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学園襲撃 一


「良いのか?僕が、君達の早朝訓練にお邪魔して」

 学園から少し離れた場所で、準備体操をしている人影が3つ。

「もちろんよ、沢山いた方が楽しいもの!」

「それなら良いんだが・・・」

 アーバンはセナとイザベルに巻き込まれる形で、今回の早朝練に加わっていた。

 偶然、廊下を歩いているところを見かけて捕まえたのだ。

「アーバンも朝走ってるの?」

「ああ。郊外ではなくて、運動場を使っている」

「ダメよ、朝の美味しい空気を吸いながら走った方が、より健康的なんだから!」

 大きく深呼吸を繰り返すイザベルを尻目に、セナとアーバンは顔を合わせる。

「さて、行こうか」

「うん」

「ちょ、無視は酷いわよ!?」



 土を踏む感触を確かめながら、3人は横並びになりながら走り続ける。

 比較的体力の無いセナも、前を走る剣士2人について来れるぐらいには体力が付いていた。

「イザベルの言う通り、外を走るのは気持ちいいかもな」

「でしょ!!ほら、見て。戦闘実習用の森、夜が明けそうな光、少しだけぬるい風!」

「はぁ、はぁ・・・。はぁ」

 ある程度走った、体力がついたと言っても、セナはこの中で最弱、2人について行くのも限界があった。

「セナ、疲れたか?」

「ごめんなさい、速すぎたわよね。水筒飲む?」

「・・・ねぇ」

 息を吐いたり吸ったりを繰り返しながら、セナは学園の方を見やる。

 

「なんか、変な感じしない?」


 その言葉と共に、学園は赤い四角に囲まれてしまった。


「なに・・・あれ?」

「戻ろう」

「あ、ちょ!アーバン?」

 事態を重く考えたアーバンは、学園へと走り出す。

 それに釣られて、セナとイザベルも同時に走り出した。

「あれ、何!?」

「結界魔法だ、家の文献で見たことがある」

「結界魔法・・・?それって、魔物を寄せ付けないためのあれよね?」

「結界と言っても、種類は様々だ。あれは・・・なんだろうな、セナ──」

 アーバンが振り返ると、そこには肩で息をしているセナがいた。

 少し飛ばし過ぎたかとアーバンは反省しながら、セナに駆け寄る。

「すまない。大丈夫か?」

「ぜ、全然・・・ごめん、体力無くて」

「謝る事ないわよ。ほら、落ち着いて〜」

「──イザベル、セナを見ててくれ。僕は先に学園に・・・」


「なんだなんだ、ガキんちょ3人がこんな所で何してんだ?」


 それは、あまりにも巨大な狼だった。

 大きな手足、膨れ上がった筋肉、2mはあるであろう体格、低く悍ましい声。

「・・・っ」

 イザベルが震える、あれは何かと本能が答えを導き出そうと、勝手に思考を始める。

「ダドゥに周りの散策なんてつまんねぇ事頼まれたが・・・。こいつは楽しめそうな獲物を見つけたなぁ?」

「な、なんだ・・・お前は!!?」

 アーバンが驚愕の声をあげる、見た事もない。ああ、こんなの見た事なんて無い。

 2足歩行で、言葉を喋った人型の狼など、生きてきて見た事なんて、一度も無い。



 

「ホワイトデイ様!い、一体どこへ!?」

 純白の魔女の後を追うのは、金が象徴の魔法使いアルマデル。

 急いでもなく、遅くもない緩やかな足取りで歩くホワイトデイの後ろを律儀に付いてくる。

「屋上です」

「屋上、どうして・・・?」

 敵は外に居るというのに、どうして最上階の屋上を目指しているのか、そもそも、ここから屋上へと登るにはかなりの時間がかかる、こんな遅くてどうする。

「アルマデルさん。貴女は、この結界をどう見ますか?」

「・・・封魔結界です」

「正解です。厳密に言えば破戒魔法ですけどね」

「こ、この規模の破戒魔法を扱うなんて・・・。一体誰が・・・」

 不意に、ホワイトデイの足が止まる。

「ホワイトデイ様?」

「魔力を抑えてください」

「──っ、は、はい」

 言われるがまま、アルマデルは己の魔力を落ち着かせる。

 あまりにも簡単に行う物だから、ホワイトデイは少しだけ驚いてしまった。

「驚きました・・・。アルマデルさんの魔力操作はかなりのものですね」

「え?そ、そうでしょうか」

 かの大魔法使いに褒められて、アルマデルは嬉しそうに笑いそうになるも、それを必死に抑える。

 今は緊急事態なのだ、呑気に浮かれている場合じゃない。

「では行きましょう。今の状態を維持して下さい」

「はいっ」

 2人は階段を登り続ける。

 1階、また1階と登るたびに窓を見るが、そこには変わらず赤色の景色しか映らない。

「これは、学園全体を包んだ結界なのでしょうか」

「そうですね。教員室から剣術科が見えたので、この学園の広さを鑑みれば、アルマデルさんの考えは正しいものですよ」

「・・・でも、それっておかしくないですか?」

「そうですね。()()()を封魔結界で覆うなんて、敵さんは相当なお間抜けさんか、ただ知らなかったのか」

 そして、その時はやってきた。

 

「アルマデルさん、この扉から先には出てはいけませんよ?魔力も必ず外には漏らさない様に」

「ホワイトデイ様・・・?」

 ガチャリ、とホワイトデイは屋上へと出る扉を開けた。

 同時に強い風が吹く、いや、風なんかではなかった。

「──ッ!!」

 身の毛がよだつ程に、粘りついた悪意の魔力。

 肌に触れた部分が痺れる様な感覚に陥る、そして、その中心にいる存在にアルマデルは声をあげそうになった。


「おぉ・・・やはり、純白の魔女が来るか」

「もちろん。私は、ここの先生ですから」

 枯れ木の様な生き物、目はギョロついて小さい身体に乾いた皮の様なローブを纏っている。

「目的を言いなさい。でなければ殺します」

「血気盛んな事だ、老耄の魔物にそんな言葉を吐き出すなんて」

 魔物、今目の前の枯れ木は自分は魔物と言ったのか。

 存在しうるのか、言葉を話す魔物なんて。

「ひとまず、自己紹介といこうか。ワシの名前はダドゥ、見ての通り、魔物の魔法使いだ」

「器用な魔物ですね。魔力を魔法として扱える魔物なんて存在したんですか」

 魔力を扱える魔物はいる。

 それこそ、火を吐いたり、歌に乗せて催眠をかけたりする魔物はいる。

 けれどそれは、動物が進化して備わった機能という側面が強い。

「魔物も、学べば魔法を扱えるのだよ」

「そうですか」

 明確な知能を持つ魔物の存在が、今現れた。

 魔法という現象に手を出す魔物が、存在する様になってしまった。

 自分達と同じ言語を扱える魔物が、人類に戦いを挑んできてしまった。

「純白の魔女、そちらは何も言わんのか?」


 ──面白い。


「そうですか、魔物が魔法を・・・。ふふ、あはは、あははは!!!」

「──?」

「あぁ、ごめんなさい。可笑しくて笑ってしまいました。そうですね、失礼しました。私の名前はホワイトデイ」



「人類史の頂点である、魔法使いの長です」

 

 

 

 

 

 

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