強襲
以龍たちがアルセイドの港町を街道に出た時だった。――連続した火薬の爆発音がした次の瞬間、以龍たちに弾丸の雨が降りそそぐ。
「! ――散れっ」 以龍がとっさに声を上げる。
四人はそれぞれの方向に散って、弾の雨を回避する。
右腕をガドリングガンに変えたイーターが姿を現す。ガドリングガンは休む暇なく以龍たちの足元に弾を放ち続ける。
(なんだ? なんでこいつ当てに来ない? ――! こいつの狙いは俺たちの分散か?)
「イリア、ラビ、サレント。――? しまった……」
そこにラビッシュとサレントの姿がなかった。
「渚さん、なにが起きたの?」
「その質問にはアタイが答えてあげようか?」
「なんだ、お前らは?」
「おやおや。今はアタイ一人なのに妙なことを言うねぇ?」
「貴様らが何者かを聞いている。なにが目的だ?」
「目的はアンタじゃないよ。アタイはアンタらの足止めっていう損な役回りさ」
「ラビとサレントをどうした?」
「それはアタイに聞かれても答えられないね。ま、運が悪くなければ生きてるでしょ」
以龍は竜封剣を抜き、それに合わせてイリアも杖を身構える。
「そこをどけ」
「嫌だって言ったら?」
「――Delight」 以龍はディライトの光に包まれ、竜封剣は光の刃に包まれる。
「力づくってわけねぇ。いいねぇ、わかりやすくて」 パラが二本のダガーナイフを身構える。
「じゃあ始めるかい、光使い」
パラが体勢を低くし、以龍に向かってきた。――その体勢から、ダガーを一本投げつける。
以龍の竜封剣がそのダガーを斬りつける。ダガーは縦に割れて、地面に転がる。そして、そのダガーは光の粒となって消えていった。
「!? ――フォースウエポンか?」
以龍の目の前にパラの姿はなかった。パラは、後方に待機していたイリアの前に。
「え?」
「アンタは後ろにいるからって油断しすぎなんだよっ」 いつのまにかパラの手には新しいダガーが生成されている。
一本目のダガーを杖で防ぐが、二本目がイリアの右腕を斬りつける。
「イリア!?」
「大丈夫です、このくらいはカスリ傷です」
パラの表情から不敵な笑みがこぼれる。……それは、たかがカスリ傷を負わせたくらいでは大袈裟すぎる反応だ。
「――Delight」 次の瞬間、パラがディライトを発動させた。
パラが再びイリアに斬りかかる。――狙いは、先ほど傷つけた部分だ。
「!」 イリアがとっさに杖を振るう。
……それは以龍たちの予想に反した結末となった。
杖がパラの腹部に直撃し、パラはディライトの光を消してその場に倒れこんだ。……そして、ピクリとも動かなくなる。
「え?」
「? なんだ? なにが起きた?」 以龍はディライトを解除する。
「わかりません、攻撃が命中したら急に――」
以龍が警戒しながらパラに近づいてみるが、それでも反応はない。
「……だぁっ」 意を決し、パラに竜封剣を突きおろす。
その剣は胸元を貫き、血を吹き上げさせる。――が、それでもパラに反応はない。
「……勝った、のか?」
「当たり所が悪かったのでしょうか?」
「――まあいい。とりあえず邪魔はなくなったんだ。ラビとサレントを探そう」
「はい」
以龍とイリアは動かなくなったパラをそのままに、この場を離れていった。
(……あーあ。あの身体は結構気にいっていたんだけどねぇ。まあいいさ、新しい身体は手に入ったことだしねぇ)
ラビッシュはリジェという男の突撃を受けて、海を背にした場所に連れてこられてしまった。
(――なんなんだ、この兄ちゃんは? わき目も振らずにオイラに突撃してきやがった)
「魔導士、無力。それを証明してやる」
「……へぇ。いくらオイラでもそれは聞き捨てできない言葉だね?」
「構えろ。どれだけ魔法が無力か教えてやる」 そういって背丈ほどの長さに棒を生成し、身構える。俗に『棍』と呼ばれている武器だ。
ラビッシュもそれにあわせてアームガンを生成する。
「子供だと思ってあんまりなめるなよ?」 炎の具現化魔法をスロットに入れ、銃口をリジェに向ける。
銃口の先にリジェの姿はない。背後からリジェの棍がラビッシュの延髄を狙い打つ。
ラビッシュは身を屈め棍を回避すると、銃口をリジェに密着させる。
「なめんなって言ってんだろ」 銃口から火球が放たれ、密着部分が爆発する。
「へっ。大方、魔法を放つ隙を作らせないつもりだったんだろうが、そうはいかないってんだよ」
爆煙が二人を包み込む。――だが、リジェは微動たりともしなかった。棍を振り下ろし、ラビッシュを地面に叩きつける。
「――がっ」 棍の直撃を受け、うつ伏せに地面に接触する。
「……やはり無力、か」
ラビッシュが身体を反転させ、銃口を見下ろすリジェに狙いをあわせる。
「なら、こいつで吹っ飛びやがれっ」 二発目の発射。
一発目より強力な火球が、リジェの顎を打ち上げる。――これにはさすがにノーダメージというわけにはいかないようだ。
その隙にラビッシュは体勢を立て直す。
「――Delight」 リジェがディライトの光に包まれる。
すると、先ほどのダメージが回復し始めた。
「! 自己修復のディライト能力? そんなのありかよ!?」
サレントの目の前にはイーターという男がいた。かもしだすその雰囲気から、この男が只者ではないことは充分に理解できる。
「なんなの、あなたたちは?」
「黙って俺の言う事を聞けば、殺しはしない」
サレントはドラゴンテイルを鞭状に変形させ身構える。
「そんな言葉、信じられるとでも思っているの?」
「……そうか。なら、こちらも力づくで目的を果たさせてもらおう。――Delight」
イーターを蒼きディライトの光が包み込む。――イーターの右腕がガドリングガンの銃口に変わる。
それはラビッシュのフォースウェポンとは少々違っていた。圧倒的な重量感、それはフォースウェポンでは再現できないような、兵器ならではの特殊な雰囲気を放っていた。
「――踊りな」 銃口が火を噴いた。
休むことなく放たれる弾丸がサレントの動きを制限する。
「――Delight」 サレントはディライトを発動させると、すぐにその場から姿を消した。
次の瞬間、イーターは銃撃をやめ、その腕をバズーカ状に姿を変えた。
サレントがイーターの背後に姿を現す。――が、銃口は肩越しにサレントに照準を合わせていた。
「え?」
「――移動範囲は目視範囲内ってとこか? だったら、姿を現す場所は決まってるわなぁ?」
「くっ」 再度瞬間移動を発動させようとするが――
「遅えよっ」
バズーカから放たれたのは、捕獲網だった。網はサレントを包み込み、サレントの動きを封じる。
「な、なに?」
「安心しろ、ただの捕獲網だ。なんも仕込んじゃいない」 イーターが右腕を変化させる。今度は鉄の刃で出来た爪が伸びた篭手に姿を変えた。
「だが、お前のレベルなら能力を封じるに充分だ」
「なにを、言ってるの?」
「試してみればいいさ。俺の言葉の意味を、なっ!」 イーターが右腕を振り上げる。
篭手の刃がサレントの頬をかすめる。頬が切り裂かれ、そこから血が垂れる。
「……なんで?」 サレントは驚きの表情を見せる。――それはいきなり頬を切りつけられたからではない。
イーターの攻撃を回避するための瞬間移動が発動しなかったのだ。




