81 アスガルドに向けてレッツラゴー!
アルガスさんとカミラさん夫妻が住居に案内したりして、バタバタしてやっと落ち着いた深夜…。俺は椅子に座り、だらっとした姿勢で考え事をしていたら、クリステルが静かに部屋に入って来た。
「貴方、まだ起きていたのですか?」
クリステルと二人っきりの時は俺の事を貴方と呼んでくる。これはクリステルのここ最近の楽しみの一つでもあった。
「ちょっと考え事していたからな…」
「もしかしてアスガルドでの事かしら?」
クリステルは俺の方へ近づいて、俺を後ろから抱きついてくる。
「貴方はよく頑張っているわ…。今日来たアルガス夫妻の事を考えて居たのですね?」
「あぁ。これからここで生活をするわけだけど、もしかしたら女神崇拝教がここに来る可能性もない訳じゃないし、ホムンクルスよりもタチが悪いクローンなんかも現れたら…って考えたらね…」
「王様に会ってきたって言っていましたわよね?」
「うん、でも詳しい話は明日するってさ」
俺は顔を上げて、上から見下ろすクリステルを見る。2歳だけ年上なのだが、ヒナル達とはまた違った安心感がある。お互い、数ヶ月前の事を段々と忘れるくらいまで信頼してきている証拠だ。今となってはあの時の辛さも嘘みたいになくなっている。
「女神崇拝教をこのまま放置していたら魔族はもちろん、また俺達みたいな被害者もでそうで…。それに奴らは俺の母さんの国を滅ぼすほどの奴らだ…。そう考えるとさ…」
「ふふふ、貴方らしいですわ…。なら…皆でその悪い奴らを倒しに行かない?」
「えっ?」
クリステルは表情をにこっとさせながら…。
「貴方が辛い時、今度は私が助ける番。貴方の悩みがあるなら一緒に悩みますよ?」
「ありがとう…。そう言ってもらえて嬉しいよ」
クリステルは更に抱きしめる力が強くなる。
「貴方が辛いなら、私も辛いですし、少しでも笑顔になっていただけるなら一緒に解決していきましょう?」
本当に女性陣の中でも一番包容力あり、体を預けられるお姉さんみたいなものだ…。流石は聖女様だけはある。ヒナルとはまた違った安心感だ。
「ありがとう。クリステル…。」
やがて、クリステルの顔が近づき…、俺達は甘いキスをしはじめる…。
「ちゅ… んっ…あんっ… ちゅ…」
しばらくキスがつづく。ほんのりと甘く大人なキスだ…。
やがて、クリステルは顔を一旦、俺から離すと…。
「ルイス?今度は私が貴方を守ります…。絶対に離さないですからね…」
「ああ…。そう言ってくれて嬉しいよ!でもあまり無理はするなよ?」
そう言うと、クリステルは俺の顔に顔を近付けて再び甘いキスをしてくる…。俺達はそれから甘い夜の時間を過ごすのだった…。
………。
……。
…。
て 翌朝、俺は王国へと向かい王様とのアポを取る。俺がルイスという事ですんなりと入れてくれた…。
「魔族の件、感謝するぞ!んでな?アスガルドから逃げてきたって聞いたんだけどよ?何があったんだ?」
俺は昨日、アルガス夫妻よ聞いた内容を洗い浚い打ち明けた。
また女神崇拝教が絡んでいて、クローンという人間の複製魔法の実験をしている。そのために魔族の命を奪っている事。そしてアルガス夫妻はクローン魔法の実験中に偶然遭遇した所、追いかけられここまで逃げ出したという事だ。
「アスガルドってのが気になるな!ルイス。お前に良い事教えてやる。良い事かどうかわかんねぇけど…」
エルドアス王は少し険しい表情でこちらを見る…。
「今回のその話と関係があるか分からねぇが、戦女神アテナと瓜二つの容姿をした変わった女性がアスガルド周辺で目撃されたって話だ…」
戦女神アテナ…。女神の一人で、その昔…。魔王ノルンを倒した女神の一人でもある。その容姿は代々語られていて。美しいブロンド色の長い神をしていて、純白のドレスを着て大きな槍を持った若い女性との事だ。
「今回のアスガルドでの件と関わりがあるかわかんねぇが…、女神の格好をした崇拝教信者ならその地域に住む人間に嘘を教え、魔族を追い出すのには好都合ってわけだ」
「たしかにな…。アスガルドは俺の母親が過ごしてきた地…。だから何とかしてでも魔族を助けたい思うし、その辺に住む人にも誤解を解いていきたい…」
王様は相変わらず、険しい顔をしてこちらを見ている。魔族と共生を歩もうとする国だけに、民主を騙してまで魔族を追害したり殺害しようとする崇拝教には苛立っている様子にも見える。
「よし。それでルイスはどうしたい?」
その言葉の後に、王様はいきなり険しい表情からニコニコとしたような表情ででこちらを見てくる。まるで早く俺の答えを聞きたがって待っているような顔にも見える。
「あぁ、それでアスガルド地方に旅に出てみたい。勿論、問題を起こすつもりもない。ただやむ得ない場合は…」
「ああ。許可する。やむ得ない場合は崇拝教とも戦闘になるかもしれないってことだろ?」
王様は俺の答えをまるで待っていたかのようなウキウキとした表情でぱぁーっと明るくなる。
「ああ!その場合は…」
「なら…、偽名を使え。いや…。ルイス。お前の本当の名前でどうどうと行動したらいいさ。向こうじゃーお前の事を知っているヤツがいても、それは名前だけだろ。実際、向こうじゃールイスの顔なんて分かるヤツがいねぇんだし。どうどうと胸張って本当の名前で旅したらいいさ!」
ははは!やっぱり、俺はこの王様が好きだわ。見事に俺がどうしたらいいのか考えた時に背中を押してくれる。本当にありがたい。
「暫く、留守にするけど…。まぁ、俺の仲間を何人か置いて…」
「おい…、ルイスよ~…」
俺が話している途中、いきなり王様の表情がキツくなった。あれ?俺何かマズイ事を言ったかな?
「お前が言う、その仲間ってのはよー?」
「ん?」
「あの女の子達の事だろ!?」
「そうだが?」
更に王様の表情が変わる。
「あの嬢ちゃん達はお前のなんなんだ?ただの仲間か?違うだろ?大事な家族だろ!?」
「あっ…」
そう。彼女達は今は大事な家族…。一緒に笑い、一緒に苦難に立ち向かい、一緒に共に行動をしてくれて、こんな俺の為に涙までながしてくれた大事な家族だ。それを俺は…。
「今ので何か分かったか?」
「大事な家族…」
「おうよ!大事な家族だろ?んならその嬢ちゃん達はお前と一緒にずっといたいはずだろ?ならここに残すなんて考えはやめれ…」
「あっ…」
そうだったなぁ…。彼女達を数ヶ月も残して…なんて本人達は多分嫌がるだろう…。
「一緒に連れていってやれ。一緒に旅をして、一緒に色々を見て、一緒に楽しみ、泣いて喧嘩してこい。そうしたら今よりももっと嬢ちゃん達の事を見てあげれるだろ?」
「ああ!!」
王様…。本当にありがとう…。俺はまたここでそう思った。俺は本当にこの王様には頭が上がらない…。
「後、もしこういう事があって、ルイスが旅に出る時に…と自らポータ役をかってくれるヤツもいるぞ?お前の友人の仁だ。一緒に行ってこい!」
仁さんが…。毎日顔を合わすけど今までそういう話をしてこなかった…。また一緒に旅が出きるのか…。あの時は数日だったけど…。ありがとう仁さん…。
「後、こっちの事は何も問題ないぞ?騎士団とほぼ互角の戦力がある忍者部隊も我が国の傘下に入ってくれたからなぁ~…。仁はもちろん、ルシルやファデューには感謝しかねぇよ…」
「ありがとう…」
「はははっ!だから気にせずに行ってこい!!」
「ああっ!!」
そうして、俺は翌日…。皆…、俺の家族に伝えた。皆はこの話に即答でOKしてくれた。そうして、アスガルドまで向かって旅がはじまった…。
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