2話
ーー8:30
朝の太陽が茶色いマンションを照らしている。
「...レオンみてえなマンションだこと」
ジェイはマンションを見つめながら言った。
「お前の映画オタクっぷりはすげえよ。あだ名まで思いつくぜ」
「どんなあだ名だ?」
「フリックマン。どんな事も簡単に弾いちゃうクソダサい人間」
「死ね」
「いいか作戦通り行くぞ。ビリーとケニーで外待機だ。俺とカートで攻めていく。二人は銃を構えとけ」
ビリーは車に手を置いて言った。
「分かってらぁ。逆にそっちこそ気をつけろよ。」
プルルルル...
ウイスタンの携帯が鳴り響いた。
「はい」
「...はい。わかりました」
ウイスタンは30秒ほどで携帯をしまった。
「報酬はボスが一人100万くらいだとよ」
ウイスタンが笑いながら言った。
「それじゃ行ってくる」
ジェイはウイスタンを見ながらガムをくちゃくちゃ音を立てながら噛む。
ビリーはジェイをチラッと見て言った。
「...パルプフィクションって知ってるか?」
「くちゃ。なんだそれ?くちゃくちゃ」
「ギャングの映画。あの二人がその映画を連想させてさ」
「面白そうだな。くちゃくちゃ」
「面白そうじゃなくて面白いんだ。タランティーノは天才だ」
「タランティーノか...俺は王道のスピルバーグ派だからあんまだな...」
「お?言った?じゃあ見てみろ」
「分かったよ、わかったって。集中しろ」
「まぁいいや。車に乗ってるぜ」
「なぁそいつってどんな奴なんだ?」
カートはウイスタンに不思議そうな顔をして聞いた。
「さぁ。初対面だし知りたくもねえな...」
二人はぶつぶつ言いながら階段を上がっていく。
「というかエレベーターで良くないか?ウイスタン。疲れるぞ」
「エレベーターは気づかれるかもしれないだろ。それにエレベーターは嫌いなんでね」
「嫌い?なんでだよ」
「揺れが嫌いだ。」
「そんな理由で体力を使って、いざって時にどうすんだよ」
「お前が体力ないのは知ってるんだ」
ウイスタンは呆れた顔でカートに言った。
「はぁ...」
「大声を出すな馬鹿野郎。」
「...」
「銃を用意してろ」
ウイスタンとカートはポケットの後ろで銃をカチャッとセットした。
ジェイはマンションを見上げながらガムを食らう。
ビリーは車のクラクション音を鳴らした。
「ちゃんとマンションじゃなくて周りを見てろー!いつ行動するか分からないだろ!」
窓ガラス越しに濁った声で聞こえる。
「分かってらぁ!」
ジェイは反論してから周りを見回し始めた。
「くっそ廊下も長いのか」
「黙って歩け。」
二人の足音が廊下内に響き渡る。
なんとも劇的に。
外からジェイとビリーが廊下を歩く二人を目撃した。
ジェイは双眼鏡を片手に窓に映る二人を見る。
「くちゃくちゃ」
ガムを食う音と同時に二人とも銃を手に持つ。
「...ゴクリ...」
カートは唾を飲み込んだ。
ウイスタンは黙って歩き続ける。
「ここだ。」
カートはドアを見ながらウイスタンに聞く。
「インターホン鳴らすか?」
「...馬鹿なのか?」
「嘘だよ冗談だよ、本気にするなって」
「...入るぞ」
ウイスタンは思いっきりドアを蹴った。
破片がそこら中に散らばる。
「おいおいぶっ飛んでるな」
ビリーは笑いながら見る。
ウイスタンは蹴ったほうの足を前にしたまましばらくの間止まった。
部屋の中では若い男4人組が驚いた様子でウイスタンを見ている。
部屋の窓から猛烈な風が吹いて、2人は険しい顔をしながら言った。
「入るぜ」
そういうとウイスタンは部屋の中をどんどん進んでいく。
後方からカートもにやけながら続いて入っていく。
「...」
4人組は黙ったままポーカーをした様子で止まっている。
もちろん違法なポーカーだ。
机の上には酒4人分とそれぞれの薬が置いてある。
「この酒はなんだ?」
ウイスタンに聞かれた4人組は口をゴワゴワさせて言った。
「...ト...トカイ...」
「ほぉ!銘柄は?」
「トカイ・フォルディターシュ...全員...あ...同じ」
「一口いいかな?俺もトカイ好きなんだ。カート飲むか?」
「イエス!」
カートは後ろから返事をすると駆け足でウイスタンのもとへ行った。
「それじゃ、コップに注いでくれねえか?」
「あ...あ...はい...」
4人組はそれぞれの目を見あって、一番身長の低い男がいそいそと席から立ち上がる。
「ありがとうな」
背の低い男はボトルを持ってきて、ゆっくりとコップに注ぎ始めた。
手が震えてウイスタンのスーツに2,3粒着いた。
男は汗をかき始めた。
「どうした?震えてるぞ?病気か?」
男は首を横に振り、大丈夫とサインする。
今度はカートの方へ注ぎに行く。
「ありがとう」
男はひどく怯えて、注ぎ終わると同時に駆け足で席へ戻った。
「それじゃ、一口。」
ウイスタンとカートは同時にぐいっと飲む。
酒はどんどん減っていき、一気に二人とも飲み干してしまった。
「くーっ!最高!はっはっは!」
カートは笑いながらおいしいおいしいと繰り返す。
ウイスタンは驚いた顔で4人組に話しかける。
「うまいな!フォルディターシュは初めて飲んだがハマるな!」
4人組は恐る恐るウイスタンを見つめる。
「うちのボスも同じこのトカイが好きなんだよ」
ウイスタンは上機嫌にいう。
「ボスの奥さんもトカイが好きで、最近お前らが好きなフォルディターシュが好きらしいぜ!」
4人組は一斉に目を見あう。
全員汗をかき始める。
「あ...あの...」
一人がウイスタンに向かって言う。
「あなたたち...何しにここに...?あなたたちの組織は知ってますが何か御用が...?」
ウイスタンは笑顔で言う。
「ああ言い忘れてたな」
ウイスタンは真顔になって怒鳴り散らした。
「お前らわかんねえのか?!ボスの妻を寝取っただろ!」
一人の男が怯えに怯え言った。
「...知らない...」
「あ?」
「知らない...」
「あ?!」
「知らない!そんなボスを裏切るような行為...誰がやるんだ?!」
バン!
部屋に銃声が鳴り響く。
男の足に銃弾が当たった。
「あああああああああああああ!」
男は悶絶し、足を抑える。
他のメンバーはずっと下を向いたまま震えている。
「い...あ...あああ...!」
ウイスタンが睨みつけて言う。
「やってるから言ってるんだろうがそんくらいも考えられねえのか?!お前らは、他人の妻とイチャコラした!事実だ!」
「そんなん誰が言ったんだ?!そそれにあああの...根拠は?!」
「おーい」
後ろからカートの声が聞こえる。
「部屋にこんなん落ちてたけど」
カートが手に持っていたのは写真だ。
...ボスの奥さんのアダルト写真だが。
一斉に黙り込んだ。
「これについては?」
一人が声を出した。
「あ...そ...それはおれの...」
バン!
声を出した奴はその場で勢いよく倒れた。
「あ...いてぇ...ああ...!」
一人足を抱えているのを覗いた2人はそれぞれ目を合わせる。
「これについては?!」
2人はじっと下を向いて汗をかいている。
「聞こえてんのか?!あ?!次は足を撃った奴の頭をぶち抜く!」
カチャカチャっと鉄の音が小さく聞こえる。
「お前らにはちゃんと教えてやらないとな」
ウイスタンは足を抱えている奴に向けて銃口を向けた。
「1つ!我々はボスへの反逆心を持たず、仲間を殺さないこと」
「いてぇ...ああ...!」
ウイスタンの指は引き金に強く当たる。
「2つ!ボスへの侮辱的行為をしない」
2人ははぁはぁと息を吐いている。
「3つ!裏切らないことだ!」
バン!
バンバン!
ババン!
ウイスタンは銃を乱射した。
部屋の中は白い煙でいっぱいになる。
足を抱えていた男はその場で血を吹いて倒れた。
カートは後ろから細い目で見つめる。
「...あと2人...こいつらか」
ウイスタンは呆れた顔で銃を差し出した。
「ルーレットだ。ロシアンルーレット。やれ」
2人は顔を見合わせる
「いいからやれ!」
1人が前へ歩き出す。
ゆっくり。
慎重に。
恐ろしいほど怯えて
「よーしいい子だ」
男は手を出した。
「いい子だ」
バン!
手を出した男は腹を抱えながら後ろへ倒れた。
「あ...あぁ!」
最後の1人は怯えている。
「ついてこい。お前。」
「あ...ああああ!」
「お前耳あるのか?!さっさと立て!」
「...あ...」
「おし。出るぞ」
ウイスタンとカートは後ろを振り向いて、銃をしまった。
生き残りはただついていくだけ。
「これで報酬は?いくらだ?」
「一人十万あたりだろ。うれしいぜ」
「十万?!お前さっき何て言ったけ?」
「冗談もわからないのか」
二人はぶつぶつ言いながら部屋を後にした。
「ふー...血は...ついてるか?カート」
「あんたはついてない。俺は?」
二人は話しながら長い廊下を歩いていく。
「ああついてない。下であいつらが待ってる。速くいこう」
「早く行くならエレベーター使ってみようぜ。ウイスタン」
「...」
ウイスタンは止まってカートの方を見つめる。
「俺はエレベーターが嫌いだと何回言わせるつもりだ?」
「あんた一回しか乗ったことなくて、それが幼少期だろ?そんなの今では怖くないだろ」
「怖いんじゃなくて揺れで酔うんだ。ゲロぶちまけても良いなら乗るぜ」
「じゃあ行こう」
「お前はバカか?これほど嫌だってのになぜそんな行かせたがる?」
「楽だし体力を使わない」
「楽だからなんだ先祖はみんな車なんてなかったんだぞ」
「それは過去だ。今の事を考えろ。今は十分に楽ができるようになっている。その楽を作るのには凄い時間が必要だ。その時間の中には様々な人々がいる。その人たちに感謝をして、楽をしようってこと」
「...ものすごい持論を持ってることだ。」
そういうと二人はもう一度歩き始めた。
「だがこれが最後だからな?いいな?」
「分かってる。ただ乗らせたかっただけなんだ」
奥の方でチンとベルの音が鳴った。
「ゲロ吐いてもお前が責任取って掃除しろよ?」
「はいはい」
ちょうど角を曲がった所にエレベータが到着した。
エレベータの中から一人の暗い感じの男が出てきて、二人はその次の瞬間乗った。
後方から一人がついてくる
「ああ神様...」
チンと音が鳴り響いた。
鈍い音を立てながらドアが閉まる。
「ああ...」
「どうだ?」
「怖くて死にそうだよ...」
「そうか。だが楽か?」
「...そうだな」
エレベータ内はガタガタと揺れ続ける。
2Fのライトが点滅した
二人はずっと上の階表示を見つめる
1Fのライトがついた。
「いやエレベータ神だな」
「そうか?!やっと気づいてくれたのか!」
「いやそれにしても...」
「ぅぃ....」
ーー18:30
重くてどっしりとした空気が部屋中に広がる。
外の暗さが余計にそれを引き立ててるのだろう。
「とりあえず二人とも銃を置け。良いか」
ビリーとカートは銃を地面に置いた。
「いいか、喧嘩や殺しが起きたら真っ先に始めたほうを殺す。わかったか」
アドナスは二人に指を指しながら言った。
「...了解」
「OK」
アドナスは興奮状態だ。
「ちくしょう!どうなってんだ」
「とりあえず...アレは確定している」
「なんだって...まて、ウイスタンお前その言い方だと分かるぞ俺は。分かるぞ」
「...ああ。考えたくもないがな」
「どちらかが殺した...のか?」
アドナスとウイスタンはドアをチラッと見る。
「意味が分かんねえよ?!」
「俺も分からない。残念だが...」
「まて...ホラ」
アドナスはタバコを一本差し出した。
ウイスタンはそれを持つ。
「...フーッ...ありがとう」
「大丈夫だ...フーッ...」
「...とりあえず分かったか?」
「分かんなければよかったのにな...クソが...!ギャングスターにでもなるつもりかよ!」
ドン!
アドナスは壁を思いっきり蹴った。
「ギャングスター?なんでだ」
ウイスタンが聞く。
「"このグループがボスを殺そうとしていたから俺が殺しました"何ていったらこの組織のトップにたてるだろ。ボスを守ったから。すべて嘘だけど。名声はつく。」
アドナスは苛ついている顔で言った。
「トップか...」
「とにかくどちらかが殺した。これは事実だ」
「だがどっちだ?」
「アドナス...何があったんだ」
「みんなで映画見てたんだ。シンドバット7回目の冒険ってやつ。だがなんかピリピリしている空気はあった」
「なんでだ」
「聞くまでもないだろ...裏切り者の件だよ。」
アドナスは少し間を置いた。
沈黙の時間が続く。
「...どちらか...か。2人とも容疑者なんだろ。」
アドナスはウイスタンに聞いた。
ウイスタンは無言のままうなずいた。
「まず...状況整理だ。ビリーは何ていってたんだ?」
「ビリーは
俺が外に出た瞬間、いきなり誰かが銃で乱射し始めた。それまではただ呑気に座っていただけで、そして銃の煙が消えるとカートが立ってた。
と...」
「カートは?」
「ビリーが[全員ぶち殺してやる]と言って乱戦が始まった。運が良いことにカートは生き残ったが、目の前にはビリーがいた
と」
ウイスタンはタバコに火をつけながら言った。
「ふん...あいつら本当のこと言えば良かったのにな...」
アドナスは言いながら座り込んだ。
まるで哀れだなと思っているように...




