表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

4話

ーー8:23


「...8時23分。これが最後の時間だウェイナ」

 男は靴ひもをじっくりと結ぶ。

 淡々と。


「...えぇ...ボス...様...」

 女は暗い顔をして男を見つめる。

 玄関の端っこには重そうなバッグがある。


 玄関は全部白色で、クローゼット以外ほぼ何もない。


「よし...」

 男は立つと同時にバッグを持ち上げた。


「じゃあな」

「えぇ...」


 男はドアを重く悲しそうに開ける。

 女はただ、男を見つめていた。


 ドアが重々しく閉じた。


 男は深くため息をついて家の敷地を出た。


「はぁ...」





「死ね!クソメス豚野郎!お前との生活は楽しくなかったよ!お前の小さくて入んないんだよ!死ね!浮気野郎!クソビッチが!死ねぇぇえ!ボスなんてお前が言うな!デブビッチが!」




 男は中指を出しながら勢いよく叫んだ。

 声は森の奥まで響く。


「クソが!」

 ボスはポケットから車のカギを出した。


「クソ!クソ!クソが!」

 ボスはぶつぶつ言いながら荷物をのせていった。

 そしてラジオボタンを荒々しくおした。

[Good morning everyone! It's time for "American BIG"!]


 ノイズの音が激しい。

[Let's get going~!]

「浮気野郎...どんだけ気を使ったか知らないのか...!」


 カギを差し込んだ。

 後ろの方でエンジンの音がブルンブルンと鳴る。


[with this song right from the morning!]

 ボスは思いっきりアクセルを踏んだ。

 車は勢いよく走り始めた。




[Nobody going to take my car I’m going to race it to the ground♪]

 車は人ごみの多い街中を颯爽と走っていく。

 風がびゅうびゅうとボスの体へ当たっていく。


「そうだ...あいつらに電話...」

 ボスはそういうと片手に携帯を持ち、電話をかけた。


[Ooh it's a killing machine It's got everything...]

「出るといいが...」


 プルルルル...

 ボスは携帯を耳へ近づける。


「出るか...?」

[I love it! and I need it!]


[はい。]

「ウイスタン!今マンションについたか?」


[...はい]

「大丈夫だ。報酬はがっぽがっぽだ!仲間たちには一人100万ずつって言っとけ。あいつらは釣られて張り切るぞ」


[...はい]

「それじゃファイト!」


 ボスは画面をスワイプして携帯をしまった。


「...よし」

 ボスは時計を見た。

 ハッとした様子で前を見る


「やべぇ時間だ...!」






「あー...その...えー...」

 ボスは苦笑いを続ける。

 お洒落でゆっくりなジャズの音楽がずっと背景で流れ続ける



「...」

「...ッチ」

「...はぁ...」

 目の前には呆れた表情でボスを見つめる3人がいる


 アドナス、ケニー、ローレンスだ。


「渋滞してたんだ。だから遅れちまった。あと道に迷ってね...ハハ」


 ケニーが言う

「つい最近にウイスタンとここで会ったのに道に迷うんですか?」


「まぁ...年だし...」

 ボスは苦笑いをしながら言う。

 3人は顔を見つめあってボスを睨みつける。


「本当は妻と猛烈にシてて...最後のな」


「浮気女っすか」

 ローレンスが割り込んでくる


「馬鹿!」

「いいんだケニー。浮気野郎なのは間違いない」




「...カルピスソーダ」

「ありがとうマスター!まぁ許してくれ、報酬はレアなものにするから。」


「報酬とかよりも仕事内容は?」

 アドナスが困惑しきった顔で言う。


 ボスはソーダを飲んでいる。

 一気に飲み干してしまった。


「あぁ...ちょっとまって...」

 そういうとボスはポケットから写真を出す


「こいつなんだが...」


 写真にはとある男が映っていた。

 身長はちょうど高すぎもせず低すぎもせず。

 耳にピアス

 服は黒ずくめ。

 男は片手に透明のビニールを持って、手前の男に差し出している。


「"ヘンダーソン・ベッチ"。薬の手配人だ。ほら、このビニールの中にあるのは白い粉だろ?」

 ボスは写真に指を翳した。

 確かにビニールの中には白いものが入っている。


「ウイスタンらが行っている任務のターゲットに薬を差し出していた」


 アドナスはウイスキーを飲みながら言った。


「まて、あんたは奥さんと離婚したって言ってただろ。」


「そうだ」


「は?不倫相手の事はもうウイスタンたちだけでよくないか?!」

 アドナスは立ち上がって怒鳴った。


 ボスは慌てて申し訳なさそうに言った。


「話を最後まで聞いてくれ、他にも理由はある」


 アドナスは険しい顔をして座った。

「組織の一人が殺された。ベッチもとある組織の一人だ。依頼では差出人でも容赦なく殺す」


 ローレンスはうなずいた後、顔を近づけて言った。


「...それで殺せばいいのか?」


 ボスはゆっくりとうなずく

「痛めつけて終わりでもいい。ただし再起不能には必ずしてくれ。奴はここの路地裏にいる。」








「ボスって抜けてるよなどこか」

 ケニーがため息をつきながら呆れた表情で言った。


「組織自体が終わってる。」

 ローレンスは眉を顰める。


 アドナスは運転したまま後ろを向いた。

「組織自体が終わってるとは?」


「いい加減な組織だ。依頼もはっきり言って曖昧だ」

 ケニーは続ける


「ボスは気が抜けてる。約束の時間に来なかったり、ギャングとして失格だ。ルールもいい加減だ。もっと細かくすれば良いのに。はっきり言って馬鹿だ」


 ローレンスはタバコに火をつける。

「ごもっともだな...」


 アドナスは前を向いたまま言った。

「言われてみれば...だな。別に遅れても報酬が貰えればいいんだが...」


「それだ!報酬だ。組織全体がいい加減だ。まともなのはカートくらいだな。ウイスタンは怪しい。報酬がすべてなんだよこの組織は」


「ケニー。報酬が全てじゃないのか?」


「アドナスは何を言ってんだ。頭のぼせてるのか?もっと大事なものがあるだろ」


 アドナスはため息をついた。

「はいはい」


 ローレンスはケニーの肩をポンポン叩いて励ます。

「おい、銃を構えとけ」











「うちの子は...どうでしたか?先生」


「奥さん...深呼吸してください...大丈夫です。落ち着いて聞いてください」


「ねぇ?!違うって言ってよねぇ?!」


「...残念ですが...」


「ねぇ?!!!うっ...うっ...うっ...!」


「厳密に言うとですね...頭に傷があるんです」


「それで...うちの子が...?!」


「ただし、傷がですね...落ちたようじゃないんですよ」


「え...?」


「ええ。傷がとても深い。落ちた時なら擦り傷が多いんですが...近くに誰かいました?」


「え...あ...上の子が...ベッチというんですが...」


「ベッチ君ですか」


「えぇどうしたんです?」


「恐らくですがベッチ君がやりましたね。木から落ちたと?」


「え...はい...」


「...ベッチ君をこっちに連れてきてください」


「わかりました...」

 女性は部屋を出て遠くまで聞こえる声量で言った。


「ベッチ~?!」

 もう一回


「ベッチ...」




 ドン!

 地面に強い衝撃が走る音がした。

 なにか硬いものが地面に落ちた音だ。


「奥さん?!」


「...」


「奥さん??!」


「...」


「え...君...?何してるの?」

「ちょ...まって...」

「服...血まみれだけど...」

「何?こっちにおいで...」






 

 鈍い音が、室内に響き渡った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ