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第30話 宝の山と、金色の瞳







「一生分以上のミクイバを見た気がするわ……」



 アンジュさまの足が止まった。あんなにも黄緑色のミクイバが絨毯のように敷き詰められていたが、ある一線を越えたらミクイバはおろか、植物ひとつも生えていなかった。



「前に来た時は、あそこまでミクイバは生えてなかったんだがな」


 オースティンはボソッとそう零しながら、空を拝む。

 いや、皆が空へと顔を向けている。


 ボクもその中のひとりになった。


 その大きさにボクは愕然を隠せない。

 威風堂々と君臨している天の座。

 白い槍とその槍に突き刺さるように存在する座。


 天から地へと突き刺しているのか。

 地から天へと伸びているのか謎である。


 この世が作り出したものとは思えない大きさに、息を呑む。



「こりゃあ、たまげた。遠くからしか俺は見たことが無かったが、こんなにデカイとは思わなんだ」



 マリオは手で日差しを作り、そびえる槍を見上げた。巨人のマリオが槍の前に立っているのに、物凄く小さく見えてしまう。相当な太さだというのが見て分かる。



「ここが……天の座、なんだ」



 この一帯を見渡すと、まだ成長途中の小さい白い槍がごまんと立ち並んでいる。

 アンジュさまも同じくらいの高さからボクと背丈が同じくらいのもの、そして生まれたてのような小さい槍まで幅広く存在していた。



「あの石はここで拾ったんだ」


 オースティンは地面に転がっている白い石を手に乗せ、アンジュさまに見せた。


 確かにあの夜に見た石と瓜二つ。



 ボクの胸が高鳴りを覚える。走り出しそうな衝動を抑え、ボクはアンジュさまに声を掛けた。


 そんなボクの声もなんだか弾んでいる。


「アンジュさま、確かめたいので下ろして貰ってもいいですか?」


「え?下りるの?」



 アンジュさまは眉根を寄せ、渋られてます。

 どうしても、アンジュさまはボクを下ろしたくないようです。



「目を離したら、変なのに食べられちゃう気がするのよ。三度目の正直的な予感がしてならないわ」


「で、でも、アンジュさま……どうしても、確かめたいんです」


「うーん。あの物陰から変な怪物が来て、ガブッてなったらどうするの?」


 アンジュさまは、子どもに諭すかのようにボクへと説得を試みる。人差し指を色んな所に向けて、ボクを納得させようと仕向けられた。


 それでも、ボクは。



「もし、そんなことになってしまったら、絶対食べられないようにしますので……お願いします。アンジュさま」


 アンジュさまの肩に膝をつけ、懇願するように手を擦る。


 ボクの引き下がらない姿勢にアンジュさまは、睫毛を下ろした。



「もぉー仕方ないわね。私が見えるところまでだからね!」



 アンジュさまは溜め息をひとつ吐くと、レモンデの匂いが残る掌がボクの前に現れる。


「約束だからね?」


「はい!アンジュさま、ありがとうございます!」



 ボクはアンジュさまの掌に飛び上がった。




 地へと下りたボクは、一目散に白い槍へと走った。ボクより少し小さい高さ。そっと手に触れてみる。


 近くで見ると、真っ白ではなくて少し灰色が入っているようだ。ボクは剣に手を伸ばし、剣を抜いた。


 ボクは切先を向け、剣に体重を載せ槍目掛けて突く。


 カチン。


 槍は小気味の良い音を出す。

 突いたところから白い粉が舞った。



「やっぱり。この槍のようなもの全部ってこと、だよね」



 ボクはぐるりと頭を巡らせた。



「これがあれば──!!」



 柄を持つ指先が白へと変わる。ボクは満ち溢れる気持ちを抑えられず、後ろへと振り返り声を打ち上げた。



「アンジュさま!!石灰石です!!!これがあれば、家が出来たようなものですよ!!!」


「え?何?ちょっと、ジェイス。なんて言ったの?」


 アンジュさまは耳に手を当ておられます。


「家が完成させられます!!早く持ち帰りましょう!!」


「ん?よく聞こえないけど、うん。分かったわ」



 アンジュさまは親指を上げながら、腕を前に突き出されました。





「───若いな、アイツら」


 マリオの目元が緩む。マリオとその様子を見ていたオースティンはフンと鼻を鳴らした。


「親と子どもみたいもんだ」


「確かにな。だが、男と女だから、分か───」


 オースティンの鼻息が荒くなるのを感じたマリオは無理矢理、話題を変えようと頭を巡らせる。


 こういう時ほど良い話題は見つからないもので、マリオはオースティンを監視しながら、口に手を添えて隣にいるペンドラゴンへと話し掛けた。


「ぺ、ペンドラゴン。何でもいい、助けてくれ!」


「…………」


「おい?!ペンドラゴン!」


 反応が無い。マリオはペンドラゴンへと顔を向けた。


「あ?!ペンドラゴン?!?」


 マリオは空気を歪ますほどの大声を出す。そこで寝そべっていたはずのペンドラゴンの姿が忽然と消えていた。







 ガシ。

 ────ガシ。



 重い足は、行く先も目的もなく彷徨う。

 垂れた首を上げる気にもならない。


 ただ、足を動かすだけ。


 金色の瞳には濁り、光を宿すことも反射させることもできない。



 空を揺らす音。

 空を切り裂く音。


 風が変わる。

 羽音ともに我へと注ぐ、身を引裂きそうな強き風。



 見覚えのある大きい影。


 我は芯のない首を擡げた。



 見下ろすように大樹に降り立ったモノ。

 我をまとう空気がより一層冷たく尖る。


 鋭利な爪が大樹の枝へと食い込んだ。



「───なぜ、戻った?」



 重苦しく低い声が、我の耳へと届く。

 身が怯む。

 弱い己が逃げろと告げる。


 怖い。恐い。コワイ。



「─────我が、息子(アルヴェイン)よ」



 我と同じ金色の瞳が心臓を貫いた。



お読み頂きありがとうございます。

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次回もお楽しみに☆

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