたアドナスの手には茶色で血が付いたロープがある。

 アドナスは二人に近づいていく。


「まずビリーからな...」

 アドナスはビリーに近づいていく。


「あ...」

 ビリーは何とも言えない表情でアドナスも見つめる。

 アドナスがビリーを怪しんでいるのを分かっているからだろう。


 カートは倉庫の奥の方を見ていた。

 ビリーが縄で縛られている間、常に奥の段ボール箱を。

 段ボール箱からはゴソゴソと動いているかのような音がする。


「よし...締めた」

 ビリーは胴体をグルグル巻きにされ、じっとアドナスを見ている。


「次はお前だカート」

「ああ」

 カートは何も抵抗する気はなく、返事をする。


「どうぞ速く巻いてくれ。」

 アドナスは眉をひそめながらカートの前でひざまづいた。


 



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