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せめぎ合う恋心―1

≪望月玲≫


 中学まで、私はいつも一番だった。

 勉学でもスポーツでも誰もが私を褒め称え、羨望の眼差しを一身に浴びていた。あの頃の私は自分がどこまで高みへ上りつめてしまうのか、自分自身にある種の恐怖すら抱いており、その才能を遺憾なく発揮し続けることに幼稚な使命感を持っていた。

 しかし、高校に入学した途端、私の世界は変わってしまった。

 入学直後の学力テスト、スポーツテストで私は二位だった。

 意味が解らなかった。見間違いかとも思った。夢を見ているのではないかとすら思った。私は中学を卒業してからも自分の才能をこつこつと磨き、それはより洗練されているはずだった。実際総合的に見て自分の能力は上がっていたのかもしれない。しかし、自分より才能のある者――完全なる私の上位互換が現れた瞬間、私の世界は変わったのだ。


 南雲詩由――私は彼女になにひとつ敵わなかった。


 世界が変わり、周囲からの視線の色も違って見えた。いつからか私は『双楠高校のアイドル』などと呼ばれ、黄色い声が飛び、厭わしい視線に晒されるようになった。前よりも見知らぬ女子や軽薄な男子に話しかけられるようになったけれど、そんなの私の求めていた未来ではない。

 気持ちの悪い世界――いつから私は偶像崇拝の対象になってしまったのか。

 南雲さんに対する劣等感を払拭するためには彼女を上回る能力を手に入れる必要があった。絵本を好きになったのは、もちろん自分が純粋にその奥深さに惹かれたからなのだけれど、それを探し始めたのは誰にも負けない自分唯一の得意分野をつくりたかったからなのかもしれない。

 南雲さんに近づこうと生徒会へ入ってはみたものの、リーダーシップ、他人への配慮、創造力――どれを取っても私の方が上回っているとは到底思えなかった。逆に南雲さんとの離れた距離を再確認してしまっただけで、いつしか張り合おうとする気概さえ失ってしまっていた。


 しかし、南雲詩由のウィークポイントは突然現れた。

 それは彼女の溺愛する兄の存在だった。彼女が彼に向ける視線は他人に向けるものとは違い愛情があった。それが家族に向けられているものだと、私は到底思えなかった。

 その兄である上乃弦二に私はつい先日告白をされた。そのことで優越感に浸れたわけでもないが、南雲さんは明らかに私に敵対する視線を向け始めた。


 心の底の幼い部分が、まだ南雲詩由に負けていないと叫んでる。

 上乃弦二を調べてみよう。

 好きになったわけじゃない。けれど、二つの意味でその人物を知りたいという欲求が私の中に生まれていた。

 南雲さんの弱点となりうる人。

 そして、自分の好きなものを好きだと言いあえる人。

 あたしの世界に現れた、たった一人の男の子のことが私は気になって気に立って仕方がなかった。公民館で私の絵本の下書きを見てくれた時はドキドキと心臓が高鳴っていたのを今でも鮮明に思い出せる。

 気になる――なら、徹底的に調べ上げるだけ。

 私の行動指針は上乃弦二へと向いた。

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