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幻想冒険談 別世界譚 アドベント編  作者: いりゅーなぎさ
別世界譚 アドベント編
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28/32

九龍乱入

 そこに以龍たちが駆けつけたときに目に入ったのは、ディライトした二人が対峙している場面だった。

「ラビッシュ、ディライトしたの?」

「――手は出さないでくれ。こいつはおいらの相手だ」

 ……ラビッシュがリジェに向けて具現化魔法カードを投げつける。ラビッシュが拳を握り締めると、具現化魔法が爆発する。

「具現化魔法の遠隔操作? あれが、ラビくんのディライト能力?」

 ――が、爆炎の中にリジェはいない。

 リジェがラビッシュの背後に回り、棍を振り下ろす。ラビッシュは棍を回避すると共に、リジェから距離を取る。

 そして、距離を取ったラビッシュはリジェの周りに具現化魔法を大量出現させる。

 だが、同じ手は通じなかった。リジェはその具現化魔法が発動する前に、カードを棍でなぎ払った。

 その隙を、ラビッシュが突く。具現化魔法を投げ、追撃。……今のラビッシュにとっては、強力な魔法を練るよりこの方が攻撃力が高いのだ。

 だが、この戦い方では――

「以龍さん、このままだとラビッシュ――」

「ああ。このままだと、ラビは負ける」

「負けるって……、なんで? どうみても、ラビくんの方が優勢じゃないですか?」

 具現化魔法の爆発がリジェに直撃する。――ダメージを受けながらも、リジェはラビッシュに対して棍を突く。

 棍はラビッシュの喉に命中し、ラビッシュの呼吸を困難にさせる。

「がっ――」 右手で喉を押さえながら、ラビッシュが膝をつく。

「ラビッシュっ」

 サレントが剣を手に飛び出そうとするが、以龍がそれを止めた。

「なんで止めるんですか?」

「いま飛び出せば、その地点でラビは勝負に負けたことになる」

「ですが、このままだと勝ち負けよりも――」

「……大丈夫。渚さんを信じましょう」

 振り下ろされる棍をラビッシュは左手で受け止める。

「へっ。両手が使えるのは魔導士の特権だ。これでも魔導士が弱いっていえるかっ」 喉を押さえていた手で具現化魔法を投げつける。

 リジェはその攻撃に対し、回避行動すら取らなかった。――先ほどのダメージを含め、リジェのディライト能力がダメージを無効化している。

「どんな手を、使おうと、無力に、変わりない」 とどめの体勢に入ったのだろうか? ラビッシュの手を棍から引き離し、防御も考えもせず、思いっきり棍を振り上げた。

 ラビッシュの視界が赤く染まる。――それは突然の出来事だった。棍を振り上げ、無防備となったリジェの背後から鉄の爪が胸元を貫いた。

 そこにいたのは、ディライトの光に包まれた、イーターの姿をしたパラだった。

「さすがの再生能力も、即死攻撃には効果がないみたいだねぇ」

 リジェのディライトの光が消え、その場に倒れる。パラの鉄の爪には、心臓らしき臓器が握られている。

 その臓器を天に掲げ、口に血が垂れるように握りつぶした。

「――Delight」 以龍がディライトし、パラを斬りつけるが――

 脇腹を切り裂かれながらも、パラは不敵な笑みを浮かべる。

「ちょっと遅かったようだねぇ、光使い」

 ディライトの光が、切り裂かれた脇腹を修復していく。――それだけだはない。外見からではわからないが、先ほど受けた光輝破神衝のダメージをも修復している。

「! なんだ? なんでこの男の能力を?」

「こいつは他の人間のディライト能力を取り込むんだ」

「これで、さっきの分は消えたよ。しかも、どうやらもうカオスディライトは出来ないみたいだしねぇ」

「……」 ディライトの光の刃に包まれた竜封剣を握り締め、パラに対して身構える。

「もっとも、カオスディライト出来たところで、今のアタイには誰であろうと勝ち目はないだろうがねぇ?」

「それは、聞き捨てならへん言葉やなぁ」 独特の訛り声。聞き覚えのある声だ。

「! あなた……」

「九龍……」

 九龍がこの場に乱入する。

「なんだい、アンタは?」

「わいか? わいは九龍っつうモンや。あんさんが光使いって呼んどるその男にはちと借りがあるんや」

「だからなんなのさ? アタイはアンタなんかに用はないんだよっ」

「あんさん、その女口調はやめたほうがええで? 聞いてて気色悪ぃわ」

 パラの気が九龍に取られているうちに、以龍たちはラビッシュの元に近づく。

「……イリア、ラビの治療を頼む」 ――パラに悟られないためか、小声で会話をする。

「兄ちゃん、治療くらい――」

「いいから。――そのままで俺の話を聞いてくれ。イリアとサレントもだ」

 パラは完全に九龍に気を取られていて、こちらの行動には気付いていない。

「余計なお世話なんだよっ」

「腹ぁ立ったか? わいもあんさんに結構腹立ってんやわ」

「初対面のアンタにそんなこと言われる筋合いはないねっ!」

「だったら、はっきりゆうてやるわ。――わいの楽しみを横取りするんやないわ」

「? なんのことを言ってるんだい?」

「……これ以上の会話は無意味やな。あんさん、カオスディライト相手でも余裕ぬかしおったな?」

 九龍の身体が赤黒き光に包まれ始める。

「試してみいや?」

「……そうかいそうかい。アンダも敵ってことかい? いいよ、なら実践してあげようじゃないかい」

 パラが瞬間移動を発動させる。――それに合わせてか、九龍は鎖鎌を手に取った。

「……やめときぃ。無駄なだけや」 姿を現したパラの首元に鎌を突きつける。

「! ――アタイをなめるんじゃないよ」

 地面から手が出現し、九龍の鎌を持つ手を掴む。――そしてさらに手は出現し、両足と空いている手も拘束される。

 パラはその隙に距離を取る。

「これで形成逆転かい? これであんたもただの的になるんだよっ」 右腕を銃に変え、離れた場所から九龍に狙いをつける。

「アンタはいたぶる気はないから安心しな。これで終わりさ」

 右腕の銃が火を吹いた。狙いは九龍の心臓部をとらえている。

「……この程度の腕なら、カオスディライトする必要あらへんかったな」

 九龍のカオスディライトの光が、飛来する弾丸と地面からの手を包み込む。

 弾丸はその場で静止し、手は何事もないように九龍の拘束を解いた。

「!? なにをしたんだい?」

「……これがわいの能力や。あんさんの言葉を借りれば、ディレクトっつうんかいな?」

「ありえない……。もし、アンタの能力をディレクトっていうなら、発動条件はなんだっていうのさ?」

「条件? そない面倒なことせんでも、わいの視界にあるものは全て意のままや」

「そんなことができるわけないじゃないか!?」

「……ああ、ひとつ制限あったわ。わいより圧倒的に弱いモンやないと効果がないんやったわ」

「……アタイが弱いとでもいうのかい?」

「あんさんは少し勘違いしとるわ。――ま、あんさんが弱いには変わりないやろうがなぁ、圧倒的とまでは言えへんからな」

「じゃあ、何が勘違いっていうのさ?」

「そこで止まっている弾丸やこの土の手はわいより圧倒的に弱いんや、わかるか?」

 鎌を腰に収め、パラに対して指を向ける。

「何の真似だい?」

「あんさん、つまらんわ。もう終わりにしよか」

 指を鳴らすと、土の手がパラを拘束する。

「なっ!」

「言うとくけど、あんさんが取り込んだ瞬間移動やとその状態では発動不可能やからな。それはあんさんの方がようわこうとるやろ?」

「……」 サレントが網に絡まれたときに瞬間移動を発動できなかったように、いまのパラでは瞬間移動を発動できないことはわかっていた。

 九龍がもう一度指を鳴らす。――静止した弾丸は向きを変え、パラに狙いをつける。

「たしか、その再生能力も即死攻撃には効果ないんやったな? ――最後に言い残すことは?」

「……アンタ、こんなことしてなんになるのさ? アタイを殺す意味なんて――」

 ――指を鳴らす。弾丸は高速で飛来し、パラの心臓を打ち抜いた。

「最後は命乞いかいな。最後までつまらん奴やったな」

 カオスディライトを解除すると、主を失った土の手は消滅し、それに支えられていたイーターの身体は地面に崩れ落ちた。

「待たせたな、破滅の光。ほな――」

 振り返った先に、以龍たちの姿はない。

「……逃げられてもうたやないか」


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