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第39話 がーるずとーく!

「今日はガールズトークをしたいと思う!」


 私は部室にいる面々――といっても、六花君と亜衣君に私を含めた三人だけど――に向かって宣言した。

 ちなみに文隆君も直重君も、今日は用事があって部活に出られないらしい。


 ともあれ、本日の文芸部は我々女子しかいないので、せっかくだからガールズトークという物をしてみようと思い立ったわけだが……。


「がーるずとーく?」


 六花君はきょとんと首を傾げる。


「でゅふふ……。はぁ……はぁ……」


 亜衣君に至っては、話を聞かずに何かを読んで息を荒くしていた。

 亜衣君、私が話をしているのだから、せめて話を聞いてほしいのだが……。


 私が内心でため息をついていると、亜衣君が読んでいた本から顔を上げて訊いてきた。


「ぶ……、部長……。ガールズトークって……?」


 一応、聞いていたみたいだったが、しかしガールズトークを知らないのか……。


「ふむ……。そうだな……。まぁ、基本は女子たちの女子たちによるトークをガールズトークというらしいが……」

「へぇ~……」

「まぁ、とにかく始めてみようじゃないか」


 私は居住まいを正すと、軽く咳ばらいをした後に改めて宣言した。


「第一回、文芸部ガールズトーク!」




◆◇◆



(以下、次のように登場人物を表現します。部長:瑞 六花:六 冨和ちゃん:亜)


瑞「さて、ガールズトークを始めようじゃないか」

六「ところで部長さん、具体的にどういう内容の話がガールズトークなんですか?」

瑞「さぁ? とりあえず、こうやって我々がきゃいきゃいしゃべっていたらいいんじゃないか? ガールズトークというくらいだ。それでいいのだろう?」

六「部長さんも知らなかった!?」

亜「ぶ、部長……。ガールズトークは、れ……恋愛の話とかそう言うのをする……らしいです……」

瑞「ふむ。恋バナか……。六花君は彼氏はいるのか?」

六「いませんけど?」

瑞「亜衣君は?」

亜「でゅふふ……。リア充は爆発すればいい……」

瑞「好きな人もいないのか?」

六「いませんよ?」

亜「に、二次元なら……」

六「そう言う部長さんはどうなんですか?」

瑞「彼氏もいなければ好きな人もいないな」

瑞「………………………………」

六「………………………………」

亜「………………………………」

瑞「終わってしまった…………………。私たちに恋愛トークは無理だな!」

六「すいません……」

亜「でゅふふふふ……」

瑞「では気を取り直して次の話題! 化粧の話!」

六「しないです」

亜「右に同じ」

瑞「ですよねぇ~…………」

瑞「………………………………」

六「………………………………」

亜「………………………………」

瑞「早いよ!? 私達、トーク終わるの早いよ!?」

六「あう……、すいません……」

亜「現実(リアル)なんて……」

瑞「くぅっ!? 私達はガールズトークすらまともにできないのか!? いまどきの女子高生のはずなのに!?」

六「部長さん……落ち込まないで?」

瑞「六花君……、……そうだな。諦めたらそこで試合終了だな」

六「部長さん!」

瑞「六花君!」

亜「こ……これは!? 部長と六花先輩の百合展開キタ~~~~~~~っ!」

瑞&六「「おいコラ後輩!」」

亜「でゅふふ……、こ、これは妄想が止まらない! 鼻血が出そう! はぁはぁ……」

六「亜衣ちゃん!? 変な妄想しないで!?」

瑞「そうだぞ、亜衣君。私は攻められるよりも攻める方が好きだ!」

六「そう言う問題じゃないですよ!? というか、何の話をしてるんですか!?」

亜「西村先輩と里井先輩のカップリングについて、どっちが攻めでどっちが受けかという話……」

六「突然話題が変わった!?」

瑞「やはり私は直重君が攻めの方が合っていると思う!」

六「部長さんまで乗った!? もう話について行けないよ! そもそもガールズトークじゃないよ!」




◆◇◆




 六花君がツッコミ疲れて机に突っ伏してしまったので、我々は一度会話を中断する。

 さすがにボケに走りすぎたと反省した私は、鞄の中からマシュマロを取りだすと、六花君の口の中へ放り込んだ。


「はわぁ~……」


 幸せそうな顔をしながらマシュマロを食べる六花君を見ていると、私まで幸せになってくるのだから不思議だ。

 一方、亜衣君はというと、満足そうな笑みを浮かべた後、いつの間にか先ほどまで読んでいた本をまた読んでいた。

 本当にぶれないな君は……。


 私がコーヒーを飲んでいると、甘いものを食べて復活した六花君が、ゆっくりと体を起こしながら私に言う。


「部長さん……。やっぱり私たちにガールズトークは無理ですね」

「そうだな。それには全面的に同意するが、やはり年頃の女子としてはガールズトークの一つでもできんとな……」

「話は聞かせてもらいました!」


 突然、部室の扉を『ずばん!』と開けながら、生徒会長の真子が姿を現した。


「真子……」


 君がいきなり登場するから、後輩二人が驚いているではないか。


「あら。驚かせてしまったみたいですね。ごめんなさい。それはそれとして、瑞枝?」

「何だ?」

「話は聞かせてもらいましたよ。ガールズトークをしたいとか……」

「ああ。先ほど我々だけで試してみたが、無理だった」

「うふふ。そうだと思いました。時にみなさん、この後は時間はありますか?」


 突然の真子の問いに、私たちは首を傾げながらも頷く。


「まぁ! それならよかったです! 私がガールズトークを教えてあげます! それでは早速、私の家に来てくださいな」


 真子の突然の提案に戸惑いながらも、私たちは彼女に促されて帰り支度をすると、既に校門前に待機していた真子の迎えの車(リムジン)に乗ってそのまま真子の家にお邪魔することになってしまった。




◆◇◆




「…………あの、部長さん?」

「言うな、六花君。君の言いたいことは分かる」


 真子の家に到着した私たちは、そのまま彼女の家のメイドに案内されて客間に通された後、いつの間にかひらひらしたドレスに着替えさせられていた。

 美月家のメイド恐るべし。

 亜衣君は、涙目になりながら部屋の隅でガタガタ震えていた。

 うん、君の気持はよく分かる。私も正直怖かった。

 なにせ客間に入ると同時に大勢のメイドに群がられて、あっという間に服をはぎ取られて、いつの間にか今のドレスを着ていたのだ。

 悲鳴も抗議も上げる暇がなかった。


 私がメイドたちの動きを思い出していると、控えめなノックが聞こえた後に、真子が入ってきた。


「あらあら、皆さん。よくお似合いですよ」


 同じようにドレスに着替えた真子が優雅に微笑む。


「それはありがたいんですけど……、生徒会長さん……」

「何ですか?」


 六花君が動きにくそうにたちあがりながら(実際かなり動き辛い)、恐縮したように真子に疑問をぶつけた。


「この格好はどうしてですか?」

「あら、何事もまずは形からですよ、粟飯原さん」

「ちょっと待て、真子。私たちはガールズトークをしようとしているのだぞ? だというのにこの服装か?」

「何を言うのですか? 瑞枝……。ガールズトークに相応しい格好じゃないですか……」


 真子の当然とばかりの言葉に、そこはかとなく嫌な予感がした私は、恐る恐る真子に訊いてみることにした。


「真子……?」

「はい?」

「念のために訊くが、ガールズトークの意味をお前は知っているか?」

「何を当たり前のことを……。当然知ってますよ。ガールズトークとは親しい間柄の女子たちによる会話のことですよ」


 何だ、分かってるじゃないか。

 でも、だったらなぜこんな恰好を?


 ますます分からなくなった私が無言で問いかけると、真子はにっこりほほ笑んだ。


「だって、親しい女子たちは同じような格好をするものでしょう?」

「それはそうだが……。何もこの格好でなくても……。似たような恰好なら制服で十分だろう?」

「制服では味気ないじゃないですか。それに折角だから、みんなが普段しないような恰好で話すのも一興でしょう?」

「むぅ……。そう言われれば……」


 結局、真子に論破されてしまい、私たちは慣れない格好のままではあるが、美味しいお茶とお菓子をつまみながら、楽しく会話に華を咲かせた。




◆◇◆




 後日、文隆君と直重君にこの話をしたところ、二人に盛大に笑われてしまった。

 何だか悔しいので、今度、真子に頼んで二人にもドレスを着てもらうことにしようと思う。

 でゅふふふ……。

~~おまけ~~


文隆「…………」

直重「どうかしたのかい、文隆君?」

文隆「いや……僕、この物語の主人公だよな?」

直重「人はみな、自分の人生と言う物語の主人公だよ? もちろん、キミだって例外じゃない」

文隆「うん、お前に聞いた僕が馬鹿だった」

直重「おや、心外だね。それじゃ、僕の体に聞くかい?」

文隆「やめれ! 僕をそっちの道に引きずり込むな!」

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