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幻想冒険談 別世界譚 アドベント編  作者: いりゅーなぎさ
別世界譚 アドベント編
3/10

アームガンの少年

 ――夕刻。ギルテ、アドベントギルド。

 ギルドに戻ると、イリアは依頼の張り紙のある壁の傍に置いてある機械に手を入れた。

 機械がイリアの刻印を読み取ると、機械は三枚の金貨を吐き出した。

「――あら? もう依頼を終えたのですか?」

「あ、はい。とりあえず今日の宿はどうにかなりそうです」

 以龍は先ほどの機械を眺めていた。

「――ここに手を入れるのか?」 以龍が機械に手を入れる。

「あっ」 それを見て、なぜかイリアが声を上げる。

 機械が以龍の刻印の読み込む。そして、金貨が三枚。

「? なんでもう一度報酬が出てくるんだ?」

「あ、それは……」

「いえ、それで合っていますよ? たしか、今回のグリズリーの報酬は六千でしたから」

「? ……じゃあ、なんで二回に分けて出てくるんだ?」

「それは完了報告の際に、報酬折半にされたからなのでは?」

「折半? いや、俺は報酬なんて受け取る気は――」

「な、渚さん。と、とりあえずそれはもらっておいたらどうですか?」

「……そうか、お前の仕業か。――ったく、だからなんでこういうことをする?」

「ほ、報酬の折半はアドベントとしてのマナーなんです。今回渚さんは無償で傭兵を引き受けてくれたんですから、報酬くらいはきちんと受け取ってください」

「……受付さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

「はい、なんでしょう」

 以龍は受付カウンターにバスタードソードを置いた。

「これっていくらくらいする武器か、わかる?」

「そうですね、これくらいの品だと六~七千くらいが相場じゃないでしょうか?」

「――イリア。これはいくらした?」

「い、いいじゃないですか、いくらかだったなんて……」

「イ・リ・ア」

「……六千八百です」

 以龍は無言で三枚の金貨をカウンターに置く。

「――この金貨一枚が千の金ということは、あと三千八百分返さなきゃいけないわけか」

「ま、待ってください。それはあなたにあげたものです、その代金を受け取るわけにはいきませんっ」 金貨を以龍の方に押し返す。

「……なにを言っても無駄か」 このお金を返すのは無理と判断し、衣服のポケットに金貨を押し込んだ。

「――受付さん。新しい仕事を受けるにはどうすればいいんだ?」

「ちょ、渚さん。もうすぐ日が沈みます、今日はもう無理です」

「そうですね、あまりオススメは――」

 突如、以龍の刻印が青く光り、点滅しだした。

「!? なんだ、コレ?」

「メッセージコール? ――渚さん、刻印をこすってみてください」

「あ、ああ」 言われたとおり、軽く刻印をこすってみる。

『メッセージが一件あります』 光の文字が宙に現れる。

「メッセージ?」

「その『メッセージ』って文字の部分に触れれば確認できます」

 文字に触れて次に進む。

『リネク・フィナル様からメッセージが届いております』

「リネク・フィナル? 誰だ?」

「渚さんっ、そのメッセージ早く確認してください。――多分、渚さんの仲間の方からのメッセージです」

「確認って、どうすれば確認できるんだ?」

「文字に触れれば次に進みます」

 以龍が文字に触れると、メッセージ一覧に切り替わった。

 しかし、その一覧に表示されたのは今届いた一件だけだった。どうやら記憶を失う前の以龍は、メッセージを一度読んだら消していたらしい。

 その届いたメッセージに触れてメッセージを開く。

『禁則事項です。レベルの低い方にこの情報を開示することはできません』

「……はぁ?」

「また、禁則事項?」

「なんなんだよ、いったい」


 以龍とイリアがギルドを出たあと、腕に変わった銃を装着している十二、三歳くらいの少年がギルドの扉をくぐった。

 ――見れば見るほど変わっている銃だ。引き金や撃鉄はなく、あるのは銃身と弾倉だけ。しかも、弾倉にはカードスロットのようなものがついている。

 ギルドに入ると、少年は入り口近くの長いすに腰掛けた。装備を解除したのか、少年の腕の銃は消えていた。

「あら、ラビッシュくんじゃない。どう? 『フォルクス』の方は?」

「ダメダメ、おいらの攻撃じゃぜんぜん致命傷にならない。で、奴はすぐに逃げちゃうし。――とりあえず、シグナルは打ち込んでおいたから、続きは明日だね」

 そう言いながら、張り紙の方へと歩いていく。

「はぁ。せめて信用のおける仲間でもいれば……。――あれ? 昼に入ってたグリズリーは誰か持っていった?」

「それなら先ほど解決しましたよ」

「ありゃりゃ。またハイクラスの小遣い稼ぎに持ってかれちゃったか」

「いえ、それを受けたのはノーマルの男女二人でしたよ?」

「ノーマル? ノーマルアドベントのペアが、もう解決したっていうの?」

「――なんか変な二人でしたよ、互いに報酬を譲り合ったりしてさぁ」

「! そのアドベントと連絡とれる?」

「うーん、二人とも初めて見るアドベントでしたからね。――あ、でも帰ったのはいまさっきだから――」

 話の途中でラビッシュはギルドを飛び出した。

 ギルドを出るとラビッシュは夕闇の街を見渡した。

(――こんな時間だ。急ぐ理由でもなければまだ街にいるはずだ。……だとしたら、宿屋か!?)

 ラビッシュは宿屋に向かって走り出した。


 以龍とイリアが宿屋に着いた。

「すいません、二人部屋は空いてます?」 さっそくイリアは空き部屋を確認する。

「二人部屋かい? ちょいと待ってくれよ」 そう言って宿帳かなにかを確認する。どうやらあれに部屋の情報が記載されているようだ。

「ちょっと待て。二人部屋ってなんだ?」

「ダメです。今あなたを一人にするとまた無茶なことをしちゃいますから」

「だからと言って、いくらなんでも同じ部屋はまずいだろ?」

 イリアの目を見る。……決して意見を曲げようとしないまっすぐな瞳をしている。

「……なにを言ってもダメってか」

「おまたせ。二人部屋だと三千だね」

「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」

 ――イリアが財布を確認するより早く、以龍が代金をカウンターに置いた。

「はい、まいど。じゃあこれが部屋の鍵ね。――二階の奥の部屋になるよ」

 鍵を受け取り、以龍が宿の階段に向かって歩き出す。

「? どうした? はやく来いよ」

「宿代くらい私が出したのに……」

「これ以上世話になれるかっての」

「――すいません、これ銀貨に崩してもらえます?」 イリアは女将に両替を頼もうとするが――

「行・く・ぞ」 以龍が戻ってきて、それを阻止する。

「ちょっと、宿代の半額は私が――」

「今度は俺がおごる番だ」

 イリアの手を引いて、再び階段の方へ――

「はぁはぁ。――そこの二人、ちょっと待って」 入り口の方から以龍とイリアを呼び止める声が聞こえた。

 息を切らせながら現れたのは、ギルドで「ラビッシュ」と呼ばれていた少年だった。

「兄ちゃんたちだよね? グリズリーの依頼を解決したのは」

「? アンタは?」

「おいら『ラビッシュ』ってんだ。実は折り入って頼みがあるんだけど――」

「渚さん、ここじゃちょっと……」

 見渡すと何人かがこちらを見ていた。

「だな。――ラビッシュって言ったな? とりあえず話は部屋で聞こう」

「あ、おいらのことは『ラビ』でいいよ」

「ラビくんね。私はイリア、で、この人が渚さん」

「イリアに渚ね。まあ、おいらは兄ちゃん姉ちゃんで呼ばせてもらうよ」


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