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幻想冒険談 別世界譚 アドベント編  作者: いりゅーなぎさ
別世界譚 アドベント編
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25/32

強襲

 以龍たちがアルセイドの港町を街道に出た時だった。――連続した火薬の爆発音がした次の瞬間、以龍たちに弾丸の雨が降りそそぐ。

「! ――散れっ」 以龍がとっさに声を上げる。

 四人はそれぞれの方向に散って、弾の雨を回避する。

 右腕をガドリングガンに変えたイーターが姿を現す。ガドリングガンは休む暇なく以龍たちの足元に弾を放ち続ける。

(なんだ? なんでこいつ当てに来ない? ――! こいつの狙いは俺たちの分散か?)

「イリア、ラビ、サレント。――? しまった……」

 そこにラビッシュとサレントの姿がなかった。

「渚さん、なにが起きたの?」

「その質問にはアタイが答えてあげようか?」

「なんだ、お前らは?」

「おやおや。今はアタイ一人なのに妙なことを言うねぇ?」

「貴様らが何者かを聞いている。なにが目的だ?」

「目的はアンタじゃないよ。アタイはアンタらの足止めっていう損な役回りさ」

「ラビとサレントをどうした?」

「それはアタイに聞かれても答えられないね。ま、運が悪くなければ生きてるでしょ」

 以龍は竜封剣を抜き、それに合わせてイリアも杖を身構える。

「そこをどけ」

「嫌だって言ったら?」

「――Delight」 以龍はディライトの光に包まれ、竜封剣は光の刃に包まれる。

「力づくってわけねぇ。いいねぇ、わかりやすくて」 パラが二本のダガーナイフを身構える。

「じゃあ始めるかい、光使い」

 パラが体勢を低くし、以龍に向かってきた。――その体勢から、ダガーを一本投げつける。

 以龍の竜封剣がそのダガーを斬りつける。ダガーは縦に割れて、地面に転がる。そして、そのダガーは光の粒となって消えていった。

「!? ――フォースウエポンか?」

 以龍の目の前にパラの姿はなかった。パラは、後方に待機していたイリアの前に。

「え?」

「アンタは後ろにいるからって油断しすぎなんだよっ」 いつのまにかパラの手には新しいダガーが生成されている。

 一本目のダガーを杖で防ぐが、二本目がイリアの右腕を斬りつける。

「イリア!?」

「大丈夫です、このくらいはカスリ傷です」

 パラの表情から不敵な笑みがこぼれる。……それは、たかがカスリ傷を負わせたくらいでは大袈裟すぎる反応だ。

「――Delight」 次の瞬間、パラがディライトを発動させた。

 パラが再びイリアに斬りかかる。――狙いは、先ほど傷つけた部分だ。

「!」 イリアがとっさに杖を振るう。

 ……それは以龍たちの予想に反した結末となった。

 杖がパラの腹部に直撃し、パラはディライトの光を消してその場に倒れこんだ。……そして、ピクリとも動かなくなる。

「え?」

「? なんだ? なにが起きた?」 以龍はディライトを解除する。

「わかりません、攻撃が命中したら急に――」

 以龍が警戒しながらパラに近づいてみるが、それでも反応はない。

「……だぁっ」 意を決し、パラに竜封剣を突きおろす。

 その剣は胸元を貫き、血を吹き上げさせる。――が、それでもパラに反応はない。

「……勝った、のか?」

「当たり所が悪かったのでしょうか?」

「――まあいい。とりあえず邪魔はなくなったんだ。ラビとサレントを探そう」

「はい」

 以龍とイリアは動かなくなったパラをそのままに、この場を離れていった。


(……あーあ。あの身体は結構気にいっていたんだけどねぇ。まあいいさ、新しい身体は手に入ったことだしねぇ)


 ラビッシュはリジェという男の突撃を受けて、海を背にした場所に連れてこられてしまった。

(――なんなんだ、この兄ちゃんは? わき目も振らずにオイラに突撃してきやがった)

「魔導士、無力。それを証明してやる」

「……へぇ。いくらオイラでもそれは聞き捨てできない言葉だね?」

「構えろ。どれだけ魔法が無力か教えてやる」 そういって背丈ほどの長さに棒を生成し、身構える。俗に『こん』と呼ばれている武器だ。

 ラビッシュもそれにあわせてアームガンを生成する。

「子供だと思ってあんまりなめるなよ?」 炎の具現化魔法をスロットに入れ、銃口をリジェに向ける。

 銃口の先にリジェの姿はない。背後からリジェの棍がラビッシュの延髄を狙い打つ。

 ラビッシュは身を屈め棍を回避すると、銃口をリジェに密着させる。

「なめんなって言ってんだろ」 銃口から火球が放たれ、密着部分が爆発する。

「へっ。大方、魔法を放つ隙を作らせないつもりだったんだろうが、そうはいかないってんだよ」

 爆煙が二人を包み込む。――だが、リジェは微動たりともしなかった。棍を振り下ろし、ラビッシュを地面に叩きつける。

「――がっ」 棍の直撃を受け、うつ伏せに地面に接触する。

「……やはり無力、か」

 ラビッシュが身体を反転させ、銃口を見下ろすリジェに狙いをあわせる。

「なら、こいつで吹っ飛びやがれっ」 二発目の発射。

 一発目より強力な火球が、リジェの顎を打ち上げる。――これにはさすがにノーダメージというわけにはいかないようだ。

 その隙にラビッシュは体勢を立て直す。

「――Delight」 リジェがディライトの光に包まれる。

 すると、先ほどのダメージが回復し始めた。

「! 自己修復のディライト能力? そんなのありかよ!?」


 サレントの目の前にはイーターという男がいた。かもしだすその雰囲気から、この男が只者ではないことは充分に理解できる。

「なんなの、あなたたちは?」

「黙って俺の言う事を聞けば、殺しはしない」

 サレントはドラゴンテイルを鞭状に変形させ身構える。

「そんな言葉、信じられるとでも思っているの?」

「……そうか。なら、こちらも力づくで目的を果たさせてもらおう。――Delight」

 イーターを蒼きディライトの光が包み込む。――イーターの右腕がガドリングガンの銃口に変わる。

 それはラビッシュのフォースウェポンとは少々違っていた。圧倒的な重量感、それはフォースウェポンでは再現できないような、兵器ならではの特殊な雰囲気を放っていた。

「――踊りな」 銃口が火を噴いた。

 休むことなく放たれる弾丸がサレントの動きを制限する。

「――Delight」 サレントはディライトを発動させると、すぐにその場から姿を消した。

 次の瞬間、イーターは銃撃をやめ、その腕をバズーカ状に姿を変えた。

 サレントがイーターの背後に姿を現す。――が、銃口は肩越しにサレントに照準を合わせていた。

「え?」

「――移動範囲は目視範囲内ってとこか? だったら、姿を現す場所は決まってるわなぁ?」

「くっ」 再度瞬間移動を発動させようとするが――

「遅えよっ」

 バズーカから放たれたのは、捕獲網だった。網はサレントを包み込み、サレントの動きを封じる。

「な、なに?」

「安心しろ、ただの捕獲網だ。なんも仕込んじゃいない」 イーターが右腕を変化させる。今度は鉄の刃で出来た爪が伸びた篭手こてに姿を変えた。

「だが、お前のレベルなら能力を封じるに充分だ」

「なにを、言ってるの?」

「試してみればいいさ。俺の言葉の意味を、なっ!」 イーターが右腕を振り上げる。

 篭手の刃がサレントの頬をかすめる。頬が切り裂かれ、そこから血が垂れる。

「……なんで?」 サレントは驚きの表情を見せる。――それはいきなり頬を切りつけられたからではない。

 イーターの攻撃を回避するための瞬間移動が発動しなかったのだ。


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