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94 濃厚な夜を…

更新遅れました~( ;∀;)


 ペルシアの語った、偽勇者による残虐な行いへの怒りが、部屋の中に重く沈殿していた。  だが、今は怒りに身を任せている場合ではない。目の前には、傷つき、居場所を失った二人の少女がいるのだから。


 俺は意識して表情を和らげ、二人に問いかけた。


「辛い話をしてくれてありがとう。……それで、とりあえずこれからの事なんだが、二人とも行く当てはあるのかい? 頼れる親戚とか、知り合いとか……」


 俺の問いに、ペルシアは俯き、膝の上で震える手を固く握りしめた。  横に座るチェルシーも、不安そうに姉の顔を見上げている。


「……いいえ……。私達のご主人様であった男爵様も、奥様も……屋敷にいた者は皆、殺されてしまいましたので……」


 ペルシアの声が微かに震える。


「屋敷も焼かれ、財産も奪われ……私達はもう、天涯孤独の身ですにゃ……。この街にも、私達を匿ってくれるような知人はいませんにゃ……。行くところなんて、どこにも……」


 彼女の目から、再び大粒の涙がこぼれ落ちそうになる。  主を失い、家を失い、そして社会的な立場すらも「逃亡奴隷」として追われる身。彼女たちの前には、絶望的な未来しか広がっていないように見えた。


 その時、クリステルがそっと前に進み出て、ペルシアの手を優しく包み込んだ。


「でしたら……もし、貴方達が良いのなら、暫く私達と一緒に同行しませんこと? その方が安全ですわ」


 慈愛に満ちた聖女の微笑み。  それに続き、ソファでくつろいでいたバハムートも、小さな体で大きく頷いた。


「うむ、そうだのう……。お主らだけでこの街を彷徨えば、またあの偽物や、奴に媚びへつらう兵士どもに見つかるやもしれん。ルイスの所に居た方が、世も安全だと思うのだ。こやつの周りは騒がしいが、強さだけは保証するからの」


 「そ、そんな……」


 ペルシアは驚きに目を見開いたが、すぐに申し訳なさそうに首を横に振った。


「お気持ちは嬉しいのですが……、私達のような者を連れて歩けば、皆様に多大なご迷惑がかかるかと思いますにゃ……。私達はただのメイドで、戦闘なんてできませんにゃ。足手まといになるだけですにゃ……」


 彼女たちの懸念はもっともだ。これから向かうのは魔王城があったアスガルド。道中は危険な魔物も出るし、偽勇者との戦闘も予想される。  だが、俺達には「あれ」がある。


「うん~っ! それなら心配いらないよ~っ! 戦えなくても全然平気だよ~っ!」


 コタースが長い耳をピョコピョコさせながら、部屋の片隅に置いてあった、一見すると何の変哲もない小さな木箱――『異空間ストレージ』を取り出し、二人の目の前にドスンと置いた。


「はいっ! この中に入っていればいいよ~っ!」


「……はぇ? こ、この箱の中……ですか?! こんな小さな箱に……?」


 ペルシアとチェルシーがポカンとして、箱とコタースを交互に見る。  猫が入るには丁度いいサイズだが、まさかそういう意味ではない。


「そうそう~っ! ウチも初めて見た時はビックリしたよ~っ!! でもね、この中はすっごく広いお家になってるんだよ!」


「うんうん! ボクも最初は目を疑ったけど、中は快適だよ! お風呂もあるし、フカフカのベッドもあるし、部屋も一杯あるから好きに使っていいよ! あ、冷蔵庫のプリンは勝手に食べちゃダメだけどね!」


 シューもニコニコしながら補足する。


「えっと……お家? お風呂? この箱の中にですかにゃ? 冗談ですよね……?」


 常識的に考えれば信じられないだろう。  俺は苦笑しながら、異空間ストレージの蓋に手を伸ばした。


「百聞は一見にしかず、だね。こんな感じで、ゲートに触れれば中に入れるんだ」


 俺の手が箱の入り口に触れると、空間が歪み、軽く吸い込まれるような感覚と共に、俺の手首から先が消失して見えなくなる。


「ひゃあっ! 手が消えたにゃ!?」


 チェルシーが悲鳴を上げる。


「大丈夫だよ。中は『異空間』になっていて、安全で快適な居住スペースが広がっているんだ。ここなら外敵に襲われることもないし、ゆっくり休める。……一緒に行こう」


 俺は二人に手を差し伸べた。  ペルシアはおずおずと、しかし決意を込めて俺の手を取った。」


「す、すごいにゃ……。魔法のような……本当にいいんですか!? 私達のような者が、そんな場所に……」


「もちろんさ。家族だと思って、くつろいでくれ」


「ありがとうございますにゃ……!」


(あれ…この子達……素早さ等ずば抜けて高い感じが伝わったけど…。もしかするとアサシンとか……そういうレベルの…。まぁ、何にせよ、今は彼女達を休ませてあげようか…)


 ペルシアとチェルシーは、互いの手をぎゅっと握りしめ、異空間ストレージに手をかざした。    


シュンッ……!


 言葉を発する間もなく、二人の体は光の粒子に包まれ、一瞬にして箱の中へと吸い込まれていった。   「よし、俺達も戻ろうか。今日はもう遅いし、中で歓迎会でもしよう」


 俺も後を追うように、ストレージの中へと入っていく。  視界が反転し、宿屋の部屋から、見慣れた広大なリビングへと景色が変わる。  そこには、口をあんぐりと開けて固まっている猫耳姉妹の姿があった。



………。

……。

…。



 ゲートを潜り抜けた瞬間、ペルシアとチェルシーの姉妹は、言葉を失って立ち尽くした。  そこには、狭い箱の中とは到底思えない光景が広がっていたからだ。  見渡す限りの青い空、頬を撫でる心地よいそよ風、そして足元に広がる青々とした草原。  その中央には、彼女たちが今まで見たこともないような建築様式(現代日本風)の立派な一軒家が建っている。


「な、なにこれ!? 凄すぎますにゃ!! 空がある……? 太陽がある……?」


「本当にすごいにゃ~っ!! 夢みたいだにゃ……! ここが箱の中!?」


 二人は目をぱちぱちさせながら、信じられないものを見るように辺りをキョロキョロと見回している。


「驚くのも無理はないけど、これが俺の能力の一つだ。ここなら誰にも邪魔されないし、安全だ。好きなように使ってくれて構わないよ?」


 俺が微笑むと、ペルシアがおずおずと口を開いた。


「ルイスさんって、本当に勇者のルイスさんですよね!? 噂では、冷酷非道で、魔族を見つけ次第殺し回っているって聞いてましたけど……こんな魔法を使えるなんて……」


 まだ少し、「勇者ルイス」という名前に対する恐怖心が残っているようだ。  すると、ベッドから飛び出してきたスルトが、ここぞとばかりに割り込んできた。


「そんなのは全部嘘っぱちなのじゃ! ルイスは優しいのじゃ! 我も毎日、頭を撫でてもらったり、一緒にお風呂に入ったり(未遂)、たくさん可愛がってもらっているのじゃ! ルイスに『襲われたい』のに、全然襲ってこないのじゃ! むしろ我が襲いかかっても逃げるのじゃ!」


「へっ?」


 ペルシアとチェルシーの動きが止まる。  スルトは何か変な事を言い出している。これは……言葉の綾というやつで、非常にマズい空気が流れている気がする。


「待つのじゃ……、まさか襲ってこないと言う事は、我の事が嫌いなのじゃ?! 我には魅力がないのじゃ!?」


「ち、違うよ!! スルトは可愛いよ! でもそういう意味じゃなくてだな!」


「さっきから『襲う』とか……意味がわからないですにゃ……。どういう事? まさか本当は、拷問したり暴力を振るったり……襲いたいのでは?」


「やっぱりルイスは魔族の敵なのにゃ!? 油断させておいて、寝込みを襲うつもりにゃ!?」


 ペルシアとチェルシーが青ざめて後ずさりする。  どうやら彼女たちは「襲う」を「攻撃する(Attack)」の意味で捉え、スルトや俺達は「夜の営み(Sexual assault)」の意味で使っている。  盛大なアンジャッシュ状態だ。


「スルト~っ! お前なぁ~~! 言葉を選べ! 完全に誤解されてるだろー!」


「むぅっ! 誤解などどうでもいいのじゃ! 我は事実を言っておる! ルイスが手を出さないから、我から行くしかないのじゃ! や、やめるのじゃあ!! お、襲われる~っ! ……いや、嘘じゃ! 襲われてもいいのじゃ! ウェルカムなのじゃ! なんなら今ここで脱ぐのじゃ!!」


 スルトは興奮して、両手で服の袖をまくり上げ、ボタンに手をかけ始めた。


「や、やめーい! 教育に悪い!」


 俺は慌ててスルトの両手を押さえ、その頭を軽く手の平でポンポンと叩いて落ち着かせる。


「うぅ~! なぜ襲ってくれないのじゃあ!! ヒナルやコタースやクリステルは襲う(イチャイチャする)のに! 差別なのじゃ!」


 すると、その騒ぎを聞きつけたケアルとフレアまで参戦してくる。


「それなら私もだよっ!! 私だって準備万端で襲われたいのにっ!! アンタは私に興味ないの!? お子様扱いはやめてよね! なんなら今夜、お姉ちゃんと一緒にする!? 姉妹丼とか好きなんでしょ!?」


「私も……です……。いつもお風呂上がりにバスタオル一枚で脱いで待ってるのに……スルーされる……です……。冗談ですが……本気半分……です」


 ケアルの爆弾発言とフレアの真顔のジョーク。  それを聞いていたクローディア、ペルシア、チェルシーの3人は、何かが繋がったように「はっ!?」と顔を見合わせた。


「まさか、皆さんが言っている『襲う』…って!? 命を奪うことじゃなくて……そ、そういうベッドインですにゃ!?」


「あー……。なるほど。本物のルイス様は、殺戮者じゃなくて……ただの絶倫エロ魔人だったのにゃ……」


「や、やっぱりかー!! なんだ、命の危険はないんですね……。ただ貞操の危機があるだけで……。ルイスさんはド変態さんだったんですね……」


 彼女たちの目から恐怖が消え、代わりに生暖かい「憐れみ」のような色が宿る。


「ち、違うわーっ!! 俺は変態じゃない! 健全な男だ! そして誰も襲ってない!! 濡れ衣だ!」


 俺が必死に弁解すると、3人は顔を見合わせ、堰を切ったように爆笑しだした。


「あはははは! ごめんなさいにゃ! 勘違いしてましたにゃ!」


「ふふっ、勇者様がそんな事で責められてるなんて……面白いですにゃ!」


 ペルシアやクローディアは目に涙を浮かばせながら笑っている。  その屈託のない笑顔を見ると、俺の変態疑惑はともかく、彼女たちの心の壁が消えたことにホッコリとした。  魔族とか獣人とか関係ない。ここでは皆、ただ笑い合える仲間なのだ。



………。

……。

…。



 ひとしきり笑った後、コタースがペルシアとチェルシーの手を取った。


「今日は、大変だったね。ありがとうございましたにゃ!」


「うん~っ! こちらこそだよ~! 今日はウチも、そっちのゲストハウスで一緒に寝るよ~っ! 獣人同士、モフモフして仲良くしよ~っ! 色んなお話聞かせて~!」


「いいねいいねっ! 私、ラビット族の人とお話しするの、初めてだから嬉しいにゃ~!」


「私もですにゃ! あの大きなお耳、触らせてもらってもいいですかにゃ?」


「いいよ~っ! じゃあ、コタース? 姉妹共々、宜しくなっ!」


 コタースとペルシア達は俺の方を向くなり、笑顔で手を振って建物の中へと入っていく。  聞きたい事は山ほどあるだろうし、今後の不安もあるだろう。でも、コタースの明るさが彼女たちの心を癒やしてくれるはずだ。今はゆっくり休ませてあげたい。


 それから、俺達メインメンバーは一度異空間ストレージから出て、宿屋の部屋へと集まった。  ここからは、真面目な作戦会議だ。


「……というルートで行けばよいのだと、世は思うぞ」


 机に広げた地図の上で、バハムートが指を滑らせる。


「ですな。拙者もバハム殿の意見に賛成でござる! あの砂漠地帯にはサンドワームだけでなく、古代遺跡の守護者も眠っているという噂があるでござる。大所帯で無理して進むなら、少し遠回りでも海沿いの街道を歩いた方が安全だと思う気もするでござるよ」


 仁さんが補足する。  当初の予定では砂漠を直進するつもりだったが、サンドワームとの遭遇や、追手の可能性を考えると、見通しの良い海岸線の方がリスク管理がしやすい。


「そうだな。エストリアから海岸線を通って北上し、そこから山脈を迂回してアスガルドへ向かうルートにしよう」


 俺が決断を下す。


「海沿いなら、美味しい海産物も食べられるかもしれないしね!」


 ヒナルが嬉しそうに言う。


「ですね。明日には出発できるよう、物資の補充も済ませておきましょう」


 ミランダが手際よくメモを取る。


 こうして、明日からの予定も決まり、エストリアでの長く激しい一日は幕を閉じた。  俺達はそれぞれ、心地よい疲労感と共に各自部屋へと戻っていった。  ……その時、俺たちが犯した「ミス」が、静かに、しかし確実に忍び寄っていることには、まだ誰も気付いていなかった。




………。

……。

…。




 コタースたちが異空間ストレージの中へと戻り、他のメンバーもそれぞれの部屋へと引き上げた後。  俺は宿屋の一室で、一人ベッドに横たわり、シミの浮いた天井をぼんやりと見つめていた。


 窓の外からは、波の音と風の音が微かに聞こえてくる。  エストリアの夜は静かだが、俺の心の中は嵐のようにざわついていた。


 (……あの偽物、一体何が目的なんだ)


 魔族を虐殺し、罪のない人々を巻き込み、俺の名前と顔を使って恐怖を撒き散らす。  その悪意の底が見えない。  俺がここで「俺こそが本物のルイスだ!」と叫んだところで、証拠がなければ誰も信じないだろう。むしろ、混乱を招き、偽物を警戒させるだけだ。  策が必要だ。だが、圧倒的に情報が足りない。  母さんの話では、アスガルド近郊にはまだ生き残った魔族たちが隠れ住んでいるという。彼らと接触できれば、何か手掛かりが得られるかもしれないが……。


 思考が堂々巡りをし、焦燥感だけが募っていく。  孤独な夜の闇が、俺の心をじわじわと蝕んでいくようだった。


 その時。


 コンコン……。


 控えめだが、意思の強さを感じるノックの音が静寂を破った。


「兄貴~! 起きてる? 入るよ~」


「お兄様~、夜分遅くに失礼しますぅ~」


 シューとエアロの声だ。  俺が返事をする間もなく、ドアが音もなく開き、二つの影が忍び込んできた。


「兄貴、ごめんな! 夜遅いのに。どうしても顔が見たくてさ」


 二人は薄手のネグリジェ姿で、のそのそと俺のベッドの方へと歩いてくる。月明かりに照らされたその姿は、幻想的でありながら、どこか艶めかしさを帯びていた。  二人は左右からベッドに上がり込むと、俺を挟むようにして腰を下ろした。


「……お兄様。何か、難しい顔をして悩んでいますね……」


 エアロが俺の眉間のしわを指先で優しく撫でる。


「やっぱり、あの偽物の事だろ? 兄貴、ずっと考え込んでたから」


 シューが心配そうに俺の顔を覗き込む。


「ああ……。バレたか。……魔族を殺したり、人の恋人を寝取ったりして何が楽しいんだろうな……。ましてや俺のふりをして、俺の大切な人たちを傷つけるような真似をして……。自分が情けなくなるよ」


 俺が弱音を吐くと、二人は何も言わずに体を俺の体へと密着させてきた。  柔らかい感触と、温かい体温が、俺の強張った心を溶かしていく。


「大丈夫だよ。兄貴は一人じゃない。絶対あれの正体、ボク達が暴いてやるからさ! 兄貴の味方は、ここに沢山いるんだ!」


「はい。今度は私達がお兄様を守る番です。不安かもしれませんが……私達を頼ってください。絶対にあいつの化けの皮を、私達が剥いで見せますっ!」


 二人の瞳には、揺るぎない信頼と愛情が宿っていた。  俺は胸が熱くなり、二人の頭をそれぞれ軽く撫でた。


「二人とも……、ありがとうな! 本当に、救われるよ」


 俺の言葉が終わるか終わらないかのうちに、シューが身を乗り出し、俺の唇を奪った。


「んっ……ちゅ……」


 それは慰めではなく、熱情のこもったキスだった。  シューは名残惜しそうに唇を離すと、潤んだ瞳で俺を見つめる。  すると、まるで順番を待っていたかのように、次はエアロが俺の唇を、その桜色の小さい唇で塞いできた。


「はぁ……はぁ……、んっ、くちゅっ……」


 エアロは積極的だった。俺の舌に自身の小さい舌を絡め、貪るように味わってくる。甘い吐息が交錯し、部屋の空気が一気に熱を帯びる。


「兄貴……はぁはぁ……、僕……もうダメ……! 兄貴が愛おしくて……」


 シューが頬を紅潮させ、俺の服の裾に手をかける。  しかし、エアロがそれを制するように、俺の上に跨がった。


「お姉様!! ずるいですぅっ!! 今日は私が先……まず、私とお兄様としますっ!!」


「ちょ、お前達……、静かにしないと皆に声……聞こえちゃうぞ……」


 俺の理性的な抵抗は、エアロの艶っぽい視線の前では無力だった。  エアロは素早く身につけていた薄布を脱ぎ捨て、生まれたままの白磁の肌を月光に晒した。  そして、俺の下着を脱がすと、熱く昂った自身の秘所を、俺のそれに押し当て、すりすりと擦り付けてくる。


「っ……エアロ……」


 彼女はまるで強力な媚薬でも飲んだかのように、とろ~っとした陶酔の表情を浮かべている。  肌と肌が触れ合い、互いの体温が溶け合う。俺の下半身がきゅん! と疼き、限界まで膨張する。


「……っはぁ……!! んっ……くっう!」


 エアロは俺の熱をその身に受け入れると、ぎこちない、しかし一生懸命な動きで腰を揺らし始めた。  濡れた結合部から、水音が淫らに響く。


「んぁっ!! だ、大好き……でしゅ……。お兄様……奥まで……熱い……ですぅ……!」


 再び、エアロは俺の唇を求め、深い口づけを交わしながら、快楽の波に身を委ねていく。その表情は、聖女のような清らかさと、雌としての悦びが混在した、この世のものとは思えない美しさだった。


 やがて、エアロと共に果てると、一息つく間もなく、今度はシューが俺の上に跨がった。


「次は……ボクの番だぜ……。兄貴……ボクにも、愛を頂戴……」


 シューもまた、俺を受け入れ、懸命に腰を振り出す。  エアロとは違う、力強くもしなやかな締め付け。だが、その表情には快楽と共に、僅かな苦痛の色が混じっていた。


「っはぁ!! いっ……あぅ……」


 彼女が顔をしかめたのを見て、俺は心配になり腰を止めた。


「シュー……? まだ痛むのか? あまり無理するなよ? やめてもいいんだぞ」


 「だ、大丈夫……。まだ、少し痛い……けど……。こんなの、どうってことないよ……」


 シューは汗ばんだ額を俺の額に押し付け、切なげに微笑んだ。


「んぁっ!! くぅん……!! 兄貴のいない世界で味わった痛みに比べたら……こんな痛み、へっちゃらだぜ……。むしろ、生きてるって感じる……」


 あのエルドアス攻防戦の時。シューは一度命を落とした。  その後、血の複製ブラッド・レプリカによって体を再構築し、蘇った彼女の肉体は、処女であった「昔の体」の状態にリセットされていた。  だから、記憶や経験はあっても、肉体的には俺との行為は再び「初体験」のようなものだった。先日の行為の後も、エアロ以上に出血していたことを俺は知っている。  彼女はその痛みを、俺と共に生きている証として受け入れているのだ。


「ずっと……、ずっと兄貴を守ってあげるからな……。ボクの体も、心も、全部兄貴のものだ……。だから、もう離さないからな……」


「ああ……。俺もだ。絶対に離さない」


 俺は彼女の背中に腕を回し、その痛みを和らげるように、そして愛を刻み込むように、深く、優しく抱きしめ返した。


 やがて、夜が更けるまで、俺達の部屋には甘い吐息と、愛を確かめ合う熱い空気が充満していた。  不安な夜は、二人の愛によって、確かな絆を確認する夜へと変わっていった。




………。

……。

…。



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