3話
ーー21:45
お洒落な壁、ポスター、酒の種類。
カレンダーは21日を指している。
「この店の酒は美味いんだ。ボス。何というかサッパリしてて、疲れてるときに飲むと最高」
「OK、OK。了解だ。それじゃ一杯貰う。トカイを頼む。」
「...やっと分かってくれたよあんたは」
「俺は普段酒よりも炭酸を飲むからな。酒って聞くと何だか拒絶するんだ。」
「なんでだよ」
「何だろうな。普段一ミリも触れないからか?だって急に行ったことのない通路行こうって言われても断るだろ」
「それはそうだ。だが酒はあんたが思っている10000倍は美味いぜ。頭がパーッとなる。薬物を決めたように。コカインとマリファナを適度に両方同時に吸ったものと同じ快感がある」
「俺は薬物も吸わない」
「...それじゃ話は別だ。じゃあなんであんたは炭酸が好きなんだ?」
「トカイ」
「ありがとう。」
「...炭酸は酒と同じ中毒性を持っている。だからいいんだ。」
「意味が分からないぜ。だったら酒でいいじゃないか」
「炭酸は血行を良くするんだ。だから健康面的にとても良いんだ。酒は脳が腐っちまう。」
「なんだって健康面を気にしているのか?!」
「俺が健康を考えていないとでも?」
「違う。健康なんて考えなくていいんだよ食う時は」
「太っちまう」
「デブになるかならないかは人それぞれだ。食事くらいパーッとなりたくないのか?」
「ああ。油を取りすぎても困るしな。」
「まったく話が分からない人だよあんたは...」
「...お前はいつもこんな静かだっけか?」
「いやぁ騒がしいあいつらがいないですから。だっていたら好きな女とかヤりたい女とか、女の話しかしないですから」
ウイスタンは笑いながら言った。
同時にボスも笑う。
「それもそうだな。あいつら今何してるんだ?メンバーは...7人だっけか」
「俺、カート、ビリー、アドナス、ケニー、ローレンス、ジェイです。どうせ皆で映画でも見てるでしょう。エロいシーンが出てきたら絶対やってる。シコシコシコシコって」
「ふっ!ひーっ!」
ボスは勢いに負けて笑う。
「そりゃ元気そうだ。まぁそろそろ本題に入ろう」
「本題...依頼の事ですよね」
「そう。これは完全に私情があるんだが...」
「全然。きっとあいつらも喜んで依頼を受けますよ。」
「ならうれしいがな。あー...俺には妻がいることを知っているよな」
「ええ勿論」
「寝取られたんだ」
「寝取られた?」
「...内部の者に。妻もそいつに一目ぼれしていてな。まだいいんだがなんせ薬物をやらせた。ドラッグを。致死量に近い量をやられた」
「内部の者がそれを?」
「そうだ。5人組のな。事件はちょうどお前らが入隊したころに起きた。妻を危険にはさせたくなかった。それに立派な俺への侮辱行為だ。判明したのは今朝だがな」
「オーマイガッ!ですね。...殺す?」
「その通りだ。容赦なくやってもらっていい。殺すくらいがちょうどいい」
「いや..."殺せ"ですよね。分かりました。」
ーー12:43
丁度お昼時。
食べ物のカスが倉庫のそこら中に散らばっている。
「この通り、ボスの妻が寝取られてしまった。」
アジトにて。
ウイスタンはメンバーを座らせて喋っている。
クスクスと笑い声が微かに聞こえる。
「なんだ?」
「なんでもない...ふっ」
「とにかく、これはヤバい事件だ。それで一回、この組織の決まりを復習することにしよう」
「復習?」
「そうだ。何故かはわかると思うが、この事件は決まりに全て違反しているからだ」
メンバー全員が静まり返った。
ウイスタンの声が部屋に響き渡る
「決まりを破る行為はこの組織内では許されないことになっている。」
ウイスタンは手をサッと出して言った
「許されない行為には必ず死が待っているだろう。どんなにも恐ろしい拷問を受けて」
「ペンチを持ってきて...顔を出させる。歯を一個ずつ抜き、指を潰していく。ゆっくりと時間をかけて」
ウイスタンはその場で歩きながら手を後ろに戻した。
なんとも落ち着かない様子で
「その後はベロを出させる。ブチブチッと音が鳴ると同時に違反者は悲鳴をあげるだろう」
「あとは目ん玉を...」
ウイスタンは拳を振り上げた
同時に拳を思いっきり振り下げる
「バン!だ。バン!じゃなくてメキメキの方がよいかな」
「...とまぁそんな話をしたが、勿論決まりは覚えてるよな。指名していくぞ」
ウイスタンは指を指した。
指した方向にはカートがいる。
「まず一つ目。なんでも」
「ボスへの反逆心を持たず、仲間を殺さないこと...?」
「...OKだ」
カートはほっとしたように座った。
「次、映画オタク!」
ケニーだ。
「ボスへの侮辱をしない!」
「いいね。OKだ。」
ケニーは喜んで座った。
「次、アドナス!」
アドナスは自信満々で語った。
「ボスへのため口禁止!」
「...お前はアホか?」
周りからクスクスと聞こえる。
「え」
「残念。次!ローレンス!」
ローレンスはダルそうに立ち上がって言った。
「裏切らないこと」
「OKOK!完璧だ。まっすぐで気の短い男とは違うな!」
「それはアドニスだウイスタン。」
横からケニーが割り込んでくる。
みんなゲラゲラと笑い転げる。
「...もういい!とにかく、これから更に重大な発表をする。"俺らが裏切り者をぶち殺すんだ"」
みんな目を見合わせる。
「ただし、メンバーを決めた。俺含めた4人だ。」
「俺は?!」
ジェイは興奮して聞いた。
「順番に言うからな...いくぞ」
ーー18:45
時刻は18:45分...
湿った梅雨の空気が漂う。
「悪いが俺はビリーだと思う」
アドナスは下を向きながら言った。
「...どうしてだ?」
「胡散臭いんだ。カートを攻めまくってて演技っぽいんだ」
アドナスはビリーに指を指しながら言う。
「裏切り者だったら...ジェイは死んでたさ。マンションについた時には。」
「馬鹿かお前は。外だからに決まってるだろ?」
「外だからなんだ逃げればいいだけだろ」
「だったらさっき殺った方がどちらか混乱させられる」
「どちらも殺せばいいんだ」
アドナスは閃いた顔で叫んだ。
「なに?何て言った?」
ウイスタンはアドナスを睨みつける。
「殺せばいいんだどちらも。二人でグルを組んでいる可能性だって大いにあり得るぞ」
「馬鹿かお前は?こんな盛大に嘘ついて命かけてる理由なんてあるか?グルはあり得ないし、二人とも殺すのは違うぞ」
「そうすれば解決するさ。間違えて犯人じゃない片方撃って裏切り者にその後殺されるだけだ」
「いい加減にしろ少しくらい考えてから殺せばいい。」
「考える時間なんて必要ない。裏切り者はすぐにも動くんだぞ?!」
「それで一人仲間を殺すのか?!味方の奴を?!」
「ああそうだ。なんせもう3人は死んでるんだ!」
「だからなんだ!殺して良いことにはならないだろ!」
「よくあんたが言えるな。今まで俺たちはバンバン殺してきて、別の人になるとこれか?」
「仲間だろ!」
ウイスタンは精一杯叫んだ。
「あいつは殺してこいつは殺さないか。都合がいいもんだ。自分の思い通りになるだけかと思ったか?!」
ドス!
ウイスタンは思いっきりアドナスの腹を蹴った。
アドナスは激しく後ろへ飛んでいった。
「この野郎...!」
ウイスタンは倒れたアドナスを再度蹴り上げる
何度も何度も
「うわあ!」
「この野郎!おい!」
「ぎゃあ!」
アドナスは悲鳴を挙げる。
「クソが...!」
アドナスは拳を振り上げてウイスタンめがけて殴った。
ドス!
「うぇ...!」
ウイスタンはその場で倒れた。
アドナスは立ち上がって息を切らす。
「はぁ...はぁ...あんたちゃんと考えろ...!」
「う...うぅ」
ウイスタンはアドナスを睨みつけて言い放った。
「いい加減にしろ...!」
「あんたこそな!」
「黙れ!二人とも殺すなんて論外だ!どちらかは無罪だからな!考えろ!」
「へっ、そんな事じゃあ今のこの場面は解決できないぜ!分かってるけど言われて慌ててるのが見えるぜ...」
「ぐ...」
「あんたはすぐそうやって都合が悪くなるとそうやって暴力に走るよな!良いリーダ面しやがって!」
「俺はリーダーだ!」
「どこが"良いリーダー"だ!確かにあんたはリーダーだが素質はゼロだ!俺が迷ってるときなんてずっと何も考えないでいただろ!俺が考えを発言したってあんたは考えない癖に否定ばっかりだ!」
「考えてるさ!」
「考えてるなら考えてるなりに行動しろ馬鹿野郎!俺しか行動に移してないぞ?!この薄らボケめ!」
「...」
ウイスタンはアドナスの胸倉をぐっと掴んだ。
「立てよ...」
アドナスは唾をごくりと飲み込んだ。
ガン!
ウイスタンはアドナスを壁へ押し当てた
痛そうな音が部屋を行き来する。
「お前には分からないさ。リーダーじゃないからな」
「う...」
アドナスは痛みをぐっとこらえる。
「責任・緊張・恐怖・士気・疲れ、全部お前らは分からないだろうな」
「責任感に問われ、失敗するときの緊張、仲間を失う恐怖、チームの士気を上げる、それらの疲れ」
「分からないよな」
ウイスタンは震えた声で言う。
アドナスは何も言い返せなくて口がごにょごにょしている
「...だからなんだってんだ。そんなのには甘くないぞ...」
アドナスは言いながらウイスタンの手を取っ払う。
静かな時間が永遠に感じられた。




