1話
ーー8:20
「...あの映画...あれ...そうだシンドバット...七回目の冒険...?いや航海か?」
「航海だビリー。俺も見た。あれポルノ映画だろ」
「馬鹿が。本当に見た?!最高だよな?!あの古臭い感じとシンドバットの色気が凄いよな!」
「まじか?俺はクソだと思ったよあの映画」
「なんだって...もう一回言ってみろ...」
「はっきり言ってゴミの中のゴミだ。怪物は魅力的だったがな。お前と女がくっついているくらいの気持ち悪かった」
周りからクスクスと笑い声が聞こえる。
「クソ野郎が。映画の良さが分からねえ奴は人間じゃねえぜ...いいかよく聞け。あの映画は凄いんだぞ」
ビリーは手をあげてジェスチャーしながら言い始めた。
「あの映画にはな、壮大なカタルシスが込められているんだ。勿論普通のじゃない。」
「冒険・ドキドキ・ハラハラ。エロはないが十分楽しめるんだ。完璧だ。マジでパーフェクト。」
(パーフェクトって完璧って意味だよな...)
カートが眉をひそめる。
「パリサ姫をもとの姿に戻すために冒険に出るんだが、これがとてつもなく危険な旅路」
「シンドバットは他人のためにそんなに頑張れるんだ。」
「まあセックス目的かもしれねえけどな。助けてヤるつもりだったのかもしれねえ。朝昼夜、一時間に一回くらいヤる気だったのかもな。」
「だが、それでも助けることには変わりない。シンドバッドは凄いんだ」
「ヤるのか?だったら見るぜ」
横からジェイが割り込む。
「エロはないって言っただろ話聞いてるのか?」
「話は聞いていたがただ単に気になっただけだ。カッカするな子供みたいでダサいぜ」
「黙れ!」
周りからはクスクスとずっと笑い声が聞こえる。
「あんまり怒鳴るな。運転に集中できないだろ。朝っぱらから疲れさせないでくれ。まだ8時だ。」
ウイスタンが疲れた様子で後ろに言った。
「8時なんてもう朝じゃない。ほぼ昼みたいなもんだろ」
ジェイが困惑した顔でウイスタンを見る。
「俺にとっては早朝だ。」
ウイスタンは眠たそうにあくびをし、目を細めながら運転をする。
「せっかく珍しい4人だ。しりとりでもするか?」
「低レベルだなカート。ここはロシアンルーレットだな」
「...馬鹿かジェイ。一人減るんだぞ」
「冗談だっての。他に遊びねえのかよ?幼稚すぎんだろ」
「じゃあお前が考えろ俺が10数えるまでにな」
「いいぜ。上等だ」
「10」
「まて合図くらい...」
「9」
「ちくしょう!」
「8」
「あートランプ!」
「7」
「運転中の俺を馬鹿にしてるのか?」
ウイスタンが言う。
「6」
「うっせー片手で運転くらいできるだろ」
「5」
「あーもう!」
「4」
「手遊び」
「3」
「シコシコ!」
「ぶっ!」
「2!」
「まて...」
「1」
「分かった負けだよ負けだ!」
「ほら言ったとおりだ。しりとりでいいよな」
「勿論。」
一人を除いて全員がそう答えた。
「じゃあ始めるぞ。しりとりの"り"から...リス」
「スル」
とカート。
「ルーレット」
とウイスタン。
「トイレ」
とジェイ。
「連打」
とビリー。
そのあとは同じ順番で進んでいった。
「騙す」
「スパイ」
「イく...ぶっ!」
「...面白くないぞジェイ」
「くんに」
カートが順番をずらして言った。
「...カート!」
「肉」
「クリスマス」
「スリスリ」
「リンゴ」
「ゴリラ」
「ラジカセ」
「セックス」
「もうやめようお前らあとで覚えとけよ。ジェイとカートと...ウイスタン...」
「お前以外だな!」
「...くそ!」
車内に笑いがあふれ出した。
みんな腹を抱えて笑う。
「さぁ楽しい会話は終わりだ。目的地だぞ」
「うぇ...ボロボロマンションじゃねえかよ。」
ジェイは苦笑いをしながらマンションを見つめる。
「まぁまぁ。いいじゃないか」
ウイスタンは後ろを向いて言った。
カートはポケットに手を突っ込んで”ちょっと待ってくれ”と言わんばかりにウイスタンを見る。
ジェイは細い目でウイスタンを。
ビリーは笑顔でわくわくしたかのように。
「とにかく外に出るぞ。皆ドア開けて降りろ」
=MY GANG・STAR=
ーー18:20
外は暗闇で覆われている
アジトの倉庫には冷たい空気が駆け回る。
倉庫の外では、コンビニのライトの光や、車の音でにぎやかな雰囲気だ。
灰色の壁は、どこか哀愁漂う雰囲気を作り、血に濡れている。
ネズミか分からないが、ガサガサと音が鳴り、腐敗臭が漂う。
時計はちょうど6時30分を指している。
「はぁ...はぁ...」
片手には銃を持っている。
もう片方はブラブラと血が流れる腕を下に向けている。
「ぐ...」
見下ろすと銃口の前に二人が座っている。
二人は顔から血を流している。
二人ともウイスタンの事を睨みつけている。
ウイスタンはただ銃口を突き付けている。
二人は見覚えのある顔の奴らだ。
一人はビリー
一人はカートだ。
「はぁ...はぁ...」
ウイスタンは今にも倒れそうなくらい息を荒げている。
顔を見上げた。
見上げた先は血まみれの部屋だった。
部屋の中はあちらこちらに血が飛び散っている。
床には銃と、倒れた人間が散らばっている。
「...あ...あぁ」
ウイスタンは倒れている奴らを見て呟いた。
「...ケニー...ローレンス...ジェイ...」
倒れている人は全員片手に銃を持っている。
大量の血を出しながら彼らは倒れていた。
「どうなってるんだよクソが...!」
「俺が言う」
ビリーが肩を抑えながら言った。
「裏切り者の件でピリピリしてたろ、そしてあんたが外に出ていた時だ。いきなり誰かが銃でケニーを撃ち殺した。それまではただ呑気に座っていただけだ。そして皆乱戦状態。悲鳴を挙げるわ叫びまくるわで大混乱だ。そして銃の煙が消えるとカートが立ってた。」
「よくのうのうと嘘をつけるもんだ。」
カートが横から入り込む。
「アドナスは今どこにいるんだ?」
「トイレだ。だから生き残っているはず...」
「で、嘘って...」
カートが言い始めた。
「あんたが出て行って、アドナスがトイレに行って、その後、ビリーがケニーに銃口を向けたんだ」
「なんだって?!もう一回言ってみろ!」
「そしてビリーが[全員ぶち殺してやる]って、そして乱戦が始まった。運が良いことに俺は生き残ったが、目の前にはビリーはいたんだ」
ウイスタンは瞬時に状況が理解できずに戸惑っている。
「くそ...くそ...!」
ウイスタンは困惑した顔で二人に言った。
「二人とも違うこと言ってたら分かんねえよ!だからなんでこうなってる?!」
「俺は本当の事を言ったぞ。殺したのはビリーだ。」
「それは違う!カートが嘘をついている!」
ウイスタンは頭を抱え始めた。
「...んねえよ...わかんねえよ...訳がわかんねえよ...」
その時...
部屋の奥のドアが開いた。
「...うわあ!」
アドナスだ。
びっくりして後ろで飛び跳ねた。
「は?おい!ローレンス?!おい!」
目の前にある血まみれの死体に語り掛ける。
「ちくしょうなんだっ...」
言い途中で、部屋の惨状に気が付いた。
アドナスはしばらく固まった。
「...おいどうなってんだ...?おいウイスタン?!」
アドナスはウイスタンに駆け寄った。
「誰だこいつ...ビリーとカート?!なんで銃なんか向けてんだ!」
アドナスは終始困惑している。
「いいかアドナス一回落ち着け...俺も落ち着いていないが...」
「...あ...ああ」
「まず...お前は俺が出て行った後にトイレに行っていた。」
「そうだけど...」
「そして俺が戻ってくるとこの有様だった。生き残っているのはこの二人だ。二人はそれぞれ違うことを言っている。」
「...は?何言ってんだよ?」
ビリーが横から割り込んできた。
「おい!カートを殺せ!このクソ豚野郎は仲間を殺しまくったんだぞ」
カートが睨みつけて言った
「嘘を言うのも大概にしろ!この殺人犯め!裏切り者が!」
「なんだ?俺が裏切り者だっていう証拠があるのか?」
「あぁ十二分にある。逆にお前はどうなんだ言ってみろ!」
カチャッ...
ビリーは拳銃を素早く出してカートへ向けた
「はぁ...はぁ...」




