第8話 モンスター狩りの第三試験パート2
読者の皆さん、こんにちは!どうぞお楽しみください!
その頃、魔法をうまく制御できなかった生徒たちは、無防備なまま自由落下するしかなかった。
悲鳴が空に響く。
「うわぁぁぁ!」
「助けて!」
「無理ぃぃぃ!」
生徒たちの腕は虚しく空を切り、足は無意味に蹴るだけだ。風が髪を激しく打ち、涙が横に流れていく。
それを見たロジャーは即座に動いた。力強い一跳びで、数人の生徒を自分の近くに集め、散り散りにならないようにした。
「お前たち!しっかり掴まれ!」
「は、はい、ロジャーさん!」
ロジャーの腕にしがみつきながら、生徒たちは必死にバランスを保とうとする。
一方、ヴァニアが手を掲げた。
「ウィンド・ブロワー」
下方から巨大な風の流れが生まれ、生徒たちの落下速度を緩め、彼らを無事に着地させた。
「ありがとうございます、ヴァニア先生…」
「助かった…」
「足が震えてる…」
「当たり前だろ、さっきまで死にかけてたんだぞ」
地面にぐったりと倒れ込む者、立つこともできず這いつくばる者、泣き出す者――反応は様々だった。
キキ教授はゆっくりと浮かびながら降りてきて、満面の笑みで彼らを見つめた。
「ぷうぷう〜」
全員が即座に嫌な予感を覚えた。
「自力で着地できなかった者は…マイナス5点」
「ええ?!」
「ひどいよ!」
「そうだそうだ!」
「っていうか、いきなり俺たちを飛ばしたのキキ教授じゃないですか!」
抗議の声が上がるが、キキは首をかしげるだけだ。
「は?何か言ったかしら?」
その笑みに、全員が即座に口を閉ざした。
「はい、じゃあ第三試験頑ってね〜死なないように〜」
---
✦ 森の中 ✦
しばらくして―
ウリンとリナリアが更に奥へ足を踏み入れたその時―
ガサッ!
茂みが揺れる。鳥たちが一斉に飛び立つ。
「…警戒しろ」
息を殺し、ゆっくりと歩を進める。静まり返った森に木漏れ日が差す――だが、その静けさこそが不気味に感じられる。
シュッ!
左方向から矢が放たれた。
ウリンは反射的にリナリアを引き寄せてかわす。矢は背後にあった木に深く突き刺さった。
「リナリア、大丈夫か?」
「ええ…私は平気。ありがとう、ウリン」
リナリアはその矢を引き抜こうとする。しかし矢は深く突き刺さりすぎていた。
「…待って。この矢…誰かが仕掛けたものよ」
「ゴブリンか?」
「ゴブリンが弓を使うはずないわ。これは…誰かの罠かもしれない」
リナリアの表情が曇る。ウリンは周囲を観察する――木々の隙間、茂みの陰、何かがそこで動いている。
二人が再び動き出す間もなく、周囲の茂みが激しく揺れ始めた。
数匹のゴブリンが四方から現れる。
「グギャギャ!」
「グギャ!」
棍棒を持つ者、石を投げる者、牙を見せて嗤う者――どれも小柄だが、数は多い。
合図もなく、ウリンとリナリアは背中合わせに立った。
「何匹だ?」
「…七、八匹。二十はいないわ」
「わかった。無理するな」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
ゴブリンが一斉に襲いかかる。
ウリンは一本の槍を受け止め、弾き返し、広範囲の一振りで二匹のゴブリンを吹き飛ばした。
「グギャア!」
リナリアは空中に氷の結晶を作り出し、指先で操る。
「凍りなさい――穿て!」
数匹のゴブリンが瞬時に凍りつく。鋭い氷の破片が飛散し、魔物たちを粉々にする。
「グ…ギャ…」
氷の破片が地面に散らばる。残ったゴブリンたちは後退する――だが逃げはしない。何かを待っているかのように。
「…まだ何かいるのか?」
「わからない。でも―」
リナリアの呼吸が次第に重くなっていく。
「まずい…さっきの二次試験で魔力を使いすぎた…」
リナリアは息を切らせ、肩が上下する。汗がこめかみを伝う。
「リナリア、無理するな。ここは俺が―」
「大丈夫…まだ戦える…!」
突然―
シュッ!
一本の矢が一直線に飛んでくる。
ウリンが反応する――だが遅かった。
次の瞬間、矢はリナリアの肩に突き刺さった。
「くっ…!」
彼女の体がよろめく。リナリアの息遣いがかすかに聞こえる。
「リナリア!」
ウリンが彼女を支える。リナリアの体は熱く、震えている。
「大丈夫…矢には毒はないわ…でも魔力がもうほとんど残っていない…」
血が――肩からゆっくりと流れ出る。
温かい血がウリンの手を濡らす。
赤い。
その色を見た瞬間――
あの記憶が、古い傷口が引き裂かれるように蘇る。
---
✦ 十年前 ✦
孤児院の夜は静かだった。冷気が骨の髄まで刺す。
幼いウリンは毛布にくるまり、ぐっすり眠っている。隣ではマリアが体を丸めていた。
タッ。タッ。タッ。
廊下を急ぐ足音。
バタン!
扉が開く。
「子どもたち!起きなさい!早く!」
青ざめた顔のシスター二人が駆け込んできた――シスター・リリとシスター・マルタだ。リリの声は恐慌に満ち、マルタの手は震えている。
「…え?何?」
「どうしたの…?」
子どもたちが一人また一人と目を覚ます。眠そうな顔で、まだ状況が理解できていない。
「外へ!外を見てごらん!」
誰かが窓を開ける。
ドォォン!
衝撃音と同時に地面が揺れる。
窓の外では――二本の角を持つミノタウロスが暴れ回り、家々を破壊していた。壁は崩れ、屋根は飛び散り、人々の悲鳴が夜を満たす。
「いやああ!」
「早く逃げて!」
「外へ出ろ!」
パニックは瞬く間に広がる。子どもたちは叫び、廊下へと走る。
「ウリン!マリア!こっち!」
リリの声が響く。幼いウリンはマリアの手を握り、走る。
長い廊下は走る子どもたちで埋め尽くされる。足音が轟く。誰かが転び、後ろの者が衝突し、悲鳴が連鎖する。
幼いウリンはつまずいて転んだ。
「痛い…!」
「ウリン!」
マリアは振り向く。だが人の波が彼女を押し流し、止まれない。
「ウリン!早く起きて!」
遠くからリリの声が聞こえる。
その時――
外の窓の向こうから、一匹のミノタウロスが彼らを見つめていた。
低く唸り、頭を下げる――突撃の態勢だ。
「来る…!」
ドォォン!
壁が破壊され、石の破片が飛び散る。
「フォッグ・フィールド!」
リリが叫ぶ。濃い霧が瞬時に廊下を満たす。
「みんな!そのまま進め!出口は正面だ!」
子どもたちは霧の中で手探りで進む。泣き声、足音、何かが崩れる音――すべてが暗闇の中で混ざり合う。
ようやく、子どもたちは一人また一人と外へ出る。しかしウリンとマリアは霧の中でとはぐれ、取り残されていた。
「マリア…!」
「ウリン…どこ…!」
互いに手を伸ばすが、触れ合えない。
激しい咆哮。壁が破壊される。ミノタウロスがすぐ近くにいる。
「こっち!」
突然、リリの手が二人を掴んだ。力強い引き寄せ、抱き寄せる。
「リ、リリ姉!」
「静かに!私についてきなさい!」
リリは二人を牧師の部屋へと押し込み、古びた木製のクローゼットを開けた。
「ここに隠れているのよ。声を出しちゃだめ。わかった?」
「リリ姉は?」
「すぐに戻ってくるから」
「約束…?」
マリアが震える声で尋ねた。
リリは優しく微笑んだ。濡れた髪を撫でながら、そっと囁く。
「約束よ」
扉が閉められる。
鍵のかかる音。足音が遠ざかる。
暗いクローゼットの中――二人は息を殺し、身を寄せ合う。
ドスッ。ドスッ。ドスッ。
何かが外を歩いている。重い足音。床が軋む。
バキッ!
突然――角がクローゼットの扉を貫いた。
木片が飛び散る。巨大な指が隙間から入り込み、探り回す。
二人は隅っこに縮こまる。口を押さえ、息を殺す。
やがて、その足音は遠ざかっていった――今度こそ本当に去っていった。
どれだけの時間が経っただろうか?
マリアが小さな穴から外を覗く。廊下は静まり返っている。霧も薄れ始めている。
「ウリン…今のうちに逃げよう」
「でもリリ姉が―」
「ここは安全じゃない。先に逃げるんだ」
マリアが先に外へ出て、手を差し伸べる。
「ウリン、早く!」
ウリンは這い出る。二人は崩れた壁の隙間を抜け、建物の外へと向かう。
外は静かだ――しかし遠くで火の燃える音が聞こえる。
「走ろう!」
「うん!」
二人は手を繋いで走り出す。
その時――
「ギャアアア!」
背後から咆哮。
さっきのミノタウロスが戻ってきて、マリアを見つけた。
頭を下げる。突進する。
「マリア!」
巨大な手がマリアを掴む。強く。容赦なく。
「きゃああ!」
「離せ!マリアを離せ!」
ウリンは叫ぶが、体が動かない。足が凍りついたように動かない。震えが止まらない。
「ウ…ウリン…」
マリアの声が途切れる。
その時――
水が炸裂した。
ドォォン!
シスター・リリが飛び込み、水の魔法が魔物の頭を包み込む。泡が渦巻き、視界を奪い、呼吸を不可能にする。
「離し…なさい…!」
リリの声は必死だ。マリアの体が放され、地面に落ちる。
「マリア!」
ウリンはようやく我に返り、駆け寄る。
「マリア!大丈夫か?」
「わたし…わたし…」
マリアは無事だった。でも――
凄まじい殺気が空気を震わせる。
リリは立ち上がり、水の障壁を作り出す。透明な膜が三人を守る。
「後ろに下がっていなさい!」
ドォン!
何かが障壁を叩く。ひび割れる。
また――ドォン!ドォン!
攻撃は止まない。
そして――
建物の天井が崩れ落ちる。
舞い上がる粉塵の中、巨大な影が現れる。
そのミノタウロスは先程のとは比べ物にならない。二倍は大きい。目は血のように赤く、その唇には残忍な笑みが浮かんでいる。
彼らのリーダーだ。ゆっくりと三人の方へ歩いてくる。
その存在だけで空気が重くなる。息をするのも苦しい。
「リ、リリ姉…!」
リリは歯を食いしばり、障壁を維持する。しかし――
ドォォン!
最後の一撃。
障壁が粉々に砕け散る。
リリの体が力を失い、地面に崩れ落ちる。
赤い色が床を染める。
「リリ姉!」
ウリンが走る。マリアも隣に倒れ込む。
リリの顔は青白い。唇が震える。
「だいじょうぶ…私は平気…あなたたちは…生きなさい…」
「嫌だ!姉も一緒に!リリ姉!」
涙が溢れる。止められない。
「ウリン…マリア…強く生きるのよ…生きて…」
「いやああ!」
リリの手が、ゆっくりと、離れていく。
リーダー・ミノタウロスの影がさらに近づく。
気づけば、何十匹ものミノタウロスが彼らを取り囲んでいた。
霧が再び現れる――だがリーダーの一息で吹き散らされる。
「神よ…この子たちをお守りください…」
リリの声は震え、そして消えた。
マリアが立ち上がる。
震える足で、前に進む。小さな体がウリンをかばう。
「ウリン、泣かないで…」
声は震えている。しかしその中に力がある。
小さな手がウリンの手を握る。
「大丈夫。私がここにいるから」
その温もりだけが――唯一の現実だった。
---
続く
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