第186話 なんGまでなら
結局おしっこを掛け合うことになった俺と博士は、ゲートを超えて地上に戻る。
太陽の位置からして、まだ午前のようだ。
十時を少し過ぎたあたりだろうか。
少し曇っているのがむしろ心地よい。
「あっち」
博士が示したのは、簡易拠点があるのとは別の方向だった。
その先に何があるのかは知らないけれど、博士が言うなら間違いないと、疑義も呈さずそちらに足を向ける。
しばらく丘を下っていると、背後から気配がする。
振り返ると、別世界の彼らがゲートを超えてやってきたところだ。
どうやら付いてくることにしたらしい。
(あ、まずい……)
俺は内心で焦る。
彼らが追ってきたことに対してではない。
彼らは手放した武器を拾っていたのだ。
いやまあ、あのまま置いてくるわけもないんだけど……。
間抜けな俺は放置してきちゃって、今は手ぶらだった。
というか俺が手放した剣は今、フルメイルの手に握られている。
あまりにも無防備だ。
距離が結構あるから襲われても逃げ切れそうな気はするけれど……。
でもそれは俺一人だったらの話だ。
今は腕の中に博士がいる。
「……あの」
「なんだ」
「博士ってなんGまでなら耐えられます?」
「なんだその質問……。怖えよ、遠心分離機かお前は。逆になんGまでなら出せんだよ……」
「ちゃんと測ったことはないですけど」
「私は1Gを重いと感じている」
「あ、そうですよね」
ならいきなり全力で走り出すわけにもいかない。
俺がチラチラと背後を気にしていると、フルメイルが剣を振りかぶった。
投擲してくるのだと思って身構えたけれど、杞憂だった。
いや実際に投擲してきたのだが、それはキャッチボールでもするみたいに山なりにだったのだ。
とても攻撃と呼べる代物ではない。
両手が塞がっているから掴むわけにもいかず、体の位置を微調整して、それこそ野球の背面キャッチのように背負った鞘にシャコンと納める。
「そんな当たり前みたいに危険な曲芸を……」
博士がドン引きしたように言う。
「あ、そうですよね。罠かもしれなかったのに」
「そういう意味じゃねえよ」
「え?」
他にドン引きする理由なんてどこにあるのだろう。
ともかく俺はフルメイルを振り返って黙礼だけする。
それ以上のことは何もできない。
俺は彼らの文化を何も知らないのだ。
「何が逆鱗に触れるかわかんないもんなぁ……」
極端な話、黙礼が侮辱を意味する可能性すらあるのだ。
相手の反応からして、幸いそんなことはなかったみたいだけれど。
でも逆に謝意が伝わったのかどうかも怪しいところだ。
「どうしても腫れ物に触れるみたいな対応になっちゃうよなぁ……」
”ジローがそっち側に回ることなんてあるんやな”
”異世界人、恐るべし”
”お前は冒険者に常にその扱いを押し付けてるんやぞ”
まあでも、きっと博士に何か考えがあるのだろう。
そんなほとんど責任転嫁みたいなことを考えていると——
向かう先に、三十名ほどの人が待ち構えていた。
全員が軍服を着て、手には自動小銃を持っている。
確認するまでもなく、彼らはオランダの軍隊だった。
【ご報告】
またおしっこでめっちゃブックマークが減りました!!!
なんでや!!!
おしっこ面白いやろ!!!




