表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/34

第20話 美魔女の知恵と大量生産







 ボクの足元の小石が暴れ出す。

 地響きが大きくなる。


 アンジュさまが戻ってきた。



「ジェイス!これ!!」



 彼女が手にしているのは……



「蔓……?」


「そう。それと……」


 アンジュさまは蔓をボクの傍らに置くと、ボクを跨ぎその先の森へと入る。


「……アンジュさま?」


 ボクの頭では、まだ理解出来ていない。


 アンジュさまはしゃがみ込むと、よく目を凝らして木の幹を確認している。



「この二本の木は、素直に生えているし……大きさも同じくらいね。これに決めたわ」


 アンジュさまはそう呟くと、木の根元を指を巻き付け、肘を引く。ポンッと木が引き抜かれた。


 まるで、草むしりをしているように軽々と。


 同じようにして、また一本引き抜くと枝をポキポキと折り、根っこの部分も綺麗にしてしまう。


 手軽にやってしまうアンジュさまにボクの目は釘付けになってしまった。



「アンジュさま……手際が良いですね」


「ガルガァ?!」

(そこなのか?!)



 アンジュさまが丸太を抱え、こちらに戻って来る。

 地面に丸太を立て、自信に満ちたお顔を見せるアンジュさま。


「これで、問題解決よ」


「ど、うするんですか?」


「まあ、見てて」



 アンジュさまは粘土を軽く取り、地面に落とす。

 粘土の脇に一本ずつ丸太を置くと、


 ベチャ、ペタ、ぺたっ。


 表面を丸太に合わせて均していく。



 あ……これ、なら!



「均等の高さになりますね!!」


 ボクは咄嗟に、声が出てしまった。

 アンジュさまの口が弧を描く。


「そしたら……こうするの」


 手前の丸太を手に取るアンジュさま。

 平になった表面に丸太をコロコロ乗せると、アンジュさまはボクへと視線を移した。


「幅はこれで、良いかしら?」


「は、はい!丁度いいですね」


「丸太一本分ね。ペンちゃん、そこの蔓を川の水で濡らしてきて貰える?」


「ガルッカァ」

(仕方ないな)


 ペンドラゴンは鶴を手にすると、翼を羽ばたかせると、天へと舞い上がった。


「アンジュさま、蔓をこれからどうするんですか?」


「これを切るのよ」


「切れるんですか?」


「まあ、見てて」


 風が髪を攫う。視界が暗くなり、影が大きくなっていく。


 影は消え、風が止んだ。

 ペンドラゴンが顔を突き出す。

 その口にはあの蔓が。

 水を含んだ蔓が雫を垂らし、地へと滲みを作る。


「ありがとう。ペンちゃん!」


「ガルッルルア」

(こんなことで、礼などいらぬ)


 アンジュさまはペンドラゴンから蔓を受け取る。


「え、手伝ってくれるの?じゃあ、端を持っててね」


 持っていた蔓の端をペンドラゴンへと向けると、ペンドラゴンはなかなか手にしない。


「グアッ?ガリュウウウ」

(なんだと?そんなこと言ってない)


「ピーンと張ってね。ここ重要だから!」


 アンジュさまの目が光り、ペンドラゴンの肩が跳ねた。ペンドラゴンは蔓の端をガブッと歯で噛む。


「じゃあ、ペンちゃん。そのまま丸太に沿って、蔓を地面まで落として」


 口が使えないペンドラゴンは首を一度振ると、アンジュさまの言うように地へと首を落とす。



 ズッ、ス─────ッ。


 ボクはその様子を食い入るように眺めた。


「ペンちゃん、最後までやっちゃいましょう」


 ペンドラゴンは大きく鼻から息を吐き出した。


 丸太を転がし、蔓を落とすを数回繰り返す。

 アンジュさまが、丸太を粘土から外した。


 平らだった粘土が、数十個の長方形に切り出されている。


「上手くいったかしら」


 アンジュさまがそのひとつ、手に取りボクに見せた。

 試作品より何百倍もある大きさ。

 アンジュさまの手のひらより、ひと回り大きいサイズのレンガ。


 ボクは瞬きを忘れ、そのレンガを凝視する。


「……本当に切れた」


「私も、やる時はやるでしょ?」


 生意気そうにそう仰った後、くしゃっと顔を歪ませ笑うアンジュさま。



 ……おみそれしました



「いや、凄いです。これなら一気に数が出来ます!!」


「ふふっ。本当にそうね」


「ボクも、負けてられないです」



 拳に力を込めると、ボクは粘土の山へと向かった。









 夕陽がレンガを朱色へと染め、広い大地にたくさんのレンガが並んでいる。


 腰を伸ばしながら、今日の成果を見渡す。

 視界いっぱいのレンガ。粘土山は跡形も無くなっていた。


「……藁山も小さくなったな」


 泥だらけの手を腰に添える。背後に気配を感じた。振り返るとペンドラゴンがボクに投げ掛けている。


「ペンドラゴン?どうかした?」


 ペンドラゴンは口を窄み、息を吹く動作をした。



 あ、乾燥させるってことかな



 ボクは首を横に振った。



「今回はこのまま乾燥させよう。サイズも大きいし、何より……朝から働いているから疲れたでしょ?」


「ガルルルルア」

(まだ行けるぞっ)


 吼えるペンドラゴン。だが、疲労の色は隠せていない。目に覇気がない。



「焼き作業の方で、頑張ってもらうから」


「グリュウガルグルゥ……」

(ジェイスがそう言うなら……)


「じゃあ、今日はここまでね。そしたら……」


「そしたら……?」


 アンジュさまはキリッと眉を吊り上げ、ある方向に指を差した。


「身体を洗うのよ!!」


 ボクの身体が浮いた。

 視線がどんどん高くなる。


 気づけばボクはアンジュさまの肩に乗せられた。その隣にはペンドラゴン。



「この前みたいに落ちないよう、しっかりと掴まってなさいよ!」



 ボクは黙って頷いた。







 シャツを脱ぎ、川辺からボクは川へと触れる。

 指先に当たる流れ。


 泥だらけの腕を川底まで浸す。

 水の冷たさが肌を突き刺してくる。



 バシャバシャと冷たさなど気にしないペンドラゴンは全身で水浴びを満喫している。



 川の冷たさは、平気なんだ



 そう考えていると水飛沫が飛んで来た。

 犯人は川の中にいる羽トカゲ。



「グルカアルルカァ」

(ジェイス、何をしてるこっちに来い)



 びっしょりと濡れた髪。

 上半身は愚か、ズボンまでビショビショになった。


「この───ッ!」


 ボクは構わず、そのまま入水した。

 逃げるペンドラゴンを追いかけ回す。水の冷たさなどもう頭には無い。ただ、夢中で羽トカゲを追い掛けた。





 ボクを見つめる視線に気づき足が止まった。

 その視線の主は、アンジュさま。

 川べりに座り、頬をに当てている。


 ボクの視線に気づいたアンジュさまは、そっぽを向かれた。


 その耳先は淡く色が差している。



 ……あれ?アンジュさま?



 ザザッ───!



 滝に襲われ、視界を奪われる。

 ボクはイタズラドラゴンへと足先を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ