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第六話 山
それからというもの、鈴にも危険な目に遭うと、こけしから出てくるおかっぱが見事な刀捌きで悪人を退治していった。
ある日
町は、いつもの朝を迎えていた。
店先から立ちのぼる湯気。
桶を抱えて歩く女たち。
走り回る子どもたち。
戦いを終えたおかっぱは、直ぐにはこけしに戻る事なく道の向こう、鈴の前を歩いていた。
黒く艶やかな髪は、今日も肩のあたりで揃えられている。
小袖の裾を揺らしながら歩く姿は、町並みの中ではどこか浮いて見える。
それでも誰も振り返らない。
「今日もいるな。」
そんなふうに受け入れているようだった。
おかっぱは歩みを止めると、いつものように遠くを見た。
山だった。
あの人は、いつも山を見る。
鈴は、その横顔を見つめた。
何を待っているのだろう。
何を見届けようとしているのだろう。
おかっぱは何も語らない。
その日も、小袖の袖を整えると、山へ背を向けて歩き出した。
鈴は胸元へ手を添える。
こけしの丸い感触が返ってくる。
ふと、幼い日の記憶がよみがえった。
父。
母。
祠。
そして、この子。
鈴は静かに目を閉じる。
答えは、あの山にある。
そう思った。
翌朝。
鈴は小さな包みに握り飯を詰め、竹の水筒を腰へ下げた。
旅というほどの支度ではない。
一歩。
また一歩。
山道へ向かって歩いていった。




