12話
「忘れてた」
ベッチはカートをじっと見ながら倒れこむ。
ベッチの全身は震えが止まらない。
「はっきり言うがお前は要らない人材だ。無駄に暴力的で...見ろこのビリーを...呆れる」
カートはゴミを見る目で見下しながら続ける。
「後片付けが大変なだけだ。今後そのようなことがあっては邪魔で仕方がない。アドナスたちの件で警察沙汰にしたのは...警察が来るのも時間の問題だな。何にも言えないよ」
ベッチの目からは涙が零れ落ちる。
室内の濁った空気が、目を赤くさせる。
口をごにょごにょ動かし、苦しそうにカートを必死に睨みつける。
「あ...あぁ...!の...のろ...」
ベッチは身体が震え、口から血を吐く。
そして言い放った。
「呪って...やる...」
「...ふぅ」
カートは肩を回し、血まみれの部屋でただ一人立っている。
辺りを見回すと死体の山だ。
ジェイ...
ビリー...
アドナス...
ローレンス...
ケニー...
そしてウイスタン...
ここから外ではボスの死体がベッチの車のトランクにしまってある。
灰色の壁は、真っ赤に変わっていた。
カートは一人で空へと手をあげる。
目を細くし、満面の笑顔で上を向く。
達成感であふれるその笑顔は、血に濡れて狂気に満ちていた。
「はぁ...!」
カートの目からは思わず涙が込みあがってくる。
溢れんばかりの喜びを、これでもかと全身で表す。
「ぼ...僕は」
「僕はギャングスターだ…!ハハ!」
出てきた言葉は、重々しく、相当な物だった。
カートは笑う。
完全に勝利したから。
白色の光が、カートを神々しく照らす。
「ギャングスターだ!僕が!」
そういうとカートは視線を上から横へ変える。
横には、倒れた仲間...もはや不要員が血を流している。
(カート...お前...)
「ケニー」
(ぎゃあああ!)
「ローレンス」
(ごぼ...!)
「ジェイ」
「協力ありがとう。不要なカスたち共...君たちの行動のおかげで、僕はここまで来た」
死体を見下すように見る。顔つきは完全に前とは別人だった。
目を大きくして、ポケットに手を入れて偉そうに突っ立っている。
顔は黒く塗りつぶされたかのように影が覆い、目の白い部分がシルエットのように映っている。
そして口を開けて大きい声で叫ぶように言い放った。
「これからは...僕の時代だ!」
カートは大きい声で高笑いをした。とてつもなく大きい声で。
悪魔のささやきのような、そんな笑い声。
手は血で濡れているのに、構わずに顔の涙を拭う。
達成感溢れる不快な笑い声は、室内に嫌なほど響き渡った。
「この場を離れないとな...血は...トイレで洗えるな...」
そういうとカートはトイレの方へ歩いていく。
1人しかいないからか、いつも以上に足音が大きく聞こえる。
水が冷たい。彼の心のように。
カートの手に当たると、透明な水は赤い水になり、流れていく。
「...」
緑色の光がカートの顔を照らしている。
カートはずっと鏡を見ながら顔についた血をこすって落とす。
濡れた手...ほぼ水がそのままの手を顔に強く当てた。
手が顔から離れていくたびに恐ろしい顔が浮かび上がってくる。
「よし...」
いそいそと部屋へ戻る。
帰りも同じように足音が大きく聞こえた。
「銃...ナイフ...チェンソー...全部持っていくか...」
カートは1人ずつ死体を確認しに行く。
そして1人ずつ銃弾の残りを確認し、一番多かったジェイの銃を懐に入れた。
チェンソーは壁の近くにすぐあった。
残りはナイフだ。
「ナイフ...どこだ...」
辺りを見回してもすぐ見つからない。
「ちくしょうこんなことに時間を使いたくはない...!指紋が残ってるんだぞ馬鹿が...!」
カートはイライラし、歯をギシギシと鳴らす。
「考えろ考えろ...」
(カートはウイスタンから降り、ナイフをポイとウイスタンの近くへ放り投げる...)
「そうだ...!...?」
カートは閃いた顔で後ろを向こうとした。
そう。向こうとした。
なぜか後ろを向けない。
「え?」
思わず声が出る。
全身...特に腹に猛烈な痛みが走った。
刃物が体内に食い込んだような...痛みだ。
(なんだ...?)
カートはゆっくりと腹を見るために下を向く。
そして、口を開けて固まってしまった。
開けたままの口から血が思いっきり出る。
「がぼ!」
本当に刃物が自身の体を貫通していた。
ついさっき洗ったばっかりの手が、血で汚れていく。
カートの体が震え始める。
目には涙が出てき、カートの心の中は真っ白となった。
思いっきり地面に倒れこむ。
後ろにはウイスタンが苦しそうに立っていた。




