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93 チェルシーの姉、救出成功!


 ~ルイス視点~



 (そろそろ、ケアル達の所に言ってみるか…、上手く話してくれている事に違いない…。ここからが本番か…。上手くいってくれよ…)


 俺は、兵士達の動きに注意しながら…。

 

 「どうだ?見つかったか?」


 「いや!ここにはないっすね!棚の下も見ているんですが…」


 「お金貰った以上、絶対探してみせるっす!」


 「ありがとう。所で奴隷の状態を見たい。鍵を貸してくれないか?」


 兵士達にそう言うと、兵士の一人は不思議そうな顔をしながらも…。


 「分かったっすよ!これが鍵っす!」


 背の低いガリガリの兵士が、そう言いながら自分のズボンのポケットに入れてあった鍵を差し出してくる。


 「もし、見つかったら大声で呼んでくれ」


 「分かりましたっ!」


 俺は、物置から出て真っ直ぐ駆け足で、奥にあるケアル達がいるであろう部屋へと向かう。部屋の中に入ると牢屋がいくつもあり、奥の方に隠れているケアルとフレアの姿を確認できた。そして、もう一人…。チェルシーを少し大人にさせたような少女が牢屋の中にいて、黙ってこちらを見ている。



 「…っつ!!ルイス!!」


 少女は俺を見るなり、名前を呼ぶと、隠れていたケアル達がひょこっと頭を出し、俺が来たのを確認して出てくる。


 「お姉さん!この人は貴方の知っているルイスじゃないよ!貴方を助けに来たんだよ!」


 「安心して良いです…。理由はここを出てから話をする…です…」


 「えっ?どう…いう事にゃ!?でもコイツはルイ…」


 俺は、牢屋の前へと行き鍵を開ける…。開けると目の前にチェルシーの姉がやってくる。そして、俺を見るなり鋭い目付きで睨んでくる…。


 「とりあえず、君を助けに来た。チェルシーからの頼みだ。疑うのも無理はない!時間がないから先ずはその女の子達と此処から出てくれ。詳しい話は後だ!」


 「わ、わかりました…」


 そう言いつつも、未だに鋭い目付きで俺を睨んでくる…。俺は頭の中で3人に強化付与をイメージする。これで身体強化されたはずだ。それから、まだ兵士達が物置から出てきていない事を確認して…。


 「3人に強化魔法を付与している…。できるだけ時間を稼ぐから早く逃げてくれ」


 「分かった…です!ルイス兄さんも気を付ける…です」


 「アンタも偽物が戻る前に逃げなよ!」


 「ああっ!」


 ケアルの最後に言った言葉に、チェルシーの姉は不思議そうな顔をする…。


 「に、偽物ってなんですにゃ!?」


 「詳しい話は後だ!」


 3人は、牢屋の部屋から出ていき、真っ直ぐと俺達が入ってきた方へと走り去っていくのを確認した。姿が完全に見えなくなった所で…。


 (そろそろ頃合いだな…)


 「おい!!お前らっ!!」


 「な、なんでしょうか!?」


 俺の大きな声に反応して、兵士の3人はが物置から出てきて俺の居る牢屋の部屋へと急いでやってくる。


 「これは、どういう事だ?!」


 「へっ?」


 兵士達は一瞬ワケが分からず声を出す。そして直ぐに、奴隷がいない事に気付く。


 「はぁああああ!?奴隷がまた一人逃げた!?」


 「う、うそ!!鍵はちゃんと掛けたはずっす!」


 「でも居なくなってるのは事実だろ?!どうしてくれるんだ!?」


 3人の兵士は事の重大さに頭が回らなくあたふたとし始める…。可哀想なほどひきつった表情を見せているが…。許せ…。


 「ど、どうしましょうか!?」


 「どうしましょうか?じゃないだろ!!」


 俺はわざと剣を抜くふりをすると、兵士達3人は顔を青ざめる…。


 「も、申し訳ありませぇんっ!!罰は受けますっ!!殺さないでくださいっ!!」


 「し、死刑だけは!なんでも!なんでもするっす!」


 「本当に、知らなかったんす!!命だけは!!」


 3人は半べそになりながら命乞いをしながら謝ってくる。


 「まぁ、居なくなったのは仕方ない…。あまり深く追及はしない…。が…、ここから一旦離れて貰う。それでチャラだ」


 「そ、それはどういう…?」


 「これを使い、エルドアス王国に行け。そして事の話をすればいい」


 「それだけでいいんっすか!?」


 「あ、ありがとうございますっ!!」


 3人は泣きながら首を垂れる…。俺は転移のスクロールを使い、3人を転送させようとした時、クローディアが共鳴石を通し俺に話しかけてきた。


 『ルイスさん!ルイスさんっ!偽物の姿が確認できました!!すぐ戻ってきてくださいっ!!』


 『分かった!情報ありがとう!』


 直ぐ様、俺は3人の兵士に声をかけた。


 「今回は見逃す。だから素直に言う事を聞いて貰えるとありがたい」


 「も、勿論ですっ!」

 

 「落ち着いたら話を聞きたい。それまでエルドアス王国に居てくれ…」


 「分かりましたっす!」


 そう言うと、一人一人転移のスクロールの中に入っていく。俺は、3人が入ったのを確認してから、牢屋の部屋から出て急いで駆け足で、裏口へと戻る…。戻ると、既にヒナルやケアル、フレア、クローディア、そして一番頑張ってくれたクロの姿も確認できた。俺が戻ると皆は無言でここから出る。そして後ろからは挙動不審な動きをしながらもチェルシーの姉が付いてきていた…。


 しかし、ここで俺達は一つミスをしてしまっていた…。これはまた後の話だ…。



………。

……。

…。



 監獄からチェルシーの姉を救いだし、フードを被せると真っ先に宿へと戻る俺達…。戻る途中、妹のチェルシーの安否を再度伝えたり、とりあえず落ち着かせる為、必要な情報を伝える。


 「本当に妹はそこにいるのですか?」


 「ああ…。無事だよ。安心していい…」


 「お兄ちゃんは安全。うん。だから安心してください!もう大丈夫だから!」


 宿まで来て、部屋へと案内させる。戸を開けて、すぐ目の前にいるのはチェルシーだった。チェルシーは姉を見るなり涙ぐみながら…。


 「お、お姉ちゃんっ!!お姉ちゃん!!無事だったんだにゃっ!?」


 「チェルシー!!本当にチェルシー!?あぁ… 良かったにゃ…」


 「ふぅ…、良かった…。とりあえずこれで安心できる…」


 俺は、大きくタメ息を吐くとエアロが俺の隣に来る。


 「お疲れ様ですぅ…。お兄様、はい!これ飲むといいですっ!」


 エアロは、蜂蜜で作った暖かい飲み物、蜂蜜ドリンクを渡してくれた。


 「ありがとう!」


 それから、ヒナルやクローディアにも配り、チェルシーの姉にも渡す。


 「ありがとうございますにゃ…、貴方達は一体何者ですか?特に貴方…。勇者ルイスですよね?!」


 「ああ。俺が勇者ルイスだよ」


 「私達を捕まえたと思ったら、何故こんな事を?!貴方…、ルイスで間違いないよね?」


 チェルシーの姉は俺を威嚇するかのように睨みつけてくる…。


 「確かに勇者ルイスだよ。でもつい今日の朝こちらについたばかりだ」


 「お姉ちゃん、本当だにゃ!!ルイスやこのお姉さん達が私を助けてくれたにゃ!」


 チェルシーはクリステルの腕にしがみつき、お姉さんを真剣に見て訴える。


 「俺はエルドアス王国から仲間達と一緒にアスガルド城へ向かう途中で、この要塞都市に来たばかりなんだ。そして、こっちのこの子から偽物がいるって聞いたんだ…。実際、昼間に見たよ。瓜2つで驚いた…」


 「そうでしたか…。色々と聞きたい事があるのですが、アスガルド城の事を知っているのですか!?あそこの王様も王妃も…、それにお姫様も既に死んでしまい…」


 「ちょっと待つのじゃ!!」


 「へっ?!」


 チェルシーの姉が話している最中、いきなり勢いよく小さな女の子が割り込んでくる。うん、これはスルトだ…。そう、アスガルドのお姫様だからな…。


 「我こそが、アスガルドの第一王女。スルト・ガーランドなのじゃ!!」


 「スルト様!?あのスルト様ですか!?16年くらい前に亡くなったと…、生きておられたのですか!? 後、ガーランドって…、どこかで聞いたような…」


 チェルシーの姉は首を傾げて何かを必死に思い出そうとしているような表情をしている。


 「ルイスもガーランド…?どういう事ですか?!ま、まさか!?」


 「ふふふ!聞いて驚くな!我が母上であるユミル女王も生きている。今はエルドアス近郊の村に居るのじゃ!そしてルイスは昔、母上がルイスを拾って育てた養子なのじゃ!つまり、ルイスは我の弟なのじゃ!あーはっはっは!のじゃ!」


 「お前はそれが言いたかっただけなんじゃ…?」


 チェルシーの姉は驚いていた。それはそうだ。死んでいたと思っていたアスガルドの王妃と王女が生きていて、その養子がルイス…、俺なんだから。更には偽者の俺が二人のケットシー族の少女を拉致した…。


 「あ、あの…、実は私のお父さんは…」


 いきなりクローディアは手を上げて何かを言いたそうにしながら…。


 「アスガルド王の弟…、なんですよ…」


 「へっ!?つ、つまり…我とは従姉妹だったのじゃ!?」


 俺も、スルトも驚いた…。つまり、クローディアのお兄さんも王族だったのか…。


 「はい…。スルトさんとは直接会った事がありませんが、兄さんはよくスルトさんと会っていたって話を聞きました…」


 「ぬ、ぬぁんと!!まさか!あの時の鼻垂れ坊主か!?覚えているのじゃあ!!」


 「あ、あの~…、つまりここにいるルイスさんは魔族とも親しい本物の勇者で本当に間違いなかったんですね?」


 チェルシーの姉は少し戸惑いながらも話をしてきた。いきなりとんでもない情報をたくさん聞かされるなら、それは誰でも困惑さえする。


 「とりあえず~、貴方のお名前聞いても?私はミランダ!エルドアス王国直属の騎士だよ!ルイス君の恋人の一人!宜しくね!」

 

 「お姉ちゃん!大丈夫にゃ!私もよくしてもらっているにゃ!」


 「私は、ペルシアです…。元々、私達は魔族の貴族の元でメイドとして幸せに暮らしていました。お嬢様の面倒を見たりと充実した日々を過ごしていましたが、ルイスの軍勢が攻めてきて、魔族は皆殺し…。庇ったという理由で捕まった私達も魔族の見せしめとして処刑されるところを、本物のルイス様が助けてくれたという感じになります…」


 偽者のルイス…。とんでもない悪だな…。魔族だからと皆殺しに?罪もない人を?それに罪もない人を庇うだけでも処刑?そんなの只の悪党だろ…。何がしたいんだ…?俺の偽者は…。



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