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幻想冒険談 別世界譚 アドベント編  作者: いりゅーなぎさ
別世界譚 アドベント編
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27/32

ラビッシュ覚醒

 息を切らせるラビッシュと、ディライトに包まれ無傷のリジェ。

「――このっ」 アームガンから火球を放つ。

 リジェはそれを防ぐことなく、ラビッシュとの間合いを詰めてくる。

 ダメージは当たるものの、それはリジェのディライト能力ですぐに回復されてしまう。

 リジェの棍がラビッシュの頬を直撃し、ラビッシュは地面の転がる。

「所詮、この程度か」

(……ちくしょう。どうにかあいつの治癒速度よりも早くダメージを与え続けないと――)

「もういい。お前では、なんの証明にもならない」 棍の先をラビッシュに向け、とどめの体制に入る。

(具現化魔法を装填してちゃ、間に合わない。もっと早く――!)

 ラビッシュの脳裏に、以龍がフォルクス戦で見せた、雷の性質をもつ炎の具現化魔法が思い浮かぶ。

(威力より数が欲しいなら、アームガンは邪魔だ) アームガンのフォースウェポンを消滅させる。

「戦意、喪失か。それも、仕方なしか」 倒れているラビッシュに近づき、棍を振り上げる。

「――Delight」 それはラビッシュが自ら意志で言い放った言葉ではなかった。

 頭の中で限界まで力を求め、その結果を実行に移そうとした時、自ら意志とは関係なく言葉が出ていた。

 それに合わせて、ラビッシュは蒼白きディライトの光に包まれる。

 棍を振り上げたリジェの周りに、無数の具現化魔法カードが出現する。――次の瞬間、具現化魔法カードは連鎖的に大爆発を起こした。

 現れたのは炎の具現化魔法。任意の場所に具現化魔法を作り出す、それがラビッシュのディライト能力のようだ。

「……おいらが、ディライトした?」

 爆炎が消え、リジェの姿を映し出す。リジェは動かない。ラビッシュは勝負が決したと思っていた。

 ――リジェのディライトに光が見えるまでは。

「あれを、耐えたのか?」

 リジェのディライトは、動けないほどのダメージを受けたリジェを徐々に回復させていく。

「ディライト、したか。これで、対等」

 リジェはすぐに動けるまで回復していた。――リジェが棍を身構える。

「だが、やはり魔法は――無力」

「なら、オイラはその魔法で完膚なきまでにお前を倒してやるだけだ」

 両手に火球を作り出し、ラビッシュも再び戦闘態勢に入った。


 イーターの右腕はライフル状に変化していた。

 しかし、イーターは――いや、イーターを乗っ取ったパラはそれを撃つことはなく、動けない以龍を銃身で殴りつけていた。

「いいざまだねぇ、光使い。けど、まだアタイの気は晴れないよ?」

 一方的に殴られ続けてなお、以龍の目は死んでいない。

「……その目だよ。アンタがその目をする限り、アタイの気は晴れないんだよっ」

 銃身が頬を打つ。だが以龍は無言でパラをにらみつける。

「気に入らないねぇ。どうやらアンタをいくら痛めつけても無駄のようだね。なら――」

 パラが倒れているサレントに近づいていく。

「こっちの方が効果的かい?」 倒れているサレントを蹴り上げた。

 蹴り上げられたサレントの髪を左手で掴み、以龍にそれを見せ付ける。――以龍の表情が変わったのをパラは見逃さなかった。

「顔色を変えたねぇ。やっぱりアンタみたいのにはこの方が効果的かい?」 銃口をサレントの頬に突きつける。

 以龍が怒りで身体を震わす。

「いいねぇ、その反応。じゃあ、こうしたらどんな顔を見せてくれるんだいっ」

 サレントの身体を上に投げる。そこにライフルの照準を合わせ――

「――ChaosDelight」

 その瞬間、赤黒き光が以龍を包み込んだ。イーターの残した土の腕は以龍の放つカオスディライトの衝撃に耐え切れず消滅する。

 そして、以龍の瞳は冷たくパラをにらみつける。

「――ぶ、ぶち切れかい? いいねぇ、ならアタイも――」

 いつのまにか以龍はサレントを抱きかかえていた。――サレントをイリアの隣に寝かすと、パラに向かって掌を向ける。

「――制御印、五芒星」 巨大な五芒星が以龍の目の前に出現する。

「光輝破神衝」

 巨大な光線がパラに襲いかかる。

「な、なんだいこの技は?」 光線が直撃する寸前、パラは瞬間移動を発動させる。

 パラは姿を消して光輝破神衝を回避した後、以龍の頭上に姿を現した。――が、すでに以龍の頭上には、二つ目の五芒星が描かれている。

「なっ」

 天をも貫く勢いで二発目の光輝破神衝が放たれる。この二発目は瞬間移動能力を持ってしても回避は出来ないだろう。

 この瞬間、カオスディライトの光が消え、以龍が我に返る。

 ――パラは光に飲み込まれたのか、衝撃に飛ばされたのかはわからない。理解できるのは、以龍が今この瞬間にパラを撃退したという事実だけだった。

「……俺が、やったのか?」


 しばらくして、イリアとサレントが目を覚ます。――サレントのダメージがひどく、以龍はイリアに急いで治療するよう頼んだ。

「すいません。結局足手まといになってしまったようで」

 以龍がサレントの額を拳で軽く叩いた。

「互いに守るのが仲間だって言ったのはお前だろ?」

「……そうでしたね」

「はい。とりあえずはこれで大丈夫ですよ」 どうやら治療が終わったようだ。

「じゃあ、ラビを探そう。多分どこかであいつらの仲間の一人と戦ってるはずだ」

 ――その時だった。少し離れた場所から、連続した爆発音が鳴り響く。

「!? 何の音だ」

 これはラビッシュがディライト能力を発動させた時の爆発音なのだが、以龍たちがそれを知るよしもない。

「まさか、あれを放ったのがラビくんの戦っている相手なんじゃ?」

「音の方にいきましょう。ラビッシュが心配です」

「ああ」


 以龍の光輝破神衝の直撃を受け、光の中に消えたと思っていたが、パラはかなりのダメージを受けたものの、海へと飛ばされただけだった。

 海中でパラは考えていた。カオスディライトした以龍に勝つ方法を。

 ――パラは知らない。以龍のカオスディライトが自由に発動させられるものではないということを。

(こうもダメージを受けちゃあ、この身体じゃ勝ち目はないねぇ。乗っ取りなおすかい? あの杖の女を。……ダメだね、あの女は危険すぎる。なにか、いい方法は――!)

 一つの考えが浮かび上がる。

(――ようはこの身体のダメージを直せばいいんじゃないか。だったらあるじゃないか、この身体を直し、かつ、あの光使いに勝つことの出来る方法が)


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