第16話 ボーイフレンド……?焦る美魔女さま
マリオさんと別れたボクたちは、目的だった買い物を始めた。
よく考えたら、ボク……
異性と買い物したこと、
───初めて、かも
「はい、お米だよ」
ボクには一生、持てはしない量のお米をアンジュさまは軽々と受け取った。
「ありがとう、オジサマ」
「おう!」
「じゃあ、ビッグドナルードのジャーキーで良いかしら」
ギラッと目が輝くオジサマ。
口をへの字に曲げ、アンジュさまが差し出すジャーキーを値踏みしているようだ。
「うむ。これじゃあ……」
オジサマの前髪しかない髪が揺れた。
アンジュさまはゴクリと喉を鳴らす。
「────もう少し、お米をあげよう」
オジサマの目元が緩む。
アンジュさまの肩の力が抜けた。
「もう、驚かせないでよ。オジサマ」
「フフッ、ドキドキも大事じゃろうて」
「何それ、そんなドキドキ要らないわよ」
アンジュさまとオジサマのやり取りを見ながら、ボクはボソッと声を上げた。
「……お金じゃ、ないんですね?」
「は?……“お金”とな?なんじゃそれ、美味いのか!」
「いや、食べ物じゃないですよ」
「は?……お前、何を言っとる?」
「え?」
「取引はな、“物なら物、食い物なら食い物”で返すのが基本じゃろうて」
「え……」
「それと、気前じゃ!」
鼻を鳴らし、オジサマはどんと胸を叩いた。
「……勉強に、なります」
ボクは何度も頷いた。
「して、アンジュちゃん。そこのゴマ人とはどういう関係なんじゃ?」
片眉が上がり、大きい瞳がボクへと興味深そうに近寄ってくる。
「ゴマって……。この子はジェイスよ。最近、私と一緒に暮らしてるの。ちなみにこの子も」
肩に乗っているペンドラゴンを指差すアンジュさま。
「へぇ。ボーイフレンドってやつかい?」
ニタニタ笑いながら、ボクたちふたりを交互に見やるオジサマ。
その言葉にボクの顔が熱を上げ、アンジュさまは必死に手をブンブン振り回されております。
「ち、違うから!?この子は、そうね。そうよ、ペットなの!!」
早口言葉でまくし立てたアンジュさま。
「ペットぉ?そっちの方が変じゃろ」
更にニヤニヤするオジサマ。
「もう、この話はお終い!これ、ジャーキー。じゃあね、オジサマ」
お口を尖らせ、ぷぃとそっぽ向くアンジュさま。
オジサマのもとを神速の速さで立ち去った。
かなり遠いところから、オジサマがボクたちに声を投げている。
アンジュさまの電光石火の歩みは止まるつもりはないご様子。
「……ジェイス」
「なんでしょう、アンジュさま?」
「やっぱり、なんでもない!」
アンジュさまは、前の一点を見つめておられます。
少しお顔が赤いのは夕陽のせい、でしょうか?
ボクはしばらく、その横顔を眺めていた。
ⅩⅩⅩⅩⅩ
「ああ、行っちまった……。どうするべぇ」
手に持ったアンジュに渡す米を見やった。
等のアンジュは遥か先を行っている。
「ワシの足じゃ、無理か……」
諦めようとしたところに懐かしい顔があった。
「おーい!オースティン!!」
思わず、声を掛けた。
オースティンの足が止まる。
「ん?……オジサマじゃねーか!」
顔を輝かせるオースティン。
その顔は、
「娘そっくりじゃな」
手を振りながら向かうオースティンにオジサマは手に持っていた米を差し出した。
「悪いが、これをアンジュちゃんの所に届けてくれるか?」
その名にオースティンの眉が跳ね上がった。
「アンジュ……に?」
「ああ、そうじゃ。さっきここに来たんだが、ちょっと色々とあってな」
ウシシと口に手を添えて意味ありげに笑うオジサマ。
「なんだよ色々って?」
「内緒じゃ」
「はぁ、教えてくれねーのかよ」
ため息を吐くと、オースティンは頭を搔く。
「見たら、ビックリするじゃろな」
腕を組みうんうんと首を立てに動かすオジサマ。
「ますます、気になるのだが」
フンと鼻を鳴らし、オースティンを一瞥する。
「じゃあ、よろしく頼むぞ。オースティン」
それだけ言ってオジサマは、他の客の相手を始めた。その光景をしばし観覧すると、オースティンは踵を返した。
「んじゃ、久しぶりに、娘に会いに行くとしますか」
オースティンはアンジュたちのいる方角へと足先を向けた。
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