易者と転生者(完)
こんにちは、易者です。王国に激震が走りました。カルロス・ジークハルト殿下が王太子(王位継承権)を剥奪、男爵に降格、辺境の領地へ左遷の発表を出されましたが、私たち下々の者たちは誰が王太子になろうが、どうでもいいことです。それと同時期に目出度いニュースもあった。何と公爵令嬢のエミリア・レッドハートと平民のホリー・アージェントが同性結婚をしたことである。貴族と平民の結婚、しかも同性婚は異例中の異例であり、下々の者たちはその話で盛り上がった。この結婚が凄すぎて、すっかりカルロスのことは世間から忘れられました。そんなある日のこと、私の下へ時の人であるエミリア・レッドハート公爵令嬢が尋ねてきたのである
【エミリア・レッドハート】
「易者さん、お久しぶりです。幼少の頃にあった時以来ですね。」
【易者】
「えぇ、あの時の可愛らしいご令嬢が、今では見目麗しいご令嬢に成長なされているのですから。」
【エミリア・レッドハート】
「ふふふ、お世辞でも嬉しいわ。」
【易者】
「それでエミリア様は何用で参られたのですかな?」
【エミリア・レッドハート】
「えぇ、ホリーが貴方の世話になったと聞き、御礼をしに参りました。」
【易者】
「いいえ、私は彼女の相談をしただけですので、御礼をするほどではありません。それに御礼なら手紙で受け取っていますので。」
【エミリア・レッドハート】
「そうでしたか。余計なお節介でしたわね。」
【易者】
「いいえ、こうしておいでくださっただけでも光栄です。」
【エミリア・レッドハート】
「ふふふ、ありがとうございます。」
【易者】
「御礼でしたら1つ尋ねてもよろしいでしょうか?」
【エミリア・レッドハート】
「何かしら?」
【易者】
「貴方は誰ですか?」
私が率直に尋ねたら、空気が一瞬して変わった
【エミリア・レッドハート】
「何ですか?急に。」
【易者】
「失礼、正確に言えば、エミリア・レッドハート嬢の肉体を借りている本当の貴方です。」
私が言うと、エミリア嬢は驚きの表情を見せた。そして時間が停止したように私たちは身動きせずにいたが・・・・
【エミリア・レッドハート】
「驚いたわ、私の事を見破るなんて。いつから分かったのですか?」
【易者】
「分かったのは貴方と初めて対面したときです。貴方を見たとき、肉体と魂が別人でしたので。」
【エミリア・レッドハート】
「最初からですか。やはり本物は違いますね。」
【易者】
「それで貴方は何者ですか?」
【エミリア・レッドハート】
「私の事を話す前に、まずこの世界について話しますね。」
エミリア嬢が話したのは、ここは乙女ゲーム「白百合のソナタ」という架空世界で、本来のエミリア・レッドハートは性格ブスな悪役令嬢で卒業パーティーで断罪される役割なのだという。エミリア嬢の中にいる人物はニホンという国の国民で、事故に巻き込まれて死亡し、この世界に来たという
【易者】
「なるほど、貴方はエミリア嬢に課せられた呪縛から解放するために奮闘したわけですね。」
【エミリア・レッドハート】
「はい、私は生き残るために必死でやってきました。カルロス殿下との婚約も辞退したのも生き残るためでした。」
【易者】
「話を聞くと貴方のいう乙女ゲームの世界と私たちのいる世界は似て非なるものですね。」
【エミリア・レッドハート】
「えぇ、私自身も予想していなかったことが起きてて、途中で混乱することもありました。」
【易者】
「1つ訂正しますが、ここは乙女ゲームの世界ではなく、現実の世界です。その乙女ゲームの世界も所詮、人が作った絵空事にすぎません。」
【エミリア・レッドハート】
「そうですよね。今にして思えば、そうかもしれません。」
【易者】
「貴方がここにいるということは本来のエミリア嬢はどうなったのでしょうね。貴方のように1度死んで、別の人物に入れ替わっている可能性があるでしょうね。」
【エミリア・レッドハート】
「考えたこともありませんでした。生き残るのに必死で、そこまでは考えませんでした。」
【易者】
「貴方はエミリア・レッドハートとして乙女ゲームの呪縛から解放され、新しい人生が待っているのです。それに貴方は1人ではないのですから。」
【エミリア・レッドハート】
「なんか、その、ありがとうございます。何かスッキリしました。エミリアとしてではなく、私自身を見てくれた貴方に感謝しますわ。」
【易者】
「それが私の仕事ですから。」
【エミリア・レッドハート】
「そうですか。易者さん、1つ聞いてもいいですか?」
【易者】
「何でしょう?」
【エミリア・レッドハート】
「易者さんは幸せですか?」
【易者】
「えぇ、私が生きてきた中で、平和に過ごせることが私の幸せです。」
【エミリア・レッドハート】
「そうですか。私もホリーと一緒になれて幸せです!」
【易者】
「そうですか。結構!」
やはりこの世は面白い。事実は小説よりも奇なり、正にその通りです。もし私が乙女ゲーム「白百合のソナタ」の人物なら、さしずめ、物語を円滑に進めるイレギュラーでしょうね
皆様の応援のおかげで無事完結できました。他の作品も是非ご覧ください。




