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第4章:母親たちの杯、父親たちの盃③
大陸暦1275年9月1日
昼と夜、それぞれの時間帯に、それぞれの家庭人たちは自分たちの交流の場を持ち、人間らしい悩みや営みの中で生きていた。世界に名だたる帝国を築き上げた帝国人たちの、あまりにも人間味にあふれた一日であった。
それだけでも、後世の歴史書がいかに彼らの人間臭さを切り捨てて叙述しているかを示すには十分である。彼らは確かに偉大な帝国を築いた人間だったが、同時に、ごくありふれた家庭を持つ一人の人間でもあった。その事実を排除して彼らを語ることは、決して許されるべきではない。
だが、この光景は、あるいはその冷酷さをもって、歴史に刻まれるべき場面だったのかもしれない。
なぜなら、この日、それぞれの場に集った彼らが、こうして全員そろうことは、これを最後に二度となかったからである。
一人。
そう、この交流の輪の中にいた、たった一人だけが――
数か月後、命を落とすことになる。




